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【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領とメディア「メディアは人民の敵」か!?
- 2017/3/8 11:07
- 小倉正男の経済コラム
トランプ大統領の「メディアはアメリカ人民の敵」
アメリカのトランプ大統領がメディアに対して「偽ニュースだ」と罵倒する風景は、いまやお馴染みとなった。トランプ大統領は、「偽ニュースのメディアはアメリカ人民の敵だ」とツイートしている。
「人民の敵」というフレーズが飛び出したのは、ロシア革命のレーニン以来のことだそうだ。
型破りといえば型破りであり、お互いにリスペクトなしに罵倒し合っている。それはそれでアメリカであり、どんどん罵倒し合っていくことが、ある意味で健全の証しになるように思われる。
大統領とメディアとの緊張関係は悪いことではない――。チェック&バランスということでは、それが曲がりなりにも機能しているからである。
頑張れメディア
昨今の日本の話――。東芝では歴代の経営トップが会計担当者に指令を出して不適切会計が行われたといわれている。経営トップの指示・指令で会計はある程度なんとでもなる面がある。それでも無理に無理を重ねて数字をつくり続ければ、どこかで破綻が生じる。
以前にカネボウが倒産したときに当時の経営トップが、それまでの歴代社長がやってきたようにしてくれ、と会計担当者に粉飾を命令したという話が残されている。
情けない話だが、そのときの経営トップとしては、それは当然のことと思っていたに違いない。
それだけに記者たちよ、頑張ってほしい。特に、一般紙はともかく、経済新聞、経済雑誌の記者たちには、辛くても勉強して仕事をしてほしいと思っている。
「コーポレートガバナンス」がいわれて久しいが、日本ではなかなか定着しない。「コーポレートガバナンス」が実体上ないだけに記者たちには頑張ってほしいのである。
「コーポレートガバナンス」の要諦は、チェック&バランスにある。しかし、これは東芝にみられるように形だけあるが中身はないケースが大半である。
それだけにメディアは、チェック&バランスということでは重要なポジションにある。
権力という異常
北朝鮮の金正恩ではないが権力トップというものは、異常なものである。クアラルンプールで殺された金正男とて、もし仮に北朝鮮の権力トップになっていたら、金正恩のようなことを行っていたかもしれない面がある。権力は、人をおかしくするところがある。
私の知り合いの経営トップなど、社長を終わったら耳は聞こえない、目は見えないようなことになっている。あまりに非人間的な命令を社員たちに出したりしたのだろうか、と思うわけである。
経営者という経営者をみてきたが、なかにはおかしくならなかった人もいる。いまでもお付き合いをしている。もちろん、そういう人もいないではない。
逆におかしい経営者というものは、どうにもならないものだ。どんどんおかしくなる。権力にはたえず取り巻きができる。これらも一心同体となっておかしくなる。
企業も国家も盛衰・浮沈はどうやらそうしたことで決定されていくものである。
アメリカの救い
それはさておきアメリカのトランプ大統領とメディアとの関係、お互いにリスペクトなしに罵り合っている。これはこれでアメリカの実体であり、行き過ぎている感はあるが、チェック&バランスは効いているようにもみられる。
権力とは放っておけばおかしくなるものである。それだけに三権分立とか、メディアとかが確立されてきた。チェック&バランスが効かなければ、独裁に陥り、全体がおかしくなる。それを避けるための知恵が権力の分立・分散ということになる。
トランプ大統領の動向を診ていても思うのは、メディアを含めてチェック&バランスが効いており、少なくても「独裁国家」には陥っていない。そこが救いというか、あえていえばアメリカの凄いところといえるのではないか。
(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)