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エスプールは16年10月高値に接近、17年11月期第1四半期大幅増益で上値試す
- 2017/4/5 06:54
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エスプール<2471>(JQ)はロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、コールセンター業務などの人材サービス事業を展開している。4月4日発表した17年11月期第1四半期連結業績は大幅増収増益だった。主力事業が好調に推移して通期も2桁営業増益・大幅増配予想である。株価は16年10月高値に接近してきた。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。
■ロジスティクス、障がい者雇用支援、コールセンターなど人材サービス事業
ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービス)、および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣)を展開している。
16年11月期のセグメント別(連結調整前)売上高構成比はビジネスソリューション事業37%、人材ソリューション事業63%、営業利益構成比はビジネスソリューション事業52%、人材ソリューション事業48%だった。
成長分野への集中投資で事業拡大を図るとともに、低採算案件の見直しなど低収益事業の改善にも取り組んでいる。継続的な収益の確保が期待できるストック型サービスの構成比を高めることで収益構造の抜本的な改善を推進する方針だ。
なお4月4日、日本経済新聞社が発表した新興市場に上場する中堅企業の成長力ランキング「伸びる会社MIDDLE200」で、29位にランクインしたと発表している。
■ロジスティクス分野は低採算案件見直しで収益改善
ロジスティクスアウトソーシングサービスは、子会社エスプールロジスティクスがECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスを展開している。
ネット通販市場の拡大やインバウンド需要の増加を背景として物流センターの需要は高水準だが、物流センター運営代行業務では低採算案件の取引見直しを進め、通販発送代行サービスへの経営資源集中で収益改善を目指している。
17年1月には通販商品発送代行サービスの拡大を目指して、3拠点目となる葛西物流センター(東京都江戸川区)を新設した。
■障がい者雇用支援サービスは事業規模拡大目指す
障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートしている。子会社エスプールプラスが運営する企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。
16年11月期末時点の累計で、農園契約企業数97社、契約終了1社、農園に就労する障がい者雇用453名となり、障がい者の農業就労施設としては国内最大級である。また退職率5%以下を継続している。高付加価値サービスとして千葉県中心に事業規模拡大を目指し、早期の全国展開も視野に入れて行政との連携強化に取り組んでいる。
16年11月には千葉県船橋市「わーくはぴねす農園 船橋ファーム」および愛知県豊明市「わーくはぴねす農園 あいち豊明ファーム」の開設を発表した。今回の開設で「わーくはぴねす農園」は全国7施設となる。
■電力会社スマートメーター関連業務を拡大
フィールドマーケティングサービスでは、子会社エスプールエンジニアリングが電力分野のスマートメーター関連業務を拡大している。
15年5月にエスプールエンジニアリングが東京電力<9501>からスマートメーター設置業務を受注した。東京電力は20年度までに約2700万台のスマートメーター設置を予定しており、このうち約540万台分の入札で約24億円分の業務(工事履行期間15年7月1日~17年3月20日)を受注した。実績を積み上げて全国各地域での受注を目指す。
■グループのセールスサポート関連を集約
14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立した。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務などの販売促進支援業務を集約(ビジネスソリューション事業)し、事業拡大と収益性向上を目指す。
■人材ソリューション事業はコールセンター業務向け人材派遣が主力
人材ソリューション事業は子会社エスプールヒューマンソリューションズが展開し、コールセンター業務や携帯電話販売業務向け人材派遣を主力としている。16年4月にはエスプールヒューマンソリューションズが、優良派遣事業者認証委員会が指定した審査認定機関より「優良派遣事業者」として認定された。15年6月にはフルキャストホールディングス<4848>と業務提携した。
新規事業として15年12月、小売・飲食・サービス業などアルバイトを多く採用する企業を対象に求人応募受付代行サービス「Omusubi」を開始した。16年6月には業務拡大に合わせて北海道北見市の自社コールセンターを拡張すると発表した。
16年11月にはオンウェーブへの出資(14.9%)を発表した。オンウェーブは製薬業界に特化した転職・求人サイト「製薬オンライン」運営や、人材マッチングシステム「人材マッチングナビ」開発・販売等を行っている。エスプールヒューマンソリューションズはさらなる事業拡大に向けて人材不足が顕著な保育士・看護師・介護士分野における人材派遣・紹介サービスの立ち上げ準備を進めており、オンウェーブのノウハウを活用できるとしている。
■売上総利益率上昇傾向
四半期別業績推移を見ると、15年11月期は売上高が第1四半期16億61百万円、第2四半期17億77百万円、第3四半期18億円、第4四半期20億29百万円、営業利益が22百万円の赤字、53百万円、90百万円の赤字、1億18百万円、16年11月期は売上高が20億38百万円、22億60百万円、23億23百万円、26億15百万円、営業利益が1百万円、2億46百万円、1億03百万円、1億57百万円だった。
16年11月期は売上高が15年11月期比27.1%増の92億36百万円、営業利益が同8.5倍の5億07百万円、経常利益が同10.0倍の4億96百万円の大幅増収増益で、純利益は4億08百万円の黒字(前々期は68百万円の赤字)だった。
将来の成長に向けた投資を継続しつつ、売上高・利益とも過去最高を更新した。電力スマートメーター設置業務の採算改善が進展し、ビジネスソリューション事業の利益率が回復した。人材ソリューション事業も順調に拡大した。
売上総利益は同46.2%増加し、売上総利益率は29.1%で同3.8ポイント上昇した。販管費は同22.5%増加したが、販管費比率は23.6%で同0.9ポイント低下した。特別損失では固定資産除却損12百万円を計上したが、一方で本社移転費用40百万円が一巡した。
ROEは48.2%で同57.9ポイント上昇、自己資本比率は27.8%で同3.1ポイント上昇した。配当は前々期と同額の年間10円(期末一括)で配当性向は7.4%である。配当の基本方針は連結ベースでの株主資本配当率(DOE)5%を目安としている。
セグメント別(連結調整前)動向を見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同14.6%増の34億40百万円、営業利益が同3.6倍の5億83百万円だった。売上面では、ロジスティクスアウトソーシングが低採算案件の見直しで減収だが、電力スマートメーター設置業務、セールスサポート業務、障がい者雇用支援サービスが拡大した。利益面では、ロジスティクスアウトソーシングの低採算案件縮小、電力スマートメーター設置業務の黒字化、障がい者雇用支援サービスの拡大が寄与した。
人材ソリューション事業は売上高が同35.6%増の58億32百万円、営業利益が同46.6%増の5億29百万円だった。社会保険料および雇用保険料負担の増加で売上総利益率がやや低下したが、主力のコールセンター業務の需要が特に地方において好調だった。アルバイト採用支援サービスは導入決定が50社となり、順調なスタートとなった。
売上高のうち、ビジネスソリューション事業のロジスティクスアウトソーシングは同38.9%減の10億46百万円、障がい者雇用支援サービスは同56.0%増の8億86百万円、人材ソリューション事業のコールセンター業務は同55.4%増の42億85百万円だった。
■17年11月期第1四半期は大幅増収増益
4月4日発表した(17年11月期)第1四半期(12月~2月)の連結業績は売上高が前年同期比20.5%増の24億57百万円、営業利益が46百万円(前年同期は1百万円)、経常利益が45百万円(同0百万円の赤字)、純利益が33百万円(同8百万円の赤字)だった。
障がい者雇用支援サービスや人材派遣サービスが好調に推移し、電力スマートメーター設置業務の利益率改善なども寄与して営業損益が大幅に改善した。売上総利益は同21.2%増加し、売上総利益率は25.0%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同11.3%増加したが、販管費比率は23.1%で同1.7ポイント低下した。売上高と売上総利益はほぼ計画水準だった。販管費は支出時期のズレで計画を下回ったが、第2四半期以降に計上予定としている。
セグメント別(連結調整前)動向を見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同0.4%減の7億63百万円、営業利益が同6.0倍の73百万円だった。低採算案件から撤退したロジスティクスアウトソーシングサービスおよび一時的に受託件数を抑制した電力スマートメーター設置業務が減収だが、障がい者雇用支援サービスは拡大した。利益面では、ロジスティクスアウトソーシングサービスの低採算案件からの撤退、電力スマートメーター設置業務の利益率改善、障がい者雇用支援サービスの拡大が寄与した。
人材ソリューション事業は売上高が同32.7%増の16億98百万円、営業利益が同21.3%増の1億43百万円だった。主力のコールセンター業務で定着率向上を支援するグループ型派遣の需要が好調に推移した。16年10月の社会保険対象者の適用拡大で社会保険料負担が増加したが、増収効果や販管費抑制効果などで吸収した。
■17年11月期通期2桁増収・営業増益予想、そして大幅増配予想
今期(17年11月期)通期の連結業績予想は前回予想(1月13日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年11月期)比17.2%増の108億24百万円、営業利益が同14.8%増の5億83百万円、経常利益が同15.0%増の5億71百万円、純利益が同18.0%減の3億34百万円としている。配当予想は前期比8円増配の年間18円(期末一括)で予想配当性向は16.2%となる。
上期に先行投資が集中し、障がい者雇用支援サービスの農園販売が下期に集中するため下期偏重の計画となったが、通期ベースでビジネスソリューション事業、人材ソリューション事業とも2桁成長を持続する。売上総利益率は同0.4ポイント低下の28.7%、販管費比率は同0.3ポイント低下の23.3%の計画である。
セグメント別(連結調整前)の計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が同15.9%増の39億86百万円で営業利益が同13.5%増の6億62百万円、人材ソリューション事業の売上高が同19.3%増の69億58百万円で営業利益が同13.1%増の5億98百万円としている。
売上高のうち、ビジネスソリューション事業のロジスティクスアウトソーシングは同9.0%増の11億40百万円、障がい者雇用支援サービスは同37.4%増の12億17百万円、人材ソリューション事業のコールセンター業務は同19.1%増の51億05百万円の計画としている。
ビジネスソリューション事業のロジスティクスアウトソーシングは、DM(ダイレクトメール)発送業務から撤退して通販発送代行サービスに経営資源を集中し、事業再拡大に向けて17年1月開設の葛西EC物流センターなど投資を再開する。
障がい者雇用支援サービスについては、新規開設と既存増設で430区画の販売を計画し、17年1月時点で70区画の受注が確定している。さらに東京・神奈川・埼玉および関西エリア進出に向けて行政との連携を強化する。
スマートメーター設置業務については、今期は既存業務のみで約7億円の売上を計画(16年11月期実績は約8.3億円)としている。そして17年度受注が確定した。これまでの担当エリアを継続するが工事計画数が若干減少しているため、スポット業務や4月自由化されたガスのスマートメーター関連業務の受注で補うとしている。
人材派遣サービス(人材ソリューション)では、グループ型派遣の強化やドミナント戦略の推進などで、一層の人材需要の取り込みを図る。
新規分野として医療・介護・保育業界向け人材サービスを開始し、オンウェーブ社と連携して独自の求人サイト開設を進める方針だ。求人応募受付代行サービス「Omusubi」については第1四半期に単月黒字化を見込み、通期でも全体収益に貢献するとしている。
また事業新たな収益機会の獲得に向けて、成長が見込まれる事業領域や事業シナジーが期待できる企業へのマイノリティ出資も推進する方針だ。
■中期経営計画で「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」目指す
15年1月策定の新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。社会貢献性が高い分野、景気変化に強い分野、参入障壁が高い分野でバランスの取れたポートフォリオ経営を推進し、ストック型ビジネスの強化、低収益事業の改善、新たな収益柱の構築を目指す方針だ。
経営目標値は、営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持としている。人材確保が課題だが、アウトソーシング需要は高水準であり、高付加価値サービスが牽引して中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は16年10月高値に接近、好業績を評価して上値試す
株価の動きを見ると、水準切り上げの展開で4月3日に年初来高値1810円まで上伸し、16年10月高値1828円、そして13年9月高値2197円に接近している。
4月4日の終値1718円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS111円35銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS344円52銭で算出)は5.0倍近辺である。なお時価総額は約52億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じて先高感を強めている。強基調への回帰を確認した形だろう。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)