キーコーヒーは期末配当・株主優待権利落ち一巡して上値試す、18年3月期も収益拡大基調

 キーコーヒー<2594>(東1)はレギュラーコーヒー大手である。パッケージカフェ「KEYS CAFE」など事業領域拡大戦略を積極推進し、4月7日には名古屋駅直結のJRゲートタワーに「KEYS CAFE」をオープンする。17年3月期はコーヒー関連事業が牽引して大幅増益予想である。そして18年3月期も収益拡大基調が期待される。株価は期末配当・株主優待権利落ちの売りが一巡し、好業績を評価して上値を試す展開が期待される。

■コーヒー関連事業を主力として飲食関連事業も展開

 コーヒー関連事業(業務用・家庭用レギュラーコーヒー)を主力に、飲食関連事業(イタリアントマト、アマンド)も展開している。13年1月銀座ルノアール<9853>を持分法適用会社化、14年2月ネット通販事業拡大に向けてコーヒー豆焙煎加工販売のhonu加藤珈琲店を子会社化した。14年9月には世界有数のコーヒーメーカーであるイタリアのillycaffe S.p.Aと、illyブランドのレギュラーコーヒー製品全般について日本国内での独占販売契約を締結した。

 16年3月期のセグメント別売上高構成比はコーヒー関連事業86%、飲食関連事業8%、その他(ニック食品、honu加藤珈琲店など)6%だった。中期成長に向けて「ブランド強化」「収益力強化」「グループ連携強化」を3つの柱に掲げ、新商品の開発・投入、パッケージカフェ「KEYS CAFE」の多店舗展開など新たな事業領域開拓を積極推進している。

 なお16年10月には、紅茶ブランド「リプトン」を展開するユニリーバ・ジャパンと、同ブランドの家庭用紅茶製品に関して日本国内における販売総代理店契約を締結し、販売開始(17年3月1日)すると発表した。

■パッケージカフェ「KEYS CAFE」など事業領域拡大戦略を推進

 新規事業領域としてパッケージカフェ「KEYS CAFE」の多店舗展開を加速している。

 15年10月福井県福井市に北陸地方初出店、16年2月愛知県刈谷市に東海エリア高速道路パーキングエリア初出店、16年3月東京メトロ南北線王子駅構内に駅構内初出店、東京都港区のファーストキャビン赤坂にホテル内初出店、16年6月静岡県静岡市に静岡県初出店した。

 16年10月新潟県初出店となる「Niigata KEYS CAFE」をアピタ新潟西店にオープン、16年12月鹿児島県初出店となる「Kagoshima KEYS CAFE」を複合ショッピングモール「フレスポジャングルパーク」(鹿児島市)内にオープンした。

 4月7日にはビックカメラ名古屋JRゲートタワー店に「KEYS CAFE」をオープンする。

 飲食関連事業のイタリアントマトは「国内は充実、海外は拡大」という基本方針で、16年3月期末の店舗数は直営56店舗、FC214店舗の合計270店舗となった。16年11月にはキーコーヒーの自家焙煎支援システムSRS(Shop Roasting System)を導入した新業態店舗「自家焙煎珈琲 蔵味~Kurami」を東京・世田谷区にオープンした。海外は中国やASEAN地域へ積極展開している。

 そして17年2月にはイタリアントマトがJR吉祥寺駅前の吉祥寺サンロード商店街に、新業態「イタリアン・トマトカフェジュニアプラス」吉祥寺サンロード店をオープンした。

■コーヒー生豆相場の影響を受ける収益構造、贈答用需要なども影響

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期138億78百万円、第2四半期136億77百万円、第3四半期152億55百万円、第4四半期135億13百万円、営業利益が4億81百万円、2億69百万円、5億34百万円、4億39百万円の赤字、16年3月期は売上高が160億94百万円、166億58百万円、174億84百万円、146億70百万円、営業利益が6億65百万円、1億10百万円、8億82百万円、6億03百万円の赤字だった。

 売上面では個人消費動向、利益面ではコーヒー生豆相場の影響を受けやすく、贈答用需要なども影響する。第3四半期の構成比が高く、第4四半期の営業利益は赤字となる収益特性がある。16年3月期は原料用が牽引して15年3月期比2桁増収・営業増益だった。

 売上総利益は同2.3%増加したが、売上総利益率は25.4%で同3.2ポイント低下した。販管費は同1.3%増加したが、販管費比率は23.8%で同3.3ポイント低下した。またROEは2.1%で同0.2ポイント低下した。自己資本比率は72.0%で同0.3ポイント低下した。配当性向は50.8%だった。

 コーヒー関連事業は売上高が同20.5%増の559億61百万円で営業利益(連結調整前)が同11.1%増の16億58百万円だった。原料用が大幅伸長した。パッケージカフェ「KEYS CAFE」は新規出店20店舗、合計導入店舗39店舗となった。

 飲食関連事業は、売上高が同12.3%減の51億01百万円で営業利益が1億29百万円の赤字(15年3月期1億74百万円の赤字)だった。イタリアントマトの不採算店整理で減収だが、不採算店減少や高付加価値メニュー投入で営業赤字が縮小した。

 その他(ニック食品、honu加藤珈琲店など)は売上高が同5.1%減の38億43百万円で営業利益が同2.8%増の1億50百万円だった。

■17年3月期第3四半期累計は営業増益

 前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.4%減の485億21百万円、営業利益が同7.9%増の17億88百万円、経常利益が同2.5%増の19億78百万円、純利益が同4.0%減の12億38百万円だった。

 コーヒー生豆相場はブラジル生産地の天候不順による来年度生産量減少懸念などで上昇傾向だったが、製造コスト改善などが寄与して営業増益だった。売上総利益は同8.6%増加し、売上総利益率は28.1%で同2.6ポイント上昇した。販管費は同2.4%増加し、販管費比率は24.0%で同0.9ポイント上昇した。

 セグメント別動向を見ると、コーヒー関連事業は売上高が同2.6%減の422億22百万円で営業利益(連結調整前)が同9.4%増の21億34百万円だった。家庭用が増収、業務用が前年並みだった。原料用は販売数量が伸長したがコーヒー相場と連動した取引の影響で減収だった。パッケージカフェ「KEYS CAFE」は8店舗出店して合計導入店舗数44店舗となった。

 飲食関連事業は売上高が同6.4%減の35億82百万円で、営業利益が88百万円の赤字(前年同期は71百万円の赤字)だった。イタリアントマトの不採算店閉鎖で減収となり、利益面では売上減少に対応したコスト削減が遅れた。イタリアントマトの店舗数は261店舗(直営60店舗、FC201店舗)となった。

 その他(ニック食品、honu加藤珈琲店など)は、売上高が同11.1%減の27億16百万円で営業利益が同2.9%減の2億79百万円だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期166億54百万円、第2四半期156億66百万円、第3四半期162億01百万円、営業利益は9億38百万円、3億77百万円、4億73百万円だった。

■17年3月期通期は大幅増益予想、18年3月期も収益拡大基調

 前期(17年3月期)の連結業績予想(10月24日に利益を増額修正)は、売上高が前々期(16年3月期)比0.1%増の650億円、営業利益が同70.8%増の18億円、経常利益が同38.3%増の19億円、そして純利益が同59.6%増の12億円としている。配当予想は同1円増配の年間18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。予想配当性向は33.3%となる。

 コーヒー関連事業で家庭用の販売が好調に推移し、製造コスト改善への取り組みも寄与する。また企画提案型営業の強化、生活者に対するブランド訴求、積極的な新商品の開発・市場投入、高付加価値商品の拡販、CVS向けカウンターコーヒーの進捗、最適製造体制の確立、生産効率化、コスト低減などに取り組む。2桁増益・連続増配予想で好業績が期待される。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.6%、営業利益が99.3%、経常利益が104.1%、純利益が103.2%と高水準である。天候やコーヒー生豆相場の動向で収益が変動する可能性があり、第4四半期の営業利益が赤字となる収益特性も考慮しなければならないが、通期再増額期待も高まる。そして今期(18年3月期)も収益拡大基調が期待される。

■株主優待制度は3月末と9月末の年2回実施

 株主優待制度は毎年3月末日および9月末日現在の100株以上所有株主に対して、自社製品詰め合わせを贈呈している。100株以上~300株未満所有株主に対して1000円相当、300株以上~1000株未満所有株主に対して3000円相当、1000株以上所有株主に対して5000円相当を贈呈する。

■株価は期末配当・株主優待権利落ちが一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、3月27日の年初来高値2352円から反落して4月3日の2180円まで調整した。ただし4月3日は終値で前日比プラス圏に切り返している。期末配当・株主優待権利落ちの売りが一巡したようだ。

 4月3日の終値2202円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS53円98銭で算出)は40~41倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は0.8%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1568円19銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約500億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線近辺で下げ渋り、サポートラインを確認した形だ。期末配当・株主優待権利落ちの売りが一巡し、好業績を評価して上値を試す展開が期待される。15年8月の上場来高値2370円も視野に入りそうだ。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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