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イワキポンプは自律調整一巡して上値試す、医療機器分野など開拓で中期的に収益拡大基調
- 2017/3/8 08:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イワキポンプ<6237>(東2)はケミカルポンプの大手メーカーである。豊富な製品ラインナップやグローバル体制などを強みとしている。17年3月期は円高影響などで営業微増益にとどまる予想だが、医療機器分野の市場開拓などで中期的に収益拡大基調が期待される。株価は2月の上場来高値から利益確定売りで一旦反落したが、自律調整が一巡して上値を試す展開が期待される。
■ケミカルポンプの大手メーカー
水処理装置、半導体・液晶製造装置、医療機器などの薬液移送に使用されるケミカルポンプの大手メーカーである。またケミカルポンプ周りの各種センサおよびコントローラ等の制御機器を組み合わせた水質制御関連など各種システム製品も展開している。
■豊富な製品ラインナップやグローバル体制が強み
マグネットポンプ、定量ポンプ、空気駆動ポンプ、回転容積ポンプ、エアーポンプなど、60シリーズ以上・数万型式にのぼる豊富な製品ラインナップで顧客ニーズに対応している。ポンプを中心に「流体を制御する」技術でワンストップソリューションを提供できることも強みだ。
17年3月期第2四半期末時点で、国内は本社、主要13都市の6支店・7営業所、2工場、2技術センター、全国各地の代理店、海外は16ヶ国・20社のグループ会社を展開し、多種多様な顧客への強力なサポートを可能とするグローバル生産・販売・メンテナンス・サポート体制を構築している。
生産は多品種少量生産を強みとしながら、年間約80万台の生産能力を有している。国内2工場(埼玉県・埼玉工場、福島県・三春工場)で役割分担し、海外5拠点(米国、ドイツ、中国、台湾、豪州)はノックダウン生産方式(日本で生産した主要部品を海外で組み立てる生産方式)で短納期・在庫効率化を実現している。
16年12月には中国における販売・調達拠点として現地法人を設立した。また化学センサ搭載測定装置の専業メーカーであるテクノエコー(埼玉県)を子会社化した。テクノエコーの残留塩素計と当社のケミカルポンプを組み合わせた販売を効率的に行うことが可能になる。
なお16年11月に新技術センターの建設を発表している。現在の技術センター(埼玉県)に隣接する当社所有土地に新技術センターを建設し、開発拠点を再構築する。17年3月着工、18年5月竣工・運用開始予定で、建設費用は約23億50百万円である。
■成長に向けて医療機器市場などを積極開拓
17年3月期第2四半期累計(4~9月)における品目別売上構成比はマグネットポンプ36%、定量ポンプ18%、空気駆動ポンプ7%、回転容積ポンプ9%、エアーポンプ6%、システム製品4%、仕入商品9%、その他11%だった。主力のマグネットポンプが好調に推移している。
市場別売上構成比は水処理24%、半導体・液晶13%、医療機器16%、化学10%、表面処理装置8%、新エネルギー3%、その他26%だった。水処理市場が堅調に推移し、半導体・液晶市場はウェハ洗浄装置やレジスト塗布装置関連でアジア向けが16年夏以降急回復している。また医療機器市場が大幅伸長している。
地域別売上構成比は日本63%、海外合計37%(米国13%、欧州10%、アジア8%、中国3%、その他4%)だった。海外合計は微増だが、欧州とアジアが好調に推移している。
中期成長に向けて医療機器市場、新エネルギー市場、水処理市場を重点分野と位置付けて積極開拓している。医療機器市場では人工透析関連、血液分析関連、内視鏡洗浄関連などの需要が増加基調である。新エネルギー市場では、家庭用燃料電池関連が落ち込んだが、今後はリチウムイオン2次電池や電力用大型蓄電池の電解液注入関連が期待される。また水処理市場では、17年9月発効予定の船舶バラスト水規制管理条約関連の需要も期待される。
■17年3月期第3四半期累計は円高影響などで営業減益
今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.5%増の187億20百万円、営業利益が同5.4%減の11億73百万円、経常利益が同6.0%減の15億40百万円、純利益が同2.2%減の12億07百万円だった。需要は総じて堅調だったが、為替の円高影響、製品構成の変化、製品保証引当金の増加などで減益だった。
売上総利益は同1.8%減少し、売上総利益率は32.4%で同1.1ポイント低下した。販管費は同0.9%減少し、販管費比率は26.1%で同0.7ポイント低下した。営業外では持分法投資利益が減少(前期3億32百万円、今期2億37百万円)したが、為替差損益が改善(前期は差損22百万円、今期は差益69百万円)した。特別利益には固定資産売却益19百万円を計上した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期59億52百万円、第2四半期64億42百万円、第3四半期63億26百万円で、営業利益は3億07百万円、4億64百万円、4億02百万円だった。
■17年3月期通期は営業微増益予想
今期(17年3月期)通期連結業績予想(11月9日に減額修正)は、売上高が前期(16年3月期期)比0.2%増の248億71百万円、営業利益が同4.0%増の15億94百万円、経常利益が同3.8%増の20億67百万円、純利益が同横ばいの15億27百万円としている。
想定の為替レートは通期で1ドル=98円、1ユーロ=108円、売上総利益率は同0.8ポイント低下の33.1%としている。重点戦略として、短納期化による競争力強化、メンテナンスを活用した競合リプレイス需要の獲得、水質管理システム(バラスト水、医療機器、アクアテック事業など)の拡大を推進する。
なお営業利益増減(61百万円増益)分析の想定は、増益要因が売上増減・原価率変動など6億08百万円、販管費の為替影響3億24百万円で、減益要因が売上総利益の為替影響7億97百万円、販管費・R&D経費の増加など73百万円としている。為替の円高影響や製品構成の変化などで売上総利益率がやや低下する見込みとしている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が75.3%、営業利益が73.6%、経常利益が74.5%、純利益が79.0%と順調な水準である。営業微増益にとどまる会社予想だが、想定為替レートが保守的であることも考慮すれば、通期予想の達成は可能だろう。
配当予想(11月9日に減額修正)は、年間62円(第2四半期末30円、期末32円)としている。前期の年間78円80銭(上場記念配当11円含む)との比較で16円80銭減配の形となる。予想配当性向は30.4%となる。
利益配分については、将来の事業展開に備え、財務体質をいっそう強化するために必要な内部留保を確保しながら、継続的、安定的な配当を実施することを基本方針として、親会社株主に帰属する当期純利益の30%を目安として配当に充てる方針としている。
■10年ビジョンで25年3月期売上高400億円目指す
10年ビジョンでは定量目標として25年3月期売上高400億円(国内200億円、海外200億円)を目指している。
そして第1期中期経営計画(17年3月期~19年3月期)は、10年ビジョン達成に向けた種蒔期と位置付け、目標数値を19年3月期の売上高285億19百万円、売上総利益95億18百万円(売上総利益率33.4%)、営業利益25億61百万円(営業利益率9.0%)、経常利益30億14百万円(経常利益率10.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益21億05百万円(純利益率7.4%)とした。
基本方針には、強化市場(医療機器市場、新エネルギー市場、水処理市場)への経営資源の優先投入、顧客対応力を強化したソリューションビジネスの展開、新規事業のビジネスモデル構築、海外戦略地域の市場動向に対応した販売戦略の策定・実行および価格競争力と顧客対応力の向上実現を掲げた。
収益基盤の再構築に向けた戦略としては、オンリーワン製品開発や開発スピードアップなど開発力の強化、コンサルティング業務の強化やメンテナンスサービスの一層充実などソリューションビジネスの強化、海外調達・生産の拡大や海外マーケティング関連部門の体制強化など海外事業の拡大、人材育成に向けた教育システムの構築を推進する。
なお投資に関しては次のステップとして、福島県・三春工場の増築や、欧州子会社の生産設備増強などを検討するようだ。
■株価は自律調整一巡して上値試す
株価の動きを見ると、2月の上場来高値2960円から利益確定売りで一旦反落したが、大きく下押す動きは見られない。高値圏2600円近辺で堅調に推移して自律調整の範囲だろう。
3月7日の終値2562円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS204円04銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間62円で算出)は2.4%近辺である。時価総額は約192億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、26週移動平均線が接近してサポートラインとなりそうだ。自律調整が一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)