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PALTEKは戻り歩調で昨年来高値に接近、17年12月期大幅増益予想を見直して上値試す
- 2017/3/28 07:55
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
PALTEK<7587>(東2)はFPGAを主力とする半導体輸入商社で、受託設計・開発のデザインサービス事業や新規分野のスマートエネルギー事業も強化している。FPGAの需要が拡大基調であり、17年12月期は円高のマイナス影響が一巡して大幅増益予想である。株価は戻り歩調で16年2月の昨年来高値に接近している。17年12月期大幅増益予想を見直して上値を試す展開が期待される。
■FPGAなどの半導体事業が主力
ザイリンクス社のFPGA(PLDの一種で設計者が手元で変更を行いながら論理回路をプログラミングできるLSI)を主力として、特定用途IC、汎用IC、アナログ、メモリなどを扱う半導体事業、試作ボードや量産ボードなどを受託設計・開発・製造(ODM、EMS、OEM)するデザインサービス事業、新規分野としてスマートエネルギー事業(病院・介護施設向け停電対策システム)を展開している。海外は香港に拠点展開している。
16年12月期売上構成比は半導体事業94.6%(FPGA36.0%、特定用途IC16.6%、汎用IC10.3%、アナログ7.6%、メモリ24.2%)、デザインサービス事業5.0%、その他0.4%だった。
主要仕入先は、FPGAがザイリンクス社、汎用ICがNXPセミコンダクターズ社、マイクロチップテクノロジー社、アナログがリニアテクノロジー社、メモリがマイクロンテクノロジー社である。用途別には産業機器向けを主力としてFA機器、通信機器、放送機器、医療機器、車載機器向けなどに展開し、センサ分野ソリューションも強化している。主要販売先はNEC<6701>、京セラ<6971>、オリンパス<7733>などである。
■M&A・アライアンスも活用して事業領域拡大戦略を推進
12年7月ODM/EMS事業推進や映像・画像処理関連自社製品事業の本格展開に向けてエクスプローラを子会社化した。同社はレート制御機能搭載「H.264コーデック装置」を開発している。なお16年11月、エクスプローラが最新映像圧縮技術であるH.265/HEVCに対応したエンコーダ装置を開発したと発表している。
14年6月子会社テクノロジー・イノベーションを設立し、サイミックス社から半導体事業およびMEMS(微小電気機械システム)事業を譲り受けた。特定顧客向け人感センサの信号処理ICの開発を推進する。
15年2月超高精度衛星測位システムを開発するマゼランシステムズジャパンと総販売代理店契約を締結した。センサ分野ソリューション強化の一環として、産業機器や農業機械の自動運転向けなどにRTK(リアルタイム・キネマティック)GNSSシステムを提供する。15年5月米フリアーシステムズ社の赤外線カメラに関するセンサ製品の販売を開始した。検査機器、防災機器、セキュリティ用監視カメラなどの分野で赤外線カメラに関するソリューションを提供する。
15年8月米IHS社と販売代理店契約を締結した。同社はデータ分析と予測サービスを提供し、世界150ヶ国の企業と政府機関の意思決定と戦略策定を支援している。16年2月沖電気工業<6703>とIoT市場向けに920MHz帯の無線通信製品に対する販売パートナー契約を締結した。またIoT市場向けにゲートウェイを提供するロバステル社(中国)と販売代理店契約を締結した。
16年4月米フリアーシステムズ社の高度道路交通システム(ITS)市場向け赤外線製品の販売を開始した。また改正社会福祉法に基づき、社会福祉法人に「地域における公益的な取組の実施する責務」が義務付けられたことを受け、介護施設の地域貢献を促進する停電対策システムを提供すると発表した。
16年10月には、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコム(東京都)のパートナープログラムである「SORACOM パートナースペース(SPS)」における「SPS認定済デバイスパートナー」に認定された。産業用途のIoTプラットフォームにおいて連携を強化する。
3月15日には、IoTクラウドプラットフォームを提供するUPR、IoT向けデータ通信サービスを提供するソラコムと連携し、インダストリアルIoTソリューションパッケージの販売を開始すると発表した。工場などでのIoTシステム導入を支援する。
3月22日には、企業向けビデオソリューションのマーケットリーダーであるカナダのHaivision社との販売代理店契約締結を発表した。防衛、医療、セキュリティ、映像配信メディア分野に向けて、Haivision社のビデオストリーミングおよびメディア管理ソリューションを提供する。
■仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動する収益特性
15年12月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期65億08百万円、第2四半期68億円、第3四半期73億34百万円、第4四半期81億99百万円、営業利益は4億59百万円、2億88百万円、2億20百万円、3億94百万円だった。
一部の主要仕入先に対して保有する仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動し、売上総利益の増減に影響を与える収益特性がある。ドル高・円安は売上総利益押し上げ要因、ドル安・円高は売上総利益押し下げ要因となる。ドル高・円安によって14年12月期は3億27百万円の売上総利益増加要因、15年12月期は4億31百万円の売上総利益増加要因となった。
15年12月期の為替影響除く実力値ベース売上総利益率は13.3%で14年12月期比1.3ポイント低下、為替影響含む売上総利益率は14.8%で同1.2ポイント低下した。半導体事業で売上総利益率の低い案件の売上が増加し、新規顧客案件が取引開始当初はやや低採算となることも影響して売上総利益率は低下した。販管費比率は10.1%で同1.6ポイント低下した。ROEは7.6%で同1.0ポイント上昇、自己資本比率は56.6%で同16.1ポイント低下した。配当は年間15円(期末一括、普通配当12円+記念配当3円)で配当性向は24.4%だった。
■16年12月期は円高影響で大幅減益
16年12月期連結業績は、売上高が15年12月期比16.3%増の335億44百万円、営業利益が同62.1%減の5億15百万円、経常利益が同90.3%減の1億10百万円、純利益が同98.3%減の11百万円だった。半導体事業の需要が高水準で大幅増収だが、ドル安・円高で仕入値引きドル建て債権評価額が減少して売上総利益を押し下げた。
事業別売上高は、半導体事業が同16.5%増の317億46百万円(FPGAが同10.0%減の120億66百万円、特定用途ICが同5.6%減の55億72百万円、汎用ICが同3.9%減の34億50百万円、アナログが同23.8%増の25億51百万円、メモリが同3.5倍の81億05百万円)で、デザインサービスが同21.7%増の16億49百万円、その他が同35.7%減の1億49百万円だった。
半導体事業はメモリ製品が海外メーカー向けに大幅増加した。FPGAは新規顧客向けが増加したが、通信機器、計測機器、FA向けが減少した。デザインサービス事業は医療、航空・宇宙、通信向けが増加した。その他は病院向け停電対策システムが増加したが、介護施設向けが減少した。
半導体事業の用途別売上高は、産業機器向けが同4.6%減の144億85百万円、通信機器向けが同8.6%減の50億08百万円、民生機器向けが同6.9倍の66億23百万円、コンピュータ向けが同16.8%増の16億68百万円、その他が同5.8%減の39億59百万円だった。
為替影響を含む売上総利益は同15.8%減少し、為替影響を含む売上総利益率は10.7%で同4.1ポイント低下した。為替影響額は5億30百万円の売上総利益減少要因(前期は4億31百万円の売上総利益増加要因)だった。為替影響除く実力値ベースの売上総利益は同7.5%増加し、為替影響除く実力値ベースの売上総利益率は12.3%で同1.0ポイント低下した。半導体事業において売上総利益率の低い民生機器向け案件の売上高が大幅に増加した。販管費は同5.9%増加したが、販管費比率は9.2%で同0.9ポイント低下した。
なお営業利益増減分析では、増益要因が売上高増加5億77百万円、減益要因が売上総利益率低下2億90百万円、仕入値引きドル建て債権評価額減少を含む為替影響9億61百万円、販管費増加1億70百万円としている。営業外では為替差損が増加(前期1億29百万円、今期3億20百万円)した。また営業外収益で補助金収入が減少(前期40百万円、今期2百万円)した。ROEは0.1%で同7.5ポイント低下、自己資本比率は57.4%で同0.8ポイント上昇した。
配当は同2円減配の年間13円(期末一括)とした。ただし15年12月期の年間15円には記念配当3円が含まれているため、普通配当ベースでは1円増配となった。配当性向は1238.7%である。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期94億31百万円、第2四半期78億55百万円、第3四半期76億58百万円、第4四半期86億円、営業利益は1億26百万円、30百万円の赤字、90百万円の赤字、5億09百万円だった。
■17年12月期は円高のマイナス影響が一巡して大幅営業増益予想
今期(17年12月期)連結業績予想(2月9日公表)は、売上高が前期(16年12月期)比1.4%増の340億円、営業利益が同2.3倍の12億円、経常利益が同9.5倍の10億50百万円、純利益が同61倍の7億円としている。配当予想は前期と同額の年間13円(期末一括)としている。予想配当性向は20.3%となる。
営業利益の想定増減分析は、増益要因が売上高増加62百万円、売上総利益率上昇4億95百万円、仕入値引きドル建て債権評価額減少を含む為替影響5億30百万円、減益要因が販管費増加4億04百万円としている。売上総利益は同3.1ポイント上昇の13.8%を想定し、為替影響は中立としている。このため前期減益要因となった仕入値引きドル建て債権評価額減少を含む為替影響5億30百万円が増益要因となる。
事業別売上高の計画は、半導体事業が同0.5%減の316億円(FPGAが同10.2%増の133億円、特定用途ICが同12.1%減の49億円、汎用ICが同1.5%減の34億円、アナログが同2.0%減の25億円、メモリが同7.5%減の75億円)、デザインサービスが同33.4%増の22億円、その他が同34.1%増の2億円としている。
■FPGAの市場拡大に注目
中期的な収益向上に向けた取り組みとして、半導体事業では高付加価値製品の取り扱い拡大、中核製品であるFPGAのさらなる拡販、第2の柱となる製品の売上拡大(センサー関連やIoT関連製品の拡充など)、医療・産業・通信・放送など成長分野への注力、デザインサービス事業では医療・放送・通信分野の受託設計・開発・ODM強化、自社製品の開発・販売強化、スマートエネルギー事業では病院・介護施設向け停電対策システムの構築・販売を強化する方針だ。
中核製品のFPGAに関しては、通信・産業・放送・医療・車載機器分野において、新規顧客獲得を含めて拡販を強化する。FPGAは論理回路構成を自由に書き換えられるため、世界的なトレンドとしてプロセッサーを内蔵したFPGAをメインチップとする傾向を強めている。そして今後は自動車の先進運転支援システム(ADAS)分野などを中心として市場拡大が予想されている。
また米アップルのiPhone7および7プラスに、米ラティスセミコンダクター社製のFPGAが新たに搭載されたことで、スマホ関連市場におけるFPGA需要拡大も期待され、FPGAに対する注目度が一段と高まりそうだ。
センサ関連に関しては、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の赤外線カメラモジュールを、産業機器(検査機器、防災機器、産業向け携帯情報端末)やセキュリティ用監視カメラ向けに拡販する方針だ。
中期経営計画では数値目標に、20年12月期売上高400億円以上、営業利益率5%以上を掲げている。為替動向に注意が必要となるが、高度なデザイン力やソリューション力を武器として中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度を導入
16年7月に株主優待制度の導入を発表した。毎年12月31日現在100株以上保有株主を対象として、保有株式数と継続保有期間に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HPを参照)する。16年12月期末から実施した。
■株価は戻り歩調で昨年来高値に接近
株価の動きを見ると、戻り歩調の展開で3月24日には874円まで上伸した。そして16年2月の昨年来高値919円に接近している。
3月27日の終値829円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS63円90銭で算出)は13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS812円01銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約98億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。17年12月期大幅増益予想を見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)