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パイプドHDは調整一巡して出直り期待、18年2月期も収益拡大基調を予想
- 2017/3/23 08:09
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業、広告事業、ソリューション事業を展開している。17年2月期大幅増収増益予想・連続増配予想で、18年2月期も収益拡大基調が予想される。株価はモミ合い展開だが、調整一巡して出直り展開が期待される。なお3月31日に17年2月期決算発表を予定している。
■旧パイプドビッツの純粋持株会社
15年9月パイプドビッツが純粋持株会社パイプドHDを設立して東証1部に上場した。16年9月には一般社団法人日本個人情報管理協会からJAPiCOマーク付与を認定された。17年1月には、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC27001」および国内規格「JISQ27001」の認証を取得した。
国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(情報資産プラットフォーム「スパイラル」によるデータ管理などのクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、ソリューション事業(インターネット広告制作やWebシステム開発の請負、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、BIMコンサルティング、デジタルCRM)を展開している。16年2月期の売上構成比は情報資産プラットフォーム事業76%、広告事業6%、ソリューション事業18%だった。
16年2月期の連結子会社は、パイプドビッツ(情報資産プラットフォーム・広告・ソリューション事業)、ペーパーレススタジオジャパン(建築プロデュース&マネジメント・BIMコンサルタント事業)、アズベイス(コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」事業)、パブリカ(オープンデータサービス事業)、ウェアハート(アパレル・雑貨品ECサイト構築・運営受託事業)、カレン(デジタルCRM事業)である。また持分法適用関連会社はMAKE HOUSE(住宅業界向けBIM事業)で、持分法を適用しない関連会社はSprinklr Japan(ソーシャルマネジメントプラットフォーム事業)である。
16年3月新設した事業承継会社は、ゴンドラ(情報資産プラットフォーム・広告・Webソリューション・ソーシャルマネジメント事業)、フレンディット(ECプロデュース・情報資産プラットフォーム・ソリューション事業)、美歴(美容室向け電子カルテ「美歴」を中心とするプラットフォーム構築)である。
16年10月には連結子会社ブルームノーツを設立した。中小企業が抱える人材育成に関する課題解決のため、企業独自のノウハウをプログラムとして体系化し、運用を支援する人材育成代行事業を推進する。
16年12月には、子会社ウェアハートが15年7月から行っていた女性ファッション誌の通販サイトの運用および付帯する事業から撤退(17年2月28日予定)すると発表した。事業構造的な赤字体質を改善し得ない状況のため撤退を決定した。ウェアハートは今後、清算に向けた処理を進める予定としている。なおアパレル・ファッションに特化したECサイトの構築および運営受託事業は継続する。
17年1月には子会社2社の設立を発表した。VOTE FORは、政治関連活動に特化した「政治山」の運営およびソリューション事業を展開する。政治・選挙情報サイト「政治山」の運営で得たネットワークと、ネット投票に関する研究で蓄えた知見を活かしてネット投票の普及拡大に貢献する。アイラブは、地域における店舗等を中心としたソリューション提供および各種イベント開催に関する事業を展開する。地域密着型Webサイト・アプリ「I LOVE 下北沢」の提供などで得たノウハウを活かして、地域活性化に貢献する。いずれも17年3月1日付で設立、業務開始した。
■情報資産プラットフォーム「スパイラル」は国内最大規模
主力の情報資産プラットフォーム事業は、国内最大規模の情報資産プラットフォームである「スパイラル」を基盤として、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを展開している。
また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連ヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」、コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」、自治体向け広報紙オープン化・活用サービス「マイ広報紙」、ソーシャルマネジメントプラットフォーム「Sprinklr」なども展開している。AKB48「選抜総選挙」の総選挙集計事務局も運営している。
15年7月マイナンバー運用体制整備をサポートする「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」を開始した。またオムニチャネル対応で顧客情報統一管理を担う「スパイラル・オムニチャネルソリューション」を開始した。
15年9月クラウド型ストレスチェックサービス「こころの診断センター」が、TAC<4319>の改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)対応サービス「ストレスチェック義務化トータルソリューション」に採用された。15年12月施行の改正労働安全衛生法は従業員50人以上の全事業所にストレスチェック実施を義務付けている。
16年5月「スパイラル マイナンバー収集代行サービス」を開始した。収集対象者への案内書類発送から対象者の申請受付、不備チェック、データ化、管理、取扱報告書までワンストップで提供する。
16年7月には、公益社団法人企業情報化協会(IT協会)主催の「平成28年度第3回サービス・ホスピタリティ・アワード」において、情報資産プラットフォーム「スパイラル」の業界特化型サポートサービス「ユーザーズデスク」が優秀賞を受賞した。
■M&A・アライアンス戦略も積極活用
M&A・アライアンス戦略も積極活用している。15年2月世界有数のソフトウェアベンダーである米国Sprinklr(スプリンクラー)の日本法人Sprinklr Japanに出資(A種優先株式)し、15年3月米国Sprinklrに純投資目的で総額約4百万米ドル(4億78百万円)出資した。15年4月ペーパーレススタジオジャパンとエヌ・シーエヌが住宅業界向けBIM事業を展開する合弁会社MAKE HOUSEを設立した。またソフトブレーン<4779>と業務提携した。
16年3月SBIインベストメントが運営するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(FinTechファンド)に1億円出資した。またベトナムのMQ社と共同で、ベトナムにおけるC2Cマーケットプレース事業(フリマ事業)およびEC事業等を目的とする新会社MOKI(当社出資比率25%)設立に関する基本合意書を締結した。16年4月ゴンドラ、ジェイアール東日本企画、TWENTY FOUR、ビーマップ<4316>の4社共同出資で、インタラクティブ(双方向)コミュニケーション業務を展開する新会社(ゴンドラ出資比率10%)を設立した。
■契約数増加に伴うストック型収益構造
四半期別の推移(16年2月期第3四半期からパイプドビッツHD)をみると、15年2月期は売上高が第1四半期7億14百万円、第2四半期7億98百万円、第3四半期8億00百万円、第4四半期8億61百万円、営業利益が1億40百万円、1億65百万円、1億71百万円、1億49百万円で、16年2月期は売上高が9億35百万円、9億46百万円、9億64百万円、11億60百万円、営業利益が1億64百万円、1億78百万円、86百万円、1億51百万円だった。
契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。16年2月期は主力事業が好調に推移して16期連続増収だが、人員増加などの先行投資負担やソリューション売上増加に伴う外注加工費の増加などで減益だった。期末人員は同62名増加の322名だった。売上総利益率は71.3%で15年2月期比4.8ポイント低下、販管費比率は56.8%で同0.3ポイント上昇した。ROEは11.1%で同4.8ポイント低下した。配当性向は56.8%、純資産配当率は6.3%だった。
16年2月期末の有効アカウント数(全事業合計)は1万734件で同23件減少(獲得数2632件、解約数2655件)した。「ネットde青色申告」フリーミアム化に伴って443件減少し、第3四半期に「スパイラルプレース」の中型・大型解約が発生したため一時的に解約率が上昇した。
セグメント別に見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同15.8%増の30億41百万円、営業利益(連結調整前)が同7.3%減の5億52百万円だった。有効アカウント数は1万390件(「スパイラル」3300件、「スパイラルEC」55件、「ネットde会計」「ネットde青色申告」1285件、「スパイラルプレース」5507件など)だった。
広告事業は顧客基盤拡大で売上高が同51.6%増の2億22百万円、営業利益が同3.0倍の53百万円だった。有効アカウント数は202件だった。なお売上高は広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)で、広告枠仕入高控除前の総額表示(グロス表示)では20億35百万円だった。ソリューション事業は売上高が同85.7%増の7億43百万円、営業利益が25百万円の赤字(15年2月期は11百万円の黒字)だった。有効アカウント数は142件だった。
■17年2月期第3四半期累計は大幅増収・営業増益
前期(17年2月期)第3四半期累計(3~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比22.5%増の34億87百万円、営業利益が同39.0%増の5億96百万円、経常利益が同44.9%増の6億07百万円、純利益が同42.8%増の2億85百万円だった。
有効アカウント数(全事業合計)は1万704件で同203件(1.9%)減少したが、増収効果で人件費増加などを吸収し、大幅増収増益だった。売上総利益は同18.2%増加したが、売上総利益率は70.0%で同2.5ポイント低下した。販管費は同12.8%増加したが、販管費比率は52.9%で同4.5ポイント低下した。期末人員は同35名増加の324名だった。
セグメント別に見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同9.7%増の24億46百万円、営業利益(連結調整前)が同57.3%増の6億15百万円だった。有効アカウント数は1万295件だった。
広告事業は売上高が同4.3%増の1億76百万円、営業利益が同17.1%減の34百万円だった。有効アカウント数は216件だった。なお売上高は広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)で、広告枠仕入高控除前の総額表示(グロス表示)では16億57百万円だった。
ソリューション事業は、売上高が同93.0%増の8億65百万円、営業利益が53百万円の赤字(前年同期は3百万円の赤字)だった。有効アカウント数は193件だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期11億62百万円、第2四半期11億86百万円、第3四半期11億39百万円、営業利益は2億16百万円、1億92百万円、1億88百万円だった。
■17年2月期通期も大幅増収増益予想
前期(17年2月期)の連結業績予想(12月28日に減額修正)は、売上高が前々期(16年2月期)比19.8%増の48億円、営業利益が同42.9%増の8億30百万円、経常利益が同48.0%増の8億30百万円、純利益が同73.4%増の4億30百万円としている。
ウェアハートの事業撤退、その他の事業の進捗状況を勘案して減額修正したが、修正後も大幅増収増益予想である。また今期は従業員の積極採用を控える方針としている。Sprinklr Japanおよび米国Sprinklrの投資損益については織り込んでいない。
配当予想は据え置いて、実質的に前期比3円増配の年間21円(第2四半期末9円、期末12円)としている。予想配当性向は37.1%となる。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が72.7%、営業利益が71.9%、経常利益が73.1%、純利益が66.3%である。契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造であり、通期ベースで好業績が期待される。そして18年2月期も収益拡大基調が予想される。
■株価は調整一巡して出直り期待
株価の動きを見ると、戻りが鈍く1100円近辺でモミ合う展開だ。ただし大きく下押す動きは見られず、調整一巡感も強めている。
3月22日の終値1103円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS56円67銭で算出)は19~20倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間21円で算出)は1.9%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS240円98銭で算出)は4.6倍近辺である。時価総額は約89億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺でモミ合う形だ。調整一巡して出直り展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)