セレスは調整一巡して反発期待、17年12月期増収増益予想

 セレス<3696>(東1)はスマホ向けポイントサイト運営が主力のスマートフォンメディア事業を展開している。ポイントメディア事業が順調に拡大して17年12月期増収増益予想である。中期的にも収益拡大基調が期待される。FinTech・O2O関連などのテーマ性もあり、株価は調整一巡してレンジ下限から反発展開が期待される。

■ポイントサイト運営などスマートフォンメディア事業を展開

 国内最大級のスマホ向けポイントサイト「モッピー」をはじめ、ポイントメディア「モバトク」「お財布.com」およびHRメディア「モッピージョブ」を運営するスマートフォンメディア事業を展開している。

 このうちポイントメディア「モッピー」「モバトク」「お財布.com」は広告閲覧、スマホアプリダウンロード、ショッピング、アンケートなどのアクションに応じて、現金・電子マネー・ビットコイン等との交換が可能なポイントが貯まる無料会員サービスを提供している。HRメディア「モッピージョブ」はアルバイト求人広告サイトである。成功報酬型広告収入や採用課金型収入などが収益柱である。

■自社運営メディア利用価値最大化を目指す

 自社運営メディアの利用価値を最大化することを目指し、M&A・アライアンスも積極活用してユーザー数拡大や掲載広告数増加を推進している。ポイントメディア事業の強化、自社運営メディアのポイントとビットコインのビジネスシナジーの強化などを推進するとともに、中期的にはウェアラブルメディア(ウェアラブル広告)としてのスマートウォッチ向けアプリサービスの提供、スマートフォン端末と自社ポイントメディアを活用したO2Oビジネス分野への進出などにより、事業収入の多様化を図る方針を打ち出している。

 15年5月ビットコイン販売・買取・決済サービスのbitFlyerと業務提携、15年8月ビットコインサービス「coincheck」提供のレジュプレスと資本業務提携、15年9月ブロックチェーン技術を基に非中央集権型クラウドコンピューティングシステム「orb」を開発するOrbに出資、15年12月一般社団法人FinTech協会に入会、15年12月ビットコインサービス「ビットバンクウォレット」「ビットバンクトレード」のビットバンクに追加出資して業務提携した。

 16年5月決済連動マーケティングCLO(Card Linked Offer)アプリ「CRECO」のアイ・ティ・リアライズと資本業務提携、16年6月東京大学発ベンチャー企業のジャノムとビットコインに関するアプリケーション共同開発で業務提携、O2O関連サービスの共同開発でゆめみと資本業務提携して持分法適用関連会社化、16年7月スマホ向けビットコイン関連サービス「breadwallet」を提供する米国のベンチャー企業breadwallet社と資本業務提携した。

 16年8月には「モッピー」「モバトク」「お財布.com」がLINE<3938>の「LINEポイント」とポイント交換で連携した。さらに「モッピー」においてセブン・カードサービスの「nanacoポイント」とポイント交換を開始した。16年9月には三井住友フィナンシャルグループのセディナと提携して、ポイントチャージが可能な国際ブランド付きプリペイドカード「POINT WALLET VISA PREPAID」を発行し、O2O事業としてポイント決済サービスを開始した。16年11月には、東京大学発ベンチャー企業ジャノムと共同開発した仮想通貨ビットコイン送金サービス「CoinTip」を開始した。

 16年12月にはDMP専業国内最大手のインティメート・マージャーと、Eメールを活用した高精度のターゲティングを可能とする「Eメール型ダイナミックリターゲティング広告」の共同開発で業務提携した。

 17年2月にはIndieSquareと提携し、ブロックチェーン技術をベースとした独自の仮想通貨(トークン)の発行と位置情報技術(GPS)を活用したO2Oキャンペーンとして、バレンタイン特別企画「モッピーGO」を、期間限定で実証実験を行った。

 また17年2月には持分法適用関連会社ゆめみと共同で、人工知能(AI)および機械学習を利用した最適な広告配信技術等を研究・開発するビジネスサイエンスAIラボを設立した。

■四半期ベースで増収基調

 15年12月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期6億71百万円、第2四半期7億95百万円、第3四半期8億50百万円、第4四半期8億49百万円、営業利益は1億05百万円、1億23百万円、1億59百万円、76百万円だった。四半期ベースで増収基調である。

 なお15年12月期の売上総利益率は36.6%で14年12月期比2.0ポイント低下、販管費比率は21.9%で同3.1ポイント低下、ROEは15.2%で同16.2ポイント低下、自己資本比率は57.2%で同8.3ポイント上昇した。

■16年12月期は2桁増収・営業増益

 前期(16年12月期)の非連結業績は、売上高が前々期(15年12月期)比17.7%増の37億26百万円、営業利益が同19.7%増の5億57百万円、経常利益が同8.5%増の4億97百万円、純利益が同2.4%増の2億75百万円だった。2桁増収・営業増益で、売上高と営業利益とも4期連続で過去最高だった。

 効率的広告出稿の強化、内部プロモーション(友達紹介プログラムとゲーミフィケーション導入)、M&Aを含めた積極投資の継続などでポイントメディア会員数が順調に増加した。16年12月末のポイントメディア登録会員数は同37万人増加して304万人となった。HRメディア「モッピージョブ」求人広告掲載件数は、16年末までに大手メディア並み10万件という目標に対して、実績は11万3798件となった。

 売上総利益は同13.8%増加したが、売上総利益率は35.4%で同1.2ポイント低下した。販管費は広告宣伝費や人材関連費用などで同9.8%増加したが、販管費比率は20.4%で同1.5ポイント低下した。EBITDA(=営業利益+減価償却費+のれん償却費)は同19.1%増の6億45百万円だった。

 営業外費用では市場変更費用35百万円、株式交付費13百万円、新株予約権発行費7百万円、特別損失では投資有価証券評価損29百万円を計上した。16年12月末時点の従業員数(役員除く)は同10名増加の83名(うち正社員が同10名増加の67名)となった。

 なお中長期成長戦略を実行すべく、約20億円の資金調達を実施した。ROEは8.9%で同6.3ポイント低下、自己資本比率は73.8%で同16.6ポイント上昇した。配当は年間8円(期末一括=東証1部上場記念配当8円)とした。配当性向は26.2%だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期9億03百万円、第2四半期9億04百万円、第3四半期9億50百万円、第4四半期9億68百万円、営業利益は1億63百万円、1億30百万円、1億71百万円、92百万円だった。第4四半期の売上高は順調だったが、営業利益は決算賞与などのコスト増加が影響した。

■17年12月期も増収増益予想で収益拡大基調

 今期(17年12月期)の非連結業績予想(2月14日公表)は、売上高が前期(16年12月期)比12.7%増の42億円、営業利益が同7.7%増の6億円、経常利益が同19.9%増の5億96百万円、純利益が同40.8%増の3億87百万円としている。

 ポイントメディア事業が順調に拡大し、HRメディアを含めたコンテンツメディア事業の立ち上げも寄与する。コンテンツメディア事業の新規メディアやO2O事業への投資を加速させるため先行投資負担が増加するが、増収効果で吸収して増益予想である。経常利益と純利益は前期計上した市場変更費用や投資有価証券評価損の一巡も寄与する。配当予想は記念配当を落として無配としている。

■中期経営計画で21年12月期EBITDA30億円目指す

 17年2月発表した中期経営計画(21年12月期を最終期とする5ヵ年計画)では、目標数値に21年12月期の売上高150億円、EBITDA30億円を掲げた。

 事業別にはポイントメディア事業の売上高100億円でEBITDA30億円、コンテンツメディア事業の売上高30億円でEBITDA6億円、O2O事業の売上高20億円でEBITDA4億円としている。基本戦略としては、ポイントメディアのアクティブ会員数700万人を目指し、さらに「ポイントメディア+α」への投資を拡大する。

■株価は調整一巡してレンジ下限から反発期待

 株価の動き(16年12月12日付で東証マザーズから東証1部に市場変更)を見ると、1月の戻り高値圏1800円台から反落して水準を切り下げている。調整局面だ。ただし売られ過ぎ感も強めている。

 3月24日の終値1507円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS37円52銭で算出)は40倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS416円23銭で算出)は3.6倍近辺である。時価総額は約162億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、大勢として1500円~2000円近辺でのボックスレンジの形だ。調整一巡して1500円近辺のレンジ下限から反発展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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