インフォマートは調整一巡して上値試す、利用企業数増加基調で17年12月期増収増益予想

 インフォマート<2492>(東1)は企業間電子商取引「BtoBプラットフォーム」各種システムを提供し、FinTech分野にも参入している。BtoBプラットフォーム請求書の利用企業数は17年3月13万社を突破した。また受発注事業および規格書事業における新システム「食の安全・安心 受発注」を17年5月から稼働する。利用企業数が増加基調で17年12月期増収増益予想である。株価は1月高値から反落してモミ合う形だが、調整一巡して上値を試す展開が期待される。

■BtoB(企業間)電子商取引プラットフォームを運営

 企業間で行われている世界共通の商行為を電子化する企業間電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」を運営している。16年1月サービスブランドを「BtoBプラットフォーム」に変更し、企業間受発注業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注、食の安全・安心の商品仕様書DBであるBtoBプラットフォーム規格書、企業間請求書発行・受取業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム請求書、BtoB専用の販売・購買システムであるBtoBプラットフォーム商談とした。

 これに伴って16年12月期から事業セグメント区分を変更し、受発注事業(BtoBプラットフォーム受発注)、規格書事業(BtoBプラットフォーム規格書)、ES事業(BtoBプラットフォーム請求書とBtoBプラットフォーム商談)、その他(海外・メディア事業など)とした。

 なお創業者の村上勝照代表取締役社長が3月26日逝去されたため、3月27日付で米多比昌治専務取締役が代表取締役社長に就任した。

■利用企業数は増加基調でFinTech分野にも参入

 フード業界向けで外食チェーンと食材卸の間の受発注をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注を主力として、全業界を対象とするBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数も増加基調である。

 16年12月期末のBtoBプラットフォーム利用企業数(無料利用を含む全業界のID数で集計、海外は除く)は15年12月期末比6万3011社増加の12万5050社、事業所数(本社・支店・営業所・店舗)は同12万4390事業所増加の40万4557事業所で、流通金額(全業界の受発注金額と請求書金額の合計)は2兆2942億円となった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。

 このうちBtoBプラットフォーム受発注は、買い手企業数が同320社増加の2026社、売り手企業数が同1655社増加の2万9895社となった。

 15年サービス稼働のBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数は、16年2月5万社、16年5月6万社、16年6月7万社、16年7月8万社、16年8月9万社、16年9月11万社を突破した。16年12月期末には12万4401社となり、2016年の流通金額は9095億円に成長した。増加ペースが加速し、17年3月には13万社を突破した。

 16年8月には3メガバンクと連携してFinTech分野に参入すると発表した。16年9月には野村証券へのBtoBプラットフォーム請求書提供を発表した。また16年11月には三井住友カードと、法人カードの決済データを活用した電子請求書サービスの提供に向けて協業することに合意し、法人企業の相互送客に関する業務提携契約締結を発表した。

 今後は請求書関連業務の新たなモデル作りのため、各金融機関・パートナーとともにFinTech分野の実証実験を繰り返し、顧客へのさらなる価値提供を創造して17年12月に利用企業数30万社、電子請求の年間流通金額2兆円を目指すとしている。

 なおリクルートホールディングス<6098>が16年8月、新規事業としてオンライン完結型融資の事業展開を目指してFinTech企業との提携を検討し、当社と協業検討開始に関する基本合意書を締結したと発表している。事業開始は17年夏頃を予定している。

■業界標準化に向けたシステム連携を強化

 業界標準化に向けたシステム連携を強化し、15年1月全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と業務提携、15年4月内田洋行<8057>やミロク情報サービス<9928>など19社24ソリューションが提供する販売管理・会計・店舗管理システムとのデータ連携を強化した。16年9月現在BtoBプラットフォーム受発注は81社が提供する販売管理・会計・店舗管理など99ソリューションと連携している。

 企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を追求し、BtoB標準プラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化し、今後3年間で利用企業数100万社への普及を目指すとしている。

 16年6月にはPR TIMES<3922>が運営するプレスリリース配信サービス「PR TIMES」と連携開始した。BtoBプラットフォームは新たなインターネットメディアとして企業間情報伝達の効率化を促進する。16年7月には、BtoBプラットフォーム受発注の英語版をシンガポールの日本の外食15店舗へ提供開始した。世界の英語圏各国にBtoBプラットフォーム受発注を提供できるシステムが整い、利用促進を行う。

 なお16年12月期末時点におけるBtoBプラットフォーム受発注システムの連携は86社、105ソリューションとなった。

 3月7日にはインテリジェンスビジネスソリューションズが提供する「POS+food」とのシステム連携開始を発表している。

■新システム「食の安心・安全 受発注」を17年5月稼働予定

 17年2月には、主力の受発注事業および規格書事業における新システム「食の安心・安全 受発注」を17年5月から稼働すると発表している。

 BtoBプラットフォーム受発注のサービス範囲を拡大し、卸と食品メーカーの間の受発注を電子化するシステムを追加する。またBtoBプラットフォーム規格書をBtoBプラットフォーム受発注と連携させ、2つのサービスをパッケージ化して17年5月から新システム「食の安心・安全 受発注」として稼働する。

■月額課金のストック型収益モデル

 システムをネット経由で提供するクラウド型サービスで、ネット環境さえあれば月々低料金で最新サービスを利用できるため利用企業数は増加基調である。そして利用企業数増加に伴って月額課金のシステム使用料収入が増加するストック型収益モデルである。

 四半期別業績推移を見ると、14年12月期は売上高が第1四半期11億57百万円、第2四半期12億06百万円、第3四半期12億66百万円、第4四半期13億48百万円、営業利益が4億23百万円、4億17百万円、5億46百万円、5億57百万円、15年12月期は売上高が13億10百万円、14億04百万円、14億32百万円、14億86百万円、営業利益が5億11百万円、4億77百万円、5億44百万円、5億62百万円だった。

 売上総利益率は13年12月期65.7%、14年12月期77.0%、15年12月期72.9%である。14年12月期は既存プラットフォームの期間短縮による償却が13年12月期に完了したことも寄与した。また販管費比率は13年12月期40.4%、14年12月期38.0%、15年12月期35.7%である。販管費比率は増収効果で低下傾向である。

 15年12月期のROEは19.5%で14年12月期比12.8ポイント低下、自己資本比率は85.2%で同14.4ポイント上昇した。配当性向は56.3%だった。配当政策については個別業績に応じた配当性向50%を基本方針としている。

■16年12月期はソフトウェア償却費増加などで減益

 16年12月期連結業績は、売上高が15年12月期比9.3%増の61億54百万円だが、営業利益が同6.6%減の19億56百万円、経常利益が同4.6%減の19億47百万円、純利益が同7.9%減の12億05百万円だった。

 システム開発強化によるソフトウェア償却費の増加、事業成長に向けた人員増に伴う人件費の増加、テレビCMによる販促費の増加、本社移転に係る経費の増加で減益だったが、利用企業数の増加基調に変化はなく、特にBtoBプラットフォーム請求書利用企業数の増加ペースが加速し、ストック型収益のシステム使用料は順調に伸長した。

 売上総利益は同5.8%増加したが、売上総利益率は70.5%で同2.4ポイント低下した。販管費は同18.6%増加し、販管費比率は38.7%で同3.0ポイント上昇した。営業外費用では株式交付費および上場関連費用が一巡した。特別損失では減損損失1億58百万円を計上した。ROEは12.5%で同7.0ポイント低下、自己資本比率は86.3%で同1.1ポイント上昇した。配当は同4銭増配の年間11円80銭(第2四半期末5円90銭、期末5円90銭)とした。配当性向は63.5%である。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、受発注事業は売上高が同11.1%増の37億30百万円で営業利益が同14.3%増の19億83百万円、規格書事業は売上高が同20.7%増の11億57百万円で営業利益が同6.5%減の3億07百万円、ES事業は売上高が同0.8%減の12億11百万円で営業利益が2億92百万円の赤字(前々期は53百万円の黒字)、その他は売上高が同29.5%減の95百万円で営業利益が39百万円の赤字(同17百万円の赤字)だった。

 16年12月期末のBtoBプラットフォーム利用企業数(無料利用を含む全業界のID数で集計、海外は除く)は15年12月期末比6万3011社増加の12万5050社、事業所数(本社・支店・営業所・店舗)は同12万4390事業所増加の40万4557事業所となった。このうちBtoBプラットフォーム受発注は、買い手企業数が同320社増加の2026社、売り手企業数が同1655社増加の2万9895社、BtoBプラットフォーム請求書の利用企業数は12万4401社となった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期14億67百万円、第2四半期15億14百万円、第3四半期15億61百万円、第4四半期16億12百万円、営業利益は4億72百万円、4億97百万円、4億53百万円、5億34百万円だった。

■17年12月期は大幅増収増益予想、実質増配予想

 今期(17年12月期)の連結業績予想(2月14日公表)については、売上高が前期(16年12月期)比28.4%増の79億円、営業利益が同33.1%増の26億03百万円、経常利益が同33.5%増の26億円、純利益が同42.9%増の17億22百万円としている。

 利用企業数が増加基調であり、ストック型収益である月額課金のシステム使用料が伸長する。人件費増加などを吸収して大幅増収増益予想である。売上総利益率は同0.6ポイント低下の69.9%、販管費比率は同1.7ポイント低下の37.0%の想定としている。

 セグメント別(連結調整前)の計画は、受発注事業の売上高が同29.5%増の48億29百万円で営業利益が同10.6%増の21億92百万円、規格書事業の売上高が同18.9%増の13億76百万円で営業利益が同97.3%増の6億06百万円、ES事業の売上高が同26.7%増の15億35百万円で営業利益が2億09百万円の赤字(前期は2億92百万円の赤字)、その他の売上高が同2.1倍の1億97百万円で営業利益が18百万円の黒字(同39百万円の赤字)としている。

 配当予想は年間6円54銭(第2四半期末3円27銭、期末3円27銭)としている。17年1月1日付株式2分割を考慮して前期の11円80銭を5円90銭に換算すると、実質的に64銭増配となる。予想配当性向は49.3%である。

■中期経営計画で18年12月期の受発注5万社と請求書100万社目標

 16年2月策定の中期経営計画では基本方針を、フード業界におけるシェア拡大(BtoBプラットフォーム受発注の利用拡大)、電子請求プラットフォームのデファクト化(BtoBプラットフォーム請求書の全業界展開)、BtoB電子商取引プラットフォームの構築(15年12月期の調達資金をシステム開発へ重点投資)としている。

 フード業界におけるシェア拡大では、18年12月期までの目標として利用企業数5万社(15年12月期実績3.9万社)およびシステム取引高・外食シェア2兆円・30%(同1.2兆円・16%)を目指す。電子請求プラットフォームのデファクト化では、18年12月期までの目標として、利用企業数100万社(同4.8万社)およびシステム取引高3兆円(同1261億円)を目指す。BtoB電子商取引プラットフォームの構築では、システムコンセプトとして全業界対応BtoBプラットフォーム(同フード業界ASPシステム)を目指す。

 目標値には18年12月期の売上高95億円(受発注47億28百万円、規格書15億44百万円、ES28億39百万円、その他4億29百万円)、営業利益36億03百万円、経常利益36億円、純利益24億23百万円を掲げた。配当については個別業績に基づく基本配当性向50%を継続し、17年12月期年間配当13円08銭、18年12月期の年間配当17円48銭を計画している。

 そして2020年までに、あらゆる業界にBtoBプラットフォームを提供し、グローバルなBtoBインフラ企業を目指すとしている。積極的な事業展開で中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は調整一巡して上値試す

 株価の動き(17年1月1日付で株式2分割)を見ると、1月高値721円から反落してモミ合う形だが、徐々に下値を切り上げて調整一巡感を強めている。

 3月27日の終値640円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円46銭で算出)は48倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円54銭で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS76円02銭で算出)は8.4倍近辺である。時価総額は約830億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。調整一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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