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パートナーエージェントは目先的な売り一巡して下値固め完了、中期成長力を見直して戻り試す
- 2017/3/27 07:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パートナーエージェント<6181>(東マ)は婚活支援サービスを展開している。高いスキルを持ったコンシェルジュによる活動支援を特徴として高い成婚率を実現している。新システム「CONNECT-ship」停止に伴う一時的要因で17年3月期は減益予想となったが、中期的には収益拡大基調が期待される。株価は目先的な売りが一巡して下値固め完了感を強めている。国策関連のテーマ性もあり、中期成長力を見直して戻りを試す展開が期待される。
■婚活支援サービス(パートナーエージェントサービス)を提供
「本当に信頼できる結婚情報サービスを提供する結婚エージェント会社」を目指し、会員に結婚相手を紹介するパートナーエージェント事業、および関連サービスとして非会員向け低価格婚活サービスのファスト婚活事業、企業・自治体向け婚活支援サービスのソリューション事業、成婚退会会員向けライフサポートサービスのQOL(Quality of life)事業を展開している。連結子会社シンクパートナーズは広告代理事業を行っている。
16年2月には成婚会員数累計1万人を達成した。06年9月15日サービス開始から創業10年目での大台達成である。
なお16年9月、女性の活躍推進における取り組みに関連して、優良な事業主として「えるぼし」の認定(最高位)を取得している。
■高いスキルを持ったコンシェルジュの活動支援を特徴として高成婚率を実現
パートナーエージェント事業は、結婚を望む会員に対して結婚という成果をもたらすため、情報の提供から、お相手の紹介、出会いの機会の提供といった結婚に至るまでの一連の活動、いわゆる婚活支援サービスを提供している。
サービスの特徴としては、1年以内を目途に結婚相手を見つけたい顧客に対し、プロセスに手間や時間をかけず費用対効果の高いサービスを求めるニーズに応えるべく、高いコーチングスキルを持った専任コンシェルジュ(担当制)がPDCAサイクルに基づく活動支援を行っている。
データによるマッチングに加えて、コンシェルジュという人間を通して紹介することで同業他社との差別化を図るとともに、結果的に高い成婚率(年間成婚退会会員数÷年間平均在籍会員数)(16年3月期実績27.2%)の実現や、費用対効果の高いサービス提供に繋がっている。なお成婚率の全国平均は推計10%前後とされており、当社における成婚率は極めて高水準である。
コンシェルジュによる紹介だけでなく、出会いの機会を提供するため会員向け各種イベント企画・運営も行っている。イベント専門スタッフが運営し、イベントスペースを自社店舗内に設けることで機動的な開催を可能にし、イベント会場を借りるための費用削減も図っている。また各種オプションサービス(会員の活動をより効果的にするための有料の任意選択サービス)として、会員がアクセスできる特設ページに自分の顔写真やPR記事を掲載できる「MYPR」サービス、会員向け写真撮影会、各種セミナーなどを提供している。
なおサービス料金体系は登録料、初期費用、月会費、成婚料(成功報酬)、その他(イベント・セミナーへの参加費用、オプションサービス費用など)となっている。
■関連サービスも展開
関連サービス事業では、非会員向け低価格婚活サービスのファスト婚活事業、企業・自治体向け婚活支援サービスのソリューション事業、成婚退会会員向けライフサポートサービスのQOL事業を展開している。
ファスト婚活事業は、低価格で気軽に始める婚活サービスと位置付けた非会員向けイベント事業として、非会員向け婚活パーティ「OTOCON」を企画・運営している。会員向けイベントと同様に自社店舗内で運営して社内設備の有効活用に繋がる他、パートナーエージェント事業とのシナジー効果を生み出すため入会チャネルの一つと位置付けている。またオンライン婚活サービスとして、ヤフー<4689>運営の婚活ポータルサイト内で「Yohoo!婚活コンシェルプラン」を提供している。店舗運営費用を削減し、サポートにかかる費用のみでサービスを提供するため、一般的な結婚情報サービスと比較して低料金での利用が可能となる。
企業・自治体向け婚活支援サービスのソリューション事業は、システム開発・保守・運用やコンサルティングサービスなどを提供し、システム提供に伴う初期費用や保守費用などが収入となる。16年3月期受託件数は企業向け1社、自治体向け14自治体だった。
16年9月には福島県の結婚支援事業にかかる包括的支援業務受託を発表している。福島県が運営する「ふくしま結婚・子育て応援センター」向けに当社開発の結婚支援システム「parms」をカスタマイズして提供する。システム稼働は19年1月予定である。この他に佐賀県、三重県、京都府などで受注実績がある。
ライフサポートサービスのQOL事業は、成婚した退会会員向けに結婚式場・保険・結婚関連アイテム販売事業者などを紹介・斡旋するサービス「アニバーサリークラブ」を提供している。
■中期成長に向けて新規事業も推進
中期成長戦略としては、パートナーエージェント事業の強みを活かしながら多様な婚活ニーズに対応するため、4つの事業領域(パートナーエージェント事業、ファスト婚活事業、ソリューション事業、QOL事業)を強化するとともに、3つの新規事業(ファスト婚活事業における低価格婚活支援サービス「OTOCON MEMBERS婚活カウンター」、ソリューション事業における事業者間相互紹介プラットフォーム「CONNECT-ship」、QOL事業における企業主導型保育施設)を推進する。
ファスト婚活事業では、婚活パーティだけでなくプラスアルファの婚活サービスを受けたいという顧客層を開拓するため、比較的低価格で利用できる婚活支援サービス「OTOCON MEMBERS婚活カウンター」を開始した。16年5月東京・新宿店と大阪・心斎橋店の2店舗(パートナーエージェント事業から業態転換)、16年7月名古屋店、16年10月東京・銀座店、千葉・船橋店、16年11月東京・池袋店をオープンした。17年4月29日には名古屋・栄店をオープン予定である。
なお17年1月には「OTOCON MEMBERS婚活カウンター」のサービス内容改定を発表した。会員は毎月2回まで無料で婚活パーティ「OTOCON」に参加できるようにした。
ソリューション事業では16年10月、各事業者の所属会員の成婚率を一層高めて顧客満足度を向上させる取り組みとして、大手婚活支援事業者間の会員を相互紹介するプラットフォーム「CONNECT-ship」(コネクトシップ)サービスを発表した。相互紹介システムとして当社が開発・運用保守を行うプラットフォーム「CONNECT-ship」を利用し、システム利用料などが当社の収入となる。
当社(運営サービス名称パートナーエージェント、OTOCON MEMBERS婚活カウンター)、日本仲人連盟(日本仲人連盟)、日本シニアーライフ(マリックス)、リクルートマーケティングパートナーズ(ゼクシィ縁結び)の4社・5サービスが参加して、17年1月から相互紹介を開始する。一定規模の事業者間において会員を相互紹介することは婚活支援業界初の試みである。
16年11月には「CONNECT-ship」を西日本における最大級の加盟結婚相談所数を誇るJBA(一般社団法人日本結婚相談協会)が新たに利用開始することが決定し、17年1月には新たに人材総合サービス大手エン・ジャパングループのエン婚活(サービス名:エン婚活)の利用が決定した。これにより「CONNECT-ship」は6社・7サービスによって利用されることになり、利用会員数は最大5万人規模となる。今後も婚活支援事業者の参加によって規模を拡大するとともに、顧客満足度を高めて業界全体の発展も図る方針だ。
また16年11月にはベネフィット・ワン<2412>の福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」会員780万人を対象として、オンライン型婚活支援サービス「ichie(いちえ)」を17年1月から提供開始すると発表した。今まで「結婚相談所は敷居が高い」と利用を控えていた潜在顧客にとって気軽に始めやすいサービスで「CONNECT-ship」を利用できる。
16年12月には、ファスト婚活事業領域のASP型婚活支援サービスの一環として、医療用品総合通販サイト「Ciモール」などを運営する歯愛メディカル(Ciメディカル)<3540>と協力し、共同事業として「Ciモール」登録ユーザー向けに新たなオンライン婚活支援サービス「Ciしあわせエージェント」を開始(17年1月)すると発表した。新サービス利用会員は「CONNECT-ship」を利用できる。
3月23日には結婚情報誌「ゼクシィ」を運営するリクルートマーケティングパートナーズとの業務提携を発表した。パートナーエージェントで成婚退会して首都圏除くエリアに住んでいる会員向けに、リクルートマーケティングパートナーズのグループ会社リクルートゼクシィなびが運営する「ゼクシィ相談カウンター」で結婚式場を紹介するサービスを開始した。
QOL事業では内閣府が推進する企業主導型保育施設を展開する。社員の福利厚生も兼ねて、地域と連携して保育環境の改善を目指す。16年7月に「めばえ保育ルーム三鷹台」を開園し、17年11月には「めばえ保育ルーム春日」開園を予定している。また3月9日には「めばえ保育ルーム芦花公園」を17年11月に開園、3月22日には「めばえ保育ルーム亀戸」を17年7月に開園すると発表している。
■成婚率上昇して収益拡大基調
16年3月期連結業績は15年3月期比36.8%増収、同3.0倍営業増益、同3.3倍経常増益、同3.6倍最終増益だった。パートナーエージェント事業の伸長が牽引して6期連続増収、3期連続増益、3期連続過去最高益更新となった。店舗展開は5店舗を新規出店し、期末店舗数は24店舗(パートナーエージェントサービス24店舗)だった。
売上総利益は同40.4%増加し、売上総利益率は62.8%で同1.7ポイント上昇した。販管費は同24.3%増加したが、販管費比率は50.5%で同5.1ポイント低下した。人件費や広告宣伝費の増加を増収効果で吸収した。またROEは63.2%で同40.9ポイント低下、自己資本比率は40.4%で同32.0ポイント上昇した。
入会数は同16.0%増の9085人、成婚数は同36.9%増の3050人、期末在籍数は同17.9%増の1万1984人となった。過去5期間の会員数平均増加率は34.1%となった。成婚率は27.2%で同3.0ポイント上昇した。成婚率は12年3月期19.6%、13年3月期20.9%、14年3月期22.8%、15年3月期24.2%、16年3月期27.2%と5期連続上昇している。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期9億50百万円、第2四半期8億52百万円、第3四半期9億円、第4四半期9億42百万円で、営業利益は1億78百万円、50百万円、94百万円、1億23百万円だった。第1四半期は高採算のスポット案件システム収入も寄与した。
■17年3月期第3四半期累計は営業微減益
今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比9.7%増の29億64百万円、営業利益が同2.9%減の3億13百万円、経常利益が同1.6%増の3億18百万円、純利益が同13.2%増の2億38百万円だった。前期計上した高採算大型コンサルティング案件の反動などで営業微減益だった。
パートナーエージェント事業の新規入会会員数は日本結婚相談所連盟から除名された一時的要因の影響で同6.4%減少したが、在籍会員数は同3.2%増加した。成婚率は16年3月期実績27.2%を上回るペースで推移している。売上総利益は同8.6%増加したが、売上総利益率は62.2%で同0.7ポイント低下した。販管費は同11.3%増加し、販管費比率は51.7%で同0.8ポイント上昇した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期9億73百万円、第2四半期10億18百万円、第3四半期9億73百万円、営業利益は1億13百万円、1億21百万円、79百万円だった。
■17年3月期通期予想を減額修正、新システム停止に伴う一時的要因
今期(17年3月期)通期連結業績予想(1月31日に減額修正)は、売上高が前期(16年3月期)比6.0%増の38億62百万円、営業利益が同47.2%減の2億35百万円、経常利益が同44.8%減の2億40百万円、そして純利益が同51.8%減の1億37百万円としている。配当については将来に向けた投資を行っている段階のため無配を継続する。
17年1月25日リニューアル予定の新システムについて、安定稼働が当面見込めず会員が通常どおりシステムを利用できなかったため、17年1月分の月会費請求取り止めによる一時的な売上減少(1億84百万円)が発生した。また16年6月末付でIBJが運営する日本結婚相談所連盟から除名された影響で、一時的な新規入会会員数および在籍会員数の減少が生じたことによる売上高の減少(1億40百万円)も影響する。
さらに新システムを利用する提携先企業の会員に対する月会費について、相当額(62百万円)を提携先企業に補填して特別損失に計上する。
なお1月31日に旧システムを再稼働させて、サービスは従来どおり提供している。このため月会費請求取り止めは17年1月分だけで、新システム再開まで継続するのではなく一時的要因となる。
また新システムを利用して提供する予定だったコネクトシップについてはサービス提供を見合わせている。新システムの再稼働については外部システムコンサルティング会社と契約を締結して支援・助言を受け、17年6月にコネクトシップの提供を開始予定としている。
新規出店はパートナーエージェント事業3店舗、ファスト婚活事業「OTOCON MEMBERS婚活カウンター」6店舗(うち2店舗はパートナーエージェント事業から業態転換)としている。パートナーエージェント事業では16年11月高崎店、17年1月水戸店を出店した。なお中国地方に初出店(岡山店)する予定だが、先行して17年3月に姫路店を新規出店することが決定した。
■株主優待制度は毎年9月末に実施
株主優待制度導入は、毎年9月末日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として、16年9月末から実施した。優待内容は自社サービス割引利用優待(詳細は会社HP参照)を贈呈する。なお16年9月末日時点の株主を対象に創業10周年記念優待としてクオカード1000円分を贈呈した。
■株価は下値固め完了、中期成長力見直して戻り試す
株価の動き(17年1月1日付で株式3分割)を見ると、新システム停止と17年3月期業績予想減額修正を嫌気する形で、1月26日の戻り高値690円から急反落した。ただし目先的な売りが一巡して500円近辺で下値を固める動きだ。
3月24日の終値501円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円58銭で算出)は34~35倍近辺、前期実績連結PBR(17年1月1日付株式3分割換算後の前期実績連結BPS80円33銭で算出)は6.2倍近辺である。時価総額は約49億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、500円近辺が下値支持線の形だ。少子化対策や女性活躍といった国策関連のテーマ性もあり、中期成長力を見直して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)