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アスカネットは基調転換して戻り歩調、AIプレートは海外市場も開拓
- 2017/3/29 07:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工や写真集制作関連を主力としている。新規事業の空中結像AIプレートについては海外市場も開拓する方針を打ち出し、3月21日には海外展示会出展内容確定と海外向け専用ウェブサイトオープンをリリースした。また人工知能搭載のソーシャルロボット「unibo」を開発するユニロボットに出資して資本業務提携している。17年4月期はOEM供給の稼働率上昇も寄与して増収増益予想である。株価は基調転換して戻り歩調だ。14年高値を目指す展開が期待される。
■写真加工関連を主力として新規事業AIも育成
葬儀社・写真館向け遺影写真合成・加工関連のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作関連のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、空中結像技術を用いた新規事業のエアリアルイメージング(AI)事業も推進している。16年4月期売上高構成比はMDS事業45%、PPS事業54%、AI事業1%だった。
■MDS事業とPPS事業は安定収益源
MDS事業は全国の葬儀社や写真館との間にネットワークを構築し、葬儀に使用する遺影写真のデジタル加工サービスを提供している。操作不要のフルリモートコントロール方法で、約2200ヶ所の葬儀社などBtoB中心に年間約32.5万枚の写真画像を提供している。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器類売上などである。
PPS事業は「1冊からの本格的写真集」をオンターネットで受注して制作するサービスで、約3700社の写真館向け(BtoB)や一般コンシューマー向け(BtoC)に年間約38万冊の写真集を提供している。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などが強みである。
15年5月NTTドコモ<9437>「フォトコレクションプラス」向けに、フォトブックおよびプリント商品の独占OEM供給を開始した。BtoCでは16年2月にスマホから発注できる「MYBOOK LIFE」をリリースした。
遺影写真のMDS事業は葬儀関連、写真集のPPS事業はウエディング関連や卒業・入学イベント関連などが主力市場であり、景気変動の影響を受けにくい安定収益源である。
■空中結像AIプレート事業は製品化に向けて着実に進展
AI事業は空中結像技術を用いて新しい映像画像の表現方法を提唱している。AIプレートは画像映像を表す光を特殊なパネルを通過させることによって反対側の空中に映像を結像する新技術である。AIプレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど、多方面の業界・業種から注目されている。
独自技術を強固にするための特許申請を進めるとともに、将来的には自ら立体映像を空中に創出する技術の確立も目指している。そして基本技術を確立し、AIプレート試作品の販売を進めながら、低コストと大量生産を可能にする本格量産技術(ファブレス形態で製造して自社ブランドで販売)の確立に取り組んでいる。
AIプレート量産については、ガラス素材による量産と樹脂素材による量産に分けられ、それぞれ複数の協力会社と取り組んでいる。ガラス素材プレートはコストおよび量産性が相対的に劣るものの、結像品質は相対的に優れている。樹脂素材プレートはコストおよび量産性が相対的に優れており、結像品質は想定的に劣る。両素材に一長一短があるため、並行して量産技術の確立に挑んでいる。
ガラス素材プレートについては量産技術を確立し、品質の安定・向上、歩留まりの向上への改善を進めている。樹脂素材プレートについては、試作品の製造手法とは全く異なる新しい方法にトライし、大型パネルや視野角拡大タイプの研究・試作も進めている。樹脂素材プレートについては17年4月期中に、新製法か、ガラス製の生産方式と同様の手法かのどちらかに絞り込む方針としている。
なお当社が想定している第一段階の量産は、リスク等を考慮して現有の設備やラインを最大限に活用することを前提としており、いきなり大規模・大ロットの量産を指向していない。複数の製造方法のうち最も優れた方法が明確になった時点で、専用ラインの立ち上げなどにより多量の量産が可能な体制を段階的に構築する方針としている。
またAIプレートは素材であり、AIプレート供給先がAIプレートを活用して商品化することが量産の前提となる。したがってAIプレート供給先の実際の商品化までは一定の時間を要する可能性がある。このため当面は小ロット案件を中心に確実に案件を積み重ね、その後の大ロット案件に繋げたいとしている。
16年2月インセル型液晶パネルとAIプレートを活用した「非接触入力装置および方法」の特許を取得し、16年3月AI事業における技術的優位性をより強固なものにするためパイオニア<6773>が保有する空中表示技術に関する特許権(特許出願中を含む)を取得した。
16年9月には大日本印刷<7912>がAIプレートを用いたプロモーションツールを発売すると発表した。AIプレートを用いるとモニターで見る映像を空中に浮遊しているかのような3D映像として表示できるという特徴を活かして、生活者の目を惹く映像表現が可能な次世代のプロモーション用POPとして販売されることになった。大日本印刷は19年度までに累計3億円の売上を目指す。
17年2月にはAIプレート販売ウェブサイトをオープンした。これまでBtoBで対面にて販売していたが、ネットでも気軽に購入したいという要望に対応した。
なお海外市場も開拓する方針を打ち出している。そして3月21日には海外展示会出展内容確定と海外向け専用ウェブサイトオープンをリリースした。海外向けブランドは「ASKA3D」で販売するプレート製品名は「ASKA3D-Plate」とした。
■ユニロボットに出資して資本業務提携
17年2月には、独自開発の人工知能を搭載したソーシャルロボット「unibo」を開発・製造・販売するユニロボットに出資(8.1%)して資本業務提携すると発表している。uniboは人との会話を重ねることにより、その人の個性を学習していくという真のパートナーロボットとして期待され、17年3月販売開始予定である。
業務提携の内容は、uniboなどから撮影された写真データに基づいて当社が写真などを製作・販売するビジネスモデルを構築する、当社が保有する顧客基盤やマーケットに対してuniboを販売する、uniboなどを経由して取得されたデータを分析・活用することで新たなビジネスモデルを共同で研究するとしている。
■第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造
四半期別業績推移を見ると、15年4月期の売上高は第1四半期11億70百万円、第2四半期11億55百万円、第3四半期14億16百万円、第4四半期12億37百万円、営業利益は1億55百万円、1億26百万円、2億60百万円、97百万円、16年4月期の売上高は11億97百万円、11億96百万円、14億58百万円、13億22百万円、営業利益は1億14百万円、1億52百万円、3億36百万円、1億71百万円だった。葬儀関連、ウエディング関連、卒業・入学イベント関連などで第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造だ。
16年4月期非連結業績は15年4月期比3.9%増収、21.2%営業増益、20.7%経常増益、28.7%最終増益だった。OEM供給に伴う先行費用が発生したが、ギフトネットコム終了(15年4月末に新規ギフトコード販売終了、15年10月末に販売済みギフトコード交換終了)による損失減少、会計処理方針変更に伴う減価償却費の減少、経費コントロール効果などで計画超の増益だった。
売上総利益は同4.2%増加し、売上総利益率は51.1%で同0.2ポイント上昇した。販管費は同1.5%減少し、販管比率は36.1%で同2.0ポイント低下した。ROEは13.6%で同2.3ポイント上昇、自己資本比率は86.8%で同1.2ポイント上昇した。配当は同2円増配の年間10円(期末一括)で、配当性向は30.6%だった。配当の基本方針として配当性向30%を目安としている。
セグメント別(連結調整前)に見ると、MDS事業は売上高が同2.2%増の23億32百万円で営業利益が同1.0%増の7億64百万円だった。サイネージなど葬儀演出ツールは伸長したが、暖冬の影響で葬儀施工件数が例年より減少したため、相対的に利益率の高い遺影写真加工収入が伸び悩んだ。
PPS事業は売上高が同5.4%増の27億81百万円で営業利益が同10.6%増の5億43百万円だった。BtoC関連は価格競争が激化しているが、BtoBの主力製品「ZENレイフラット」を中心に堅調に推移した。OEM供給は想定を下回ったものの、一定の成果をあげた。利益面では減価償却費減少も寄与した。
AI事業は売上高が同3.5%増の58百万円、営業利益が88百万円の赤字(前々期82百万円の赤字)だった。約60の企業等へ納品しているが、少ロット注文にとどまっている。その他事業は15年10月末に「ギフトネットコム」サービスを終了して売上高が1百万円、営業利益が16百万円の赤字(同94百万円の赤字)だった。
■17年4月期第2四半期累計は2桁増益と順調
今期(17年4月期)第3四半期累計(5月~1月)の非連結業績は、売上高が前年同期比4.6%増の40億29百万円、営業利益が同7.9%増の6億49百万円、経常利益が同7.9%増の6億52百万円、純利益が同11.7%増の4億44百万円だった。
MDS事業、およびPPS事業のBtoBとOEMが順調に推移し、OEM生産の稼働率上昇効果も寄与して増収増益だった。売上総利益は同5.5%増加し、売上総利益率は51.6%で同0.5ポイント上昇した。販管費は同4.5%増加し、販管費比率は35.5%で同横ばいだった。
セグメント別(連結調整前)に見るとMDS事業は売上高が同4.0%増の17億93百万円で営業利益が同5.0%増の5億84百万円だった。遺影写真加工収入は第1四半期にやや苦戦したが、第2四半期以降に回復傾向となった。動画など葬儀演出関連サービスも伸長した。
PPS事業は売上高が同5.1%増の21億91百万円で営業利益が同13.0%増の4億94百万円だった。BtoC関連は価格競争激化などで苦戦したが、BtoB関連のプロフェッショナル写真家向けが順調に推移し、OEM供給が伸長した。利益面ではOEM生産の稼働率上昇も寄与した。
AI事業は売上高が同9.3%増の43百万円で、営業利益が91百万円の赤字(前年同期は64百万円の赤字)だった。売上面ではアミューズメントパーク向け大型案件が一巡し、小ロットのサンプル販売にとどまった。費用面では量産に向けた研究開発費が増加した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期12億30百万円、第2四半期12億75百万円、第3四半期15億24百万円、営業利益は1億35百万円、1億77百万円、3億37百万円だった。
■17年4月期通期も増収増益予想、さらに上振れ余地
今期(17年4月期)通期の非連結業績予想(6月10日公表)は、売上高が前期(16年4月期)比5.6%増の54億61百万円、営業利益が同3.5%増の8億円、経常利益が同3.7%増の8億05百万円、純利益が同0.7%増の5億51百万円としている。
新サービス・企画や社内体制充実のためのコストが発生するため小幅増益見込みとしている。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)としている。予想配当性向は30.4%となる。
セグメント別売上高の計画は、MDS事業が同3.8%増の24億20百万円、PPS事業が同4.7%増の29億11百万円、AI事業が同2.2倍の1億30百万円としている。MDS事業は遺影写真加工収入の着実な積み上げ、PPS事業はOEM供給の寄与を見込み、AI事業は中ロット案件の積み重ねに注力する。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73.8%、営業利益が81.1%、経常利益が81.0%、純利益が80.6%で、利益進捗率が高水準ある。葬儀関連、ウエディング関連、卒業・入学イベント関連などで第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造であることを考慮すれば、通期業績予想に上振れ余地がありそうだ。
■株主優待制度は毎年4月末に実施
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。100株以上400株未満所有株主に対して1000円割引利用券1枚、400株以上2000株未満所有株主に対して1000円割引利用券2枚、2000株以上所有株主に対して1000円割引利用券3枚を贈呈する。
■株価は基調転換して戻り歩調、14年高値目指す
株価の動きを見ると、安値圏1000円近辺でのモミ合いから上放れ、米国の家電見本市「CES」やユニロボットとの資本業務提携などを材料視しながら、やや乱高下したが3月28日には戻り高値となる2488円まで上伸した。基調転換して戻り歩調だ。
3月28日の終値2465円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS32円93銭で算出)は75倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.4%近辺、前期実績PBR(前期実績BPS250円03銭で算出)は9.9倍近辺である。時価総額は約430億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形となった。目先的にはやや過熱感もあるが、安値圏モミ合いから上放れて基調転換した形であり、14年高値4420円を目指す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)