- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- クレスコは2000年来の高値水準、17年3月期増収増益・連続増配予想
クレスコは2000年来の高値水準、17年3月期増収増益・連続増配予想
- 2017/3/21 08:11
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クレスコ<4674>(東1)はビジネス系ソフトウェア開発を主力として、カーエレクトロニクス関連など組込型ソフトウェア開発も展開している。受注が高水準に推移して17年3月期増収増益・連続増配予想である。株価は昨年来高値を更新して2000年来の高値水準だ。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。
■ビジネス系ソフトウェア開発が主力
ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。
16年3月期のセグメント別売上構成比は、ソフトウェア開発事業が82.6%(金融関連が41.7%、公共・サービスが19.4%、流通・その他が21.5%)、組込型ソフトウェア開発事業が17.0%(通信システムが3.0%、カーエレクトロニクスが6.8%、その他が7.2%)、その他事業が0.4%だった。
なお16年8月子会社クレスコ上海の解散・清算(17年3月清算完了見込み)を発表した。中国市場の縮小や日本企業の中国撤退などで業績が低迷していたため、経営資源を他事業に集中することがグループの今後の発展に重要であるとの結論に至った。連結業績への影響は軽微としている。
また2月27日には、4月1日付でベトナム・ハノイ市に駐在員事務所を開設すると発表した。開発コストや人材の観点から現地協業企業を開拓し、オフショア開発体制の拡充を推進する方針だ。
■中期成長に向けて先端技術への取り組み強化
中期成長に向けた重点施策として、コア事業(システム基盤、アプリケーション開発、組み込み)を組み合わせたビジネスの推進、デジタル変革をリードする先端技術(AI、Robotics、IoT)の研究・拡大、品質・生産性の徹底的追求、サービスビジネスの推進、グループシナジーの強化およびM&A・アライアンスの推進、開発体制の拡充(ニアショア、オフショア、ビジネスパートナー)、積極的な情報発信(PR、IR)などを推進している。
オリジナル製品・サービスでは「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」などの拡販を推進している。16年3月には企業向けIoTプラットフォーム「KEYAKI」を発表した。Beaconプラットフォーム「BeaconBridge」の後継ソリューションで、NFC等の近距離無線機器、各種センサー、マイクロサーバー、スマートフォンなど多種多様で大量のIoTデバイスに対応し、外部アプリケーションサービスの接続を担うIoTプラットフォームである。
15年7月には「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定され、テクノロジーパートナーとしてPepperをはじめとするロボット、モバイル、パソコンに対するさまざまなアプリケーション開発を通じてWatsonによるビジネス変革を支援している。またロボットプラットフォーム「まるロボ」のビジネスケースを策定中としている。
16年10月には名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学分野と、眼科領域における画像診断の補助に活用する人工知能(AI)システムの共同研究を実施すると発表した。そして16年11月、鳥取大学にて開催された電子情報通信学会医用画像研究会で、名古屋市立大学との共同研究の成果を発表した。
16年11月には、日本最大級の高速バスターミナル「バスタ新宿」のバス管制システムの重要な部分の一機能として、子会社アイオスが開発した「バイ・ザ・ウェイ」が採用されたと発表している。
17年1月には「第1回ロボデックス ロボット開発・活用展」においてNECフィールディングが展示する「人の顔を覚えるロボット」の開発を支援した。ソフトバンクロボティクスのPepperアプリ開発パートナーである強みと、多数のPepperアプリ開発経験を活かした。
■M&A・アライアンスも積極活用してグループ力強化
13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム・スタッフを持分法適用会社化、15年3月高速クラウド構築支援サービスのSkeedの第三者割当増資を引き受けて提携関係強化、15年4月SAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスを完全子会社、15年5月子会社クレスコ北陸がアップゾーンと資本業務提携してモバイルポータル事業に参入した。
15年9月Kii社、KDDI<9433>、大日本印刷<7912>が設立したIoT時代の新たな企業間連携を生み出す企業連合「Kiiコンソーシアム」に参加した。15年10月Web制作のメディア・マジックを子会社化した。また16年4月連結子会社を再編し、SAP社のERPの導入支援・保守運営を展開する子会社クレスコ・イー・ソリューションがエス・アイ・サービスを吸収合併した。
16年9月にはエヌシステムの全株式を取得して子会社化した。同社はJA(農業協同組合)グループの旅行事業を担う農協観光の出資で創業し、旅行業をはじめとする多種多様なフィールドでソリューションサービスを提供している。旅行業向け分野のシステム開発拡大が期待される。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は受注高が第1四半期58億81百万円、第2四半期61億19百万円、第3四半期68億79百万円、第4四半期64億09百万円、売上高が58億10百万円、61億89百万円、61億55百万円、69億09百万円、営業利益が3億80百万円、5億89百万円、5億43百万円、5億01百万円で、16年3月期は受注高が72億86百万円、70億27百万円、78億08百万円、70億09百万円、売上高が65億64百万円、72億55百万円、72億71百万円、76億85百万円、営業利益が4億23百万円、7億85百万円、7億43百万円、5億33百万円だった。
第4四半期の構成比が高く、案件別の採算性も影響する収益構造だ。また第4四半期の受注高は第3四半期に比べて減少する傾向がある。16年3月期は企業の高水準のIT投資を背景として計画超の大幅増収増益だった。ソフトウェア開発事業では金融・保険分野や公共・サービス分野、組込型ソフトウェア開発事業ではカーエレクトロニクス分野が好調だった。売上総利益は15年3月期比16.0%増加し、売上総利益率は18.2%で同0.2ポイント上昇した。販管費は同10.0%増加したが、販管費比率は9.6%で同0.4ポイント低下した。
営業外収益では有価証券売却益が増加した。ROEは14.8%で同0.7ポイント上昇、自己資本比率は63.3%で同2.5ポイント上昇した。配当は同12円増配の年間50円(第2四半期末23円、期末27円)で配当性向は32.8%だった。配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額をメドとした配当を継続的に実現することを目指している。
セグメント別動向を見ると、ソフトウェア開発事業は売上高が同14.8%増の237億67百万円(金融関連が同16.2%増の120億03百万円、公共・サービスが同10.4%増の55億72百万円、流通・その他が同16.2%増の61億91百万円)で、営業利益(連結調整前)が同20.2%増の29億04百万円だった。
組込型ソフトウェア開発事業は売上高が同15.6%増の49億01百万円(通信システムが同9.8%減の8億70百万円、カーエレクトロニクスが同25.3%増の19億48百万円、その他が同21.0%増の20億82百万円)で、営業利益が同16.0%増の6億62百万円だった。その他事業(商品・製品販売等)は売上高が同9.6%減の1億06百万円で、営業利益が39百万円の赤字(前々期は30百万円の赤字)だった。
■17年3月期第3四半期累計は営業微減益
今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.6%増の224億74百万円、営業利益が同1.6%減の19億19百万円、経常利益が同5.8%減の21億90百万円、純利益が同7.2%減の14億86百万円だった。受注高は同7.9%増の238億79百万円だった。
ソフトウェア開発事業における一部不採算案件の発生、案件小型化によるマネジメントコストの増加、開発体制強化に伴う外注費の増加、人件費の増加、本社増床・リニューアルに伴うコスト増加などで営業微減益だったが、企業のIT投資が高水準に推移して受注高および売上高は増加基調である。
売上総利益は同5.3%増加したが、売上総利益率は18.4%で同0.2ポイント低下した。販管費は同12.2%増加し、販管費比率は9.9%で同0.5ポイント上昇した。営業外収益では有価証券売却益が減少(前期2億23百万円、今期1億03百万円)した。また特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期1億49百万円、今期47百万円)した。特別損失では本社改装費用18百万円を計上した。
セグメント別に見ると、ソフトウェア開発事業は売上高が同6.0%増の185億52百万円(金融関連が同5.0%増の93億15百万円、公共・サービス分野が同7.7%増の48億21百万円、流通・その他分野が同6.5%増の44億15百万円)で、営業利益(連結調整前)が同2.6%減の21億75百万円だった。
組込型ソフトウェア開発事業は売上高が同9.4%増の38億61百万円(通信システムが同39.3%減の4億02百万円、カーエレクトロニクスが同11.7%増の15億89百万円、その他が同29.5%増の18億70百万円)で、営業利益が同24.9%増の6億27百万円だった。その他事業(商品・製品販売等)は売上高が同5.3%減の60百万円で、営業利益が22百万円の赤字(前年同期は37百万円の赤字)だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期70億14百万円、第2四半期77億26百万円、第3四半期77億34百万円、営業利益は4億70百万円、6億61百万円、7億88百万円だった。
■受注高水準で17年3月期通期は増収増益・連続増配予想
今期(17年3月期)通期連結業績予想(5月9日公表)は売上高が前期(16年3月期)比8.1%増の311億円、営業利益が同10.7%増の27億50百万円、経常利益が同5.0%増の30億円、純利益が同17.3%増の20億円としている。配当予想は同2円増配の年間52円(第2四半期末26円、期末26円)で予想配当性向は29.5%となる。
金融関連を中心とするシステム開発案件の受注が高水準に推移して、増収増益・連続増配予想である。国内のIT投資需要はセキュリティ意識の高まりも背景に、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などで高水準に推移する見込みだ。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.3%、営業利益が69.8%、経常利益が73.0%、純利益が74.3%である。営業利益進捗率がやや低水準の形だが、第4四半期の構成比が高い収益構造のためネガティブ要因とはならない。通期ベースで好業績が予想され、中期的にも収益拡大基調だろう。
■株価は2000年来の高値水準、好業績評価して上値試す
株価の動きを見ると、2月3日2688円を突破して昨年来高値更新の展開だ。3月14日には2886円まで上伸した。2000年来の高値水準である。
3月17日の終値2831円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS176円36銭で算出)は16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間52円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1078円35銭で算出)は2.6倍近辺である。時価総額は約340億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)