【アナリスト水田雅展の企業レポート】バルクホールディングスは住宅関連事業を譲渡して18年3月期の収益改善期待

企業レポート

 バルクホールディングス<2467>(名セ)はコンサルティング事業、マーケティング事業、IT事業、住宅関連事業を展開する持株会社である。住宅関連事業が低調なため17年3月期業績予想を減額したが、その住宅関連事業を17年3月譲渡して18年3月期は収益改善が期待される。今後はグループ内で高いシナジー効果が見込めるコンサルティング事業、マーケティング事業、およびIT事業に経営資源を集中して収益基盤を強化する方針だ。株価は戻り高値圏から反落してモミ合う展開だが、17年3月期減益予想の織り込みが完了し、18年3月期の収益改善期待を強める動きとなりそうだ。

■コンサルティング事業などを展開する持株会社

 コンサルティング事業、マーケティング事業、IT事業、住宅関連事業を展開する持株会社である。傘下に連結子会社バルク(コンサルティング事業、マーケティング事業)、マーケティング・システム・サービス(13年3月子会社化、マーケティング事業)、ヴィオ(10年5月子会社化、IT事業)、ハウスバンクインターナショナル(HBI社、14年1月子会社化、住宅関連事業)を置き、アトラス・コンサルティングを持分法適用関連会社としている。

 16年3月期のセグメント別(連結調整前)売上構成比は、コンサルティング事業9%、マーケティング事業34%、IT事業7%、住宅関連事業50%だった。また営業利益構成比はコンサルティング事業36%、マーケティング事業38%、IT事業10%、住宅関連事業16%だった。

 なお住宅関連事業については、子会社HBI社が京都府長岡京市で戸建住宅建築請負工事およびリフォーム工事全般を展開しているが、競争激化や建築コスト上昇などで利益率が低下していた。そして当社グループにおけるHBI社の位置付けを検討した結果、保有株式の全部を譲渡する方向となり、17年3月HBI社の全株式をHBI社の元親会社であるS&G社(京都市)に売却した。

 今後はグループ内で高いシナジー効果が見込めるコンサルティング事業、マーケティング事業、およびIT事業に経営資源を集中して収益基盤を強化する。

■プライバシーマーク・ISO27001認定取得支援に強み

 コンサルティング事業はバルクが個人情報保護など情報セキュリティマネジメント分野において、プライバシーマーク認定取得支援、ISO27001(ISMS)認証取得支援、および運用支援を主力としている。

 情報セキュリティマネジメント分野のリーディングカンパニーである。プライバシーマーク認定取得は国内トップクラスの1600件超、ISO27001認証取得は500件超の取得支援実績を誇っている。自社社員によるコンサルタント、ISMS審査員資格保有者の在籍、自社開発の支援ITツールによる作業負担軽減、教育支援メニューや取得後の継続維持・運用サポートメニューの充実などを強みとして、あらゆる業種・業態への対応実績を持つ。このため企業にとっては短期間での取得が可能になる。

 15年6月には業界初の情報セキュリティマネジメントシステム運用支援クラウドサービス「V-Cloud」をリリースした。進捗状況が一目瞭然などで運用スケジュールが簡単に管理できるなどの特徴があり、プライバシーマーク更新やマイナンバー制度対応のセキュリティコンサルティングサービスも含めて、顧客囲い込み戦略を推進する方針だ。

 なお「V-Cloud」リリース後は更新比率が大幅に上昇し、クラウド利用社数が大幅に増加している。導入実績は200アカウントを突破している。月額課金型のため顧客囲い込みによってストック収益拡大にも繋がる。16年5月には「V-Cloud」のでeラーニング(v-assist動画教育システム)機能を搭載し、顧客における運用効率の改善と自力運用を強力にサポートするツールとなった。

 また16年5月には、企業の情報漏洩や内部統制リスクを分析して対策を支援する、効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」のサービス提供開始を発表した。Web調査により企業内部の潜在化・顕在化するリスクを分析し、コンプライアンス診断~様々なコンプライアンスリスクの対策提案および対策支援~その後の効果測定まで提供する、今までにないオールインワンサービスで、大企業向けに販売する。

■マーケティング事業は新製品モニター調査などが主力

 マーケティング事業はバルクがマーケティングリサーチ事業、マーケティング・システム・サービスがSP(セールスプロモーション)事業や広告代理業を展開している。

 バルクのマーケティングリサーチ事業は大手メーカーの新製品開発時のモニター調査などを主力としている。ネットリサーチ・インタビューなどの調査手法をベースとして、調査の企画・設計・分析・実査から商品企画などのマーケティング戦略支援まで、企業のマーケティング活動における課題を総合的にワンストップで解決・支援する。15年7月には店頭調査「Shoppers Direct」を発表した。実際のお店に来店するお客様の「行動の観察」や「インタビュー」を行うことで、従来の調査では知ることのできない「気付き」を得ることができるなどの特徴を持つ。

 マーケティング・システム・サービスのマーケティング事業は、食品関連流通事業者(スーパー、食品卸など)のフリーペーパー、食品・飲料メーカーのSPツール・ノベルティ制作などでクライアントの課題解決を総合的に支援している。関東の大手スーパー向けを主力としている。

■IT事業は開発リソースをグループ内システム開発にも活用

 IT事業はヴィオが、大手SIベンダーからのビジネスアプリケーションなどの受託開発を主力として、オリジナルのパッケージソフトを活用したITソリューションサービスも展開している。

 企業間ネットワーク業務提携事業では、顧客とヴィオが業務提携し、共同事業でシステム導入に伴う収益を、双方の負担に応じてレベニューシェアする方式を目指している。またグループ内にシステム開発会社を持つことで、開発リソースをコンサルティング事業の運用支援ツールなどグループ内のシステム開発に活用できるメリットがある。

■アライアンス戦略も積極推進

 アライアンス戦略も積極推進している。15年8月バルクが、ITコンサルティング事業のITbook<3742>とコンサルティング事業分野で業務提携した。相互の顧客紹介、相互の製品・サービスの販売、共同提案やセミナー共催など販売活動における協調、両社の強みを生かした共同事業の創出を推進する。

 15年12月バルクが、ブーメランイット・ジャパン(BIJ社)と情報セキュリティ分野で業務提携した。BIJ社の紛失物回収サービス「マイブーメラン」をバルク社で販売するとともに、情報セキュリティ市場における共同提案やセミナー共催など販売活動における協調、情報セキュリティ市場における共同事業の創出を推進する。

 BIJ社は米国ブーメランイット社との独占ライセンス契約に基づいて、国内初の国際的紛失物回収サービス「マイブーメラン」を提供している。スマートフォン、パソコン、入退室カードなどに貼付・装着するためのシリアルナンバー(番号)を記載したラベル等を提供し、紛失物の回収を代行するサービスである。MDM(モバイルデバイス管理)システムを補完して情報セキュリティ対策の完成度を高めるサービスのため、バルクの情報セキュリティコンサルティングサービスとの高い親和性も有している。

 16年1月バルクがPICC社(東京都)と業務提携した。PICC社は個人情報保護に関する中小企業向けの第三者認証制度JAPHIC(ジャフィック)マークの認定審査機関として付与審査業務を行っている。業務提携によってバルクがPICC社の提携コンサルタント企業として、プライバシーマーク認定やISO27001(ISMS)認証では負担が過大となっていた小規模事業者向けに、JAPHICマーク認証取得支援サービスを提供する。

■マイナンバー関連などの特需や大型スポット案件も影響

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期4億23百万円、第2四半期5億29百万円、第3四半期5億56百万円、第4四半期5億52百万円、営業利益が26百万円の赤字、25百万円、32百万円、11百万円、16年3月期は売上高が6億39百万円、5億86百万円、5億47百万円、4億78百万円、営業利益が9百万円、33百万円、30百万円、4百万円の赤字だった。

 16年3月期は、コンサルティング事業においてマイナンバー制度導入を受けた情報セキュリティ体制構築・運用支援関連の受注が想定を上回り、マーケティング事業における大型スポット案件獲得も寄与した。

 売上総利益は同3.9%増加したが、売上総利益率は25.5%で同1.3ポイント低下した。販管費は同0.8%減少し、販管費比率は22.5%で同2.3ポイント低下した。特別損失では減損損失42百万円が一巡した。ROEは7.9%で同10.4%ポイント上昇、自己資本比率は47.2%で同3.2ポイント上昇した。配当は無配を継続した。

■17年3月期第3四半期累計は減収減益

 今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績は売上高が前年同期比17.6%減の14億60百万円、営業利益が同51.9%減の34百万円、経常利益が同55.9%減の32百万円、純利益が同72.1%減の15百万円だった。

 コンサルティング事業、マーケティング事業は堅調だったが、住宅関連事業が低調だったため大幅減収減益だった。売上総利益は同8.0%減少したが、売上総利益率は28.3%で同3.2ポイント上昇した。販管費は同1.7%増加し、販管費比率は25.9%で同4.9ポイント上昇した。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、コンサルティング事業は売上高が同0.6%増の1億54百万円で、営業利益が同20.4%減の44百万円だった。プライバシーマークやISO27001認証など情報セキュリティ関連認証の新規取得需要が鈍化したが、既存顧客における情報セキュリティ関連の認証更新支援や体制強化・構築支援のストック型案件が増加した。

 マーケティング事業は売上高が同0.3%増の5億86百万円で、営業利益が同35.0%増の70百万円だった。マーケティングリサーチがやや低調だったが、セールスプロモーションは大手スーパーマーケットや大手食品メーカー向けのリピート案件、スポット案件とも堅調に推移した。

 IT事業は売上高が同22.5%減の96百万円で、営業利益が同10.9%増の13百万円だった。グループ内のシステム開発や新規ビジネス開発支援向けに、戦略的に人的リソースを投入した。

 住宅関連事業は売上高が同30.9%減の6億33百万円で、営業利益が8百万円の赤字(前年同期は31百万円の黒字)だった。新築は消費増税延期に伴う駆け込み需要の先送り傾向や競争激化などで低調だった。建築コスト上昇も影響した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期4億82百万円、第2四半期5億11百万円、第3四半期4億67百万円で、営業利益は6百万円、14百万円、14百万円だった。

■17年3月期予想減額だが、住宅関連譲渡して18年3月期収益改善期待

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(2月14日に減額修正)は売上高が前期(16年3月期)比24.6%減の16億96百万円、営業利益が同78.1%減の15百万円、経常利益が同79.7%減の14百万円、純利益が5百万円の赤字(前期は51百万円の黒字)としている。配当予想は無配継続としている。

 第3四半期累計のHBI社の業績が競合激化などで計画未達だったこと、第4四半期からHBI社が連結除外となること、およびHBI社の全株式売却に伴って第3四半期累計の特別損失に関係会社株式売却損失引当金繰入額4百万円を計上したことなどを考慮して減額修正した。

 ただし18年3月期は、住宅関連事業を譲渡して全体の売上高は減少するが、赤字事業が無くなるため全体として収益改善が期待される。

 またコンサルティング事業では、情報セキュリティマネジメントシステム運用支援クラウドサービス「V-Cloud」の導入数が増加基調であり、16年5月の新機能搭載(v-assist動画教育システム)の効果や、効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」も寄与してストック型収益の伸長が期待される。主要ターゲットを大企業にシフトしてストック型収益を一段と伸長させる方針であり、中期的にも収益構造転換と収益改善が期待される。

■株価は17年3月期減益の織り込み完了し、18年3月期の収益改善期待

 株価の動きを見ると、150円近辺の戻り高値圏から反落し、120円~130円近辺でモミ合う展開だ。ただし大きく下押す動きは見られず調整一巡感を強めている。3月21日の終値は128円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS89円63銭で算出)は1.4倍近辺、時価総額は約10億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が下値を支える形だ。17年3月期減益予想の織り込みが完了し、18年3月期の収益改善期待を強める動きとなりそうだ。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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