ヨコレイはボックス上放れて98年来の高値水準、上げ足速める可能性

 ヨコレイ(横浜冷凍)<2874>(東1)は冷蔵倉庫の大手である。低温物流サービスの戦略的ネットワーク構築に向けて積極投資を継続し、食品販売事業はノルウェーHI社との資本業務提携で業容拡大戦略を推進している。17年9月期増収増益予想で上振れ余地がありそうだ。株価は高値圏ボックス展開から上放れの動きとなった。05年高値を突破して98年来の高値水準だ。好業績も評価して上げ足を速める可能性がありそうだ。

■冷蔵倉庫事業と食品販売事業を展開

 冷蔵倉庫事業、および水産品・畜産品・農産品などの食品販売事業を展開している。16年9月期のセグメント別売上高構成比は冷蔵倉庫事業17%、食品販売事業83%、営業利益(連結調整前)構成比は冷蔵倉庫事業78%、食品販売事業22%だった。

 16年12月にはサッカーJ2リーグ「横浜FC」とのオフィシャルクラブトップパートナー契約締結を発表している。スポンサーシップを通じてスポーツ振興と地域社会への貢献を目指す。

 3月7日には、グループ企業である農地所有適格法人ダイヤモンド十勝が、農業法人を支援する北洋農業応援ファンドの第5号案件として、50百万円の出資を受けることが決定したと発表している。ダイヤモンド十勝は農業生産事業やコントラクター事業を主業とし、芽室地域内に60件を超す契約農家を擁しており、十勝農産品の生産・出荷を通して地域社会に貢献することを目的としている。

■冷蔵倉庫事業は低温物流サービスの戦略的ネットワークを構築

 冷蔵倉庫事業では低温物流サービスの戦略的ネットワーク展開に向けて積極投資を継続している。

 国内では14年4月北海道小樽市・石狩第2物流センター、14年6月大阪市・夢洲物流センター、14年10月宮崎県都城市・都城第2物流センター、16年8月北海道・十勝第3物流センター、16年11月北海道河西郡芽室町のヨコレイ十勝ソーティングスポットが竣工した。埼玉県・幸手物流センター(仮称)は17年6月竣工予定である。

 海外はASEAN地域への展開で、14年2月タイ・ワンノイ物流センター2号棟、15年8月タイ・バンパコン第2物流センターが竣工した。タイヨコレイ全体の保管収容能力はタイ国内トップシェアである。

 15年11月には、森永乳業が所有する東京都大田区京浜島の土地と平和島の土地を取得(契約締結15年9月)したと発表している。取得する平和島の土地に冷蔵倉庫を所有・運営するパックス冷蔵(森永乳業の100%子会社)の全株式を取得する。京浜島の土地には最新鋭物流センターを建設する計画だ。一連の総投資額は90億円~100億円の予定としている。

 16年3月には冷蔵倉庫建設用地として、福岡市アイランドシティ港湾関連用地4工区E区画の取得を発表した。引渡は18年3月予定である。

 16年12月には東京都大田区京浜島に「京浜島物流センター(仮称)」を新設すると発表した。自然冷媒(NH3、CO2)を用いた貨物に優しい自然対流冷却である「Sittory冷却方式(ノンドライ・ストレイジシステム)」を、石狩第2物流センターに続く2例目として採用する。竣工は18年2月予定としている。

■食品販売事業ではノルウェーの大手水産加工会社と包括的業務提携

 食品販売事業では15年8月、ノルウェーの大手水産加工会社ホフセスインターナショナル(HI社)と包括的業務提携した。業務提携によって、HI社が生産するノルウェー産アトランティックサーモン加工品の北米・欧州の大手量販店向け輸出販売を開始し、日本国内向けビジネスでは鮭ハラス製品の独占販売権を取得した。またHI社と共同出資でHFSアライアンス社を設立し、サーモンオイルを成分としたサプリメントの中国向けネット通販を開始する。

 16年3月には水産品輸出入の100%子会社アライアンスシーフーズ(ASF社)が、HI社の100%子会社でアトランティックサーモン等の加工製造を行っているSyvde社の全株式を取得した。16年7月には、ASF社とHI社が合弁で設立したHIYR AS社(ノルウェー)が、トラウト養殖事業会社Fjordlaks Aqua AS(ノルウェー、FA社)を連結子会社化した。

 16年8月にはASF社がノルウェーでサプリメントの製造販売を手掛けるHofseth Biocare ASA(HBC社)の第三者割当増資を引き受けて筆頭株主(出資比率14.4%)になると発表した。HBC社はサーモン製品を加工する際に発生する頭、骨、皮などの端材を原料として人用、ペットフード用、養殖のエサ用に利用されるオイル、プロテイン、カルシウムなどのサプリメントを製造販売している。

 Syvde社およびFA社の子会社化でノルウェーサーモン、トラウト事業において生産から加工・販売に至るまでの一貫した垂直統合モデルを完結させ、さらに今回のHBC社への出資により、加工段階で発生する端材を有効活用したサプリメント製品を循環させることで、世界自然保護基金(WWF)の理念に合致した持続可能性(サステナビリティ)事業に関与する。

■新物流センター稼働が順次収益寄与

 四半期別の業績推移を見ると、15年9月期の売上高は第1四半期399億38百万円、第2四半期350億45百万円、第3四半期395億69百万円、第4四半期402億15百万円、営業利益は12億95百万円、5億28百万円、12億28百万円、8億23百万円で、16年9月期の売上高は420億35百万円、335億37百万円、367億64百万円、362億73百万円、営業利益は18億20百万円、10億33百万円、13億62百万円、9億54百万円だった。

 16年9月期連結業績は、15年9月期比4.0%減収だが、33.4%営業増益、32.2%経常増益、16.5%最終増益だった。売上高はタイにおける経済停滞やタイパーツ安の影響、食品販売事業における回転率重視の営業政策、一部畜産品の市況悪化に伴う取扱量抑制の影響で計画を下回り減収だが、14年9月期から15年9月期までに順次稼働した4ヶ所の物流センター(ワンノイ2号棟、石狩第2、夢洲、都城第2)の稼働率向上、食品販売事業における海外事業拡大や国内在庫圧縮などの効果で、営業利益と経常利益は計画超の大幅増益となり、過去最高を更新した。

 売上総利益は同8.5%増加し、売上総利益率は8.4%で同1.0ポイント上昇した。販管費は同4.1%減少し、販管費比率は4.9%で同横ばいだった。特別損失では事務所撤去損失6億16百万円を計上した。ROEは4.8%で同0.6ポイント上昇、自己資本比率は43.2%で同8.4ポイント低下した。配当は前々期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で、配当性向は35.3%となる。

 セグメント別に見ると、冷蔵倉庫事業は売上高が同2.6%増の247億56百万円で、営業利益(連結調整前)が同21.1%増の57億51百万円だった。入庫取扱量が同3.8%増、出庫取扱量が同6.5%増、平均保管在庫量が同5.5%増と好調に推移し、増収効果や経費削減効果などで当期稼働2ヶ所物流センター(バンバコン第2、十勝第3)立ち上げに伴う臨時経費等を吸収した。

 食品販売事業は売上高が同5.2%減の1237億93百万円だが、営業利益が同36.1%増の16億18百万円だった。回転率重視の営業政策や一部畜産品の市況悪化に伴う取扱量抑制の影響で減収だったが、海外事業を担うアライアンスシーフーズにおけるノルウェーのアトランティックサーモン事業やバレンツ海のカニ事業が順調に進展し、利益面では国内事業の在庫圧縮効果も寄与した。分野別に見ると水産品は増収増益、畜産品は減収増益、農産品は減収増益だった。

■17年9月期第1四半期は2桁増益、食品販売事業が改善

 今期(17年9月期)第1四半期(10~12月)の連結業績は売上高が前年同期比0.5%増の422億46百万円、営業利益が同10.4%増の20億09百万円、経常利益が同22.9%増の24億53百万円、純利益が同21.0%増の15億97百万円だった。

 前期末から連結対象となったノルウェーの鮭鱒養殖事業が寄与して2桁増益だった。売上総利益は同20.9%増加し、売上総利益率は10.7%で同1.8ポイント上昇した。販管費は同30.9%増加し、販管費比率は5.9%で同1.3ポイント上昇した。営業外収益では為替差益が増加(前期1百万円、今期3億71百万円)した。

 セグメント別に見ると、冷蔵倉庫事業は売上高が同0.5%減の66億84百万円で営業利益(連結調整前)が同5.4%減の17億59百万円だった。入庫取扱量は2.2%増、出庫取扱量は4.1%増、平均保管在庫量は6.1%減だった。期初の在庫水準が前期比減少し、閉鎖を決定した子安物流センターの収入剥落、減価償却費の増加なども影響した。

 食品販売事業は、売上高が同0.7%増の355億47百万円で、営業利益が同82.3%増の8億81百万円だった。市況が改善した畜産品をはじめとして、全カテゴリーで利益率が向上した。特に水産品は前期末から連結対象となったノルウェーの鮭鱒養殖事業が寄与した。

■17年9月期通期も増収増益予想

 今期(17年9月期)通期の連結業績予想(11月14日公表)は、売上高が前期(16年9月期)比11.0%増の1650億円で、営業利益が同10.3%増の57億円、経常利益が同6.7%増の57億円、純利益が同9.1%増の32億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は32.3%となる。

 第5次中期経営計画の最終年度となり、冷蔵倉庫事業では重点地域への設備増強を図り、食品販売事業ではノルウェー事業の早期の体制安定化、国内事業における産地と消費地の事業連携強化を推進する方針だ。

 冷蔵倉庫事業では荷動きが堅調に推移し、新規稼働物流センターの収益寄与が順次本格化する。食品販売事業では不採算在庫圧縮徹底や戦略的商材拡販などの効果が期待される。通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高25.6%、営業利益35.2%、経常利益43.0%、純利益49.9%と高水準である。上期偏重の計画だが、食品販売事業の利益率改善が進展して通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。

■中期経営計画で17年9月期純利益32億円目標

 第5次中期経営計画「Flap The Wings 2017」に基づいて、冷蔵倉庫事業では「クールネットワークのリーディングカンパニー」を目指し、食品販売事業では「安定的な利益追求を基本としながらも、強みのある商材を全社的に展開する」ことを命題としている。

 目標数値は、17年9月期売上高1650億円、営業利益57億円(連結調整前の冷蔵倉庫事業56億65百万円、食品販売事業20億67百万円)、経常利益57億円、純利益32億円、ROE5.1%、配当性向40%、EBITDA100億円、自己資本比率52.0%としている。配当政策の基本方針は安定的な配当を継続して行うとしている。そして企業価値向上に必要な設備・IT投資等を勘案しつつ、配当性向40%以上を維持していくことを目標としている。

■株主優待は毎年9月末に実施

 株主優待制度は毎年9月30日現在の1000株以上保有株主に対して実施している。優待内容は1000株以上~3000株未満保有株主に対して鮭切身詰め合わせ、3000株以上保有株主に対して北海道産ホタテ・いくらセットを贈呈する。

■株価はボックス上放れて98年来の高値水準、上げ足速める可能性

 株価の動きを見ると、大勢として1000円~1100円近辺でのボックス展開の形だったが、3月9日に1138円、3月17日に1140円まで上伸し、高値圏ボックスから上放れの動きとなった。05年高値1038円を突破し、98年来の高値水準だ。

 3月17日の終値1140円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円83銭で算出)は18~19倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1198円56銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約598億円である。

 週足チャートで見ると1100円近辺のフシを突破し、13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じてきた。好業績も評価して上げ足を速める可能性がありそうだ。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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