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山田コンサルティンググループは06年来高値圏モミ合いから上放れの動き、18年3月期も収益拡大期待
- 2017/4/6 07:57
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
山田コンサルティンググループ<4792>(JQ)は経営・財務・M&A・不動産関連のコンサルティング事業を主力としている。17年3月期は経営コンサルティング事業が牽引して増収増益・連続増配予想である。そして18年3月期も収益拡大が期待される。なお4月3日には相続あんしんサポートの設立を発表している。株価は06年来の高値圏で堅調に推移している。そしてモミ合い上放れの動きを強めてきた。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。
■各種コンサルティング事業を展開する純粋持株会社
各種コンサルティング事業を展開するグループの純粋持株会社である。
傘下の事業会社は、山田ビジネスコンサルティングが経営・財務・事業承継・M&A支援などの経営コンサルティング事業、山田FASがM&A・企業再編の財務アドバイザイリー業務や中堅・中小企業対応M&A関連業務などの資本・株式・株主に関するコンサルティング事業、山田不動産コンサルティングが不動産有効活用などの不動産コンサルティング事業、東京ファイナンシャルプランナーズがFP資格取得講座などのFP関連事業、キャピタルソリューションおよび投資事業有限責任組合が投資・ファンド事業(事業承継・再生関連のファンド)を展開している。
なお4月3日には、東京ファイナンシャルプランナーズの子会社として、相続あんしんサポートの設立を発表している。相続手続支援サービスを展開する。
■中期的にROE20%以上を目指す
中期経営目標としてROE20%以上を掲げ、重点戦略としては大手金融機関・証券会社・地方金融機関・提携会計事務所との連携強化、中堅・中小企業対応M&A関連分野の拡大、中国現地法人およびシンガポール支店を拠点とした中国・アジア展開の強化などを推進している。投資・ファンド事業では、事業承継問題を抱えている優良な中堅・中小企業をターゲットとして、投資リスクを最小限に抑えながら投資案件を発掘している。
またコンサルティングニーズが「事業再生」だけでなく「事業成長」も顕在化しているため、こうしたニーズに対応すべく、経営コンサルティング事業では「事業再生コンサル」「事業成長コンサル」「事業承継コンサル」「M&Aコンサル」の4本柱とするビジネスモデルを推進している。そして事業再生や事業承継を切り口としてM&Aコンサルを拡大している。
■日本企業の海外展開支援を強化
16年4月には山田ビジネスコンサルティングが、シンガポールのリサーチファームであるSPIRE Research and Consulting(SPIRE)の株式80%を取得して子会社化した。
SPIRE社は2000年にシンガポールで創業し、現在はシンガポール・インドネシア・マレーシア・インド・中国・ベトナム・韓国に事務所を構え、主に日本・アメリカ・欧州・アジアの多国籍企業を顧客として、新興国地域への事業展開のための市場調査を主要サービスとしている。SPIRE社を子会社化することで、多様化する日本企業の海外進出・既存海外事業に関するコンサルティングニーズに一層充実した体制で対応する。
16年10月には山田ビジネスコンサルティングがタイに子会社VBC&Spire社を設立した。16年12月にはタイの東洋ビジネスサービス(東洋社)との業務提携、および米国Takenaka Partnersとの業務提携を発表した。日本企業の海外展開に対する支援を強化する。
■案件によって四半期利益が変動しやすい収益構造、M&A関連は増加基調
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期20億86百万円、第2四半期20億59百万円、第3四半期18億25百万円、第4四半期25億11百万円、営業利益が5億33百万円、4億28百万円、2億48百万円、8億円で、16年3月期は売上高が18億44百万円、22億25百万円、19億80百万円、30億81百万円、営業利益が1億80百万円、5億57百万円、3億03百万円、10億94百万円だった。
好採算案件や大型案件の有無で四半期利益が変動しやすい収益構造である。16年3月期は営業外の為替差損益が悪化(15年3月期は差益1億58百万円、16年3月期は差損1億34百万円)して経常減益・最終減益だったが、各事業が順調に推移して増収・営業増益だった。売上総利益は15年3月期比7.5%増加したが、売上総利益率は89.3%で同0.1ポイント低下した。販管費は同7.9%増加し、販管費比率は65.9%で同0.2ポイント上昇した。
ROEは15.4%で同2.4ポイント低下した。自己資本比率は84.2%で同2.3ポイント上昇した。配当は同15円増配の年間115円(第2四半期末55円、期末60円)で配当性向は42.2%だった。利益配分については、グループ全体の利益水準、財政状態および配当性向等を総合的に勘案しながら「適正かつ安定的な配当」を続けていくことを基本方針とし、具体的指標としては配当性向を50%に近づけるべく努めるとしている。
セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、経営コンサルタント事業は売上高が同7.7%増の63億81百万円で営業利益が同9.5%増の13億68百万円、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業は売上高が同14.9%増の13億36百万円で営業利益が同16.7%増の3億92百万円、不動産コンサルティング事業は売上高が同11.4%増の7億82百万円で営業利益が同11.5%増の2億38百万円、FP関連事業は売上高が同13.5%増の7億28百万円で営業利益が同30.7%増の96百万円、投資・ファンド事業は売上高が同76.6%減の45百万円で営業利益が同68.4%減の42百万円だった。
16年3月期末の提携数は330会計事務所(15年3月期末は275会計事務所)となった。投資ファンド事業は新規投資1件・73百万円を実行し、期末投資残高は82百万円となった。
なおM&A関連売上は、14年3月期が経営コンサルタント事業で17件・5億円、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業で8件・1億67百万円、15年3月期が経営コンサルタント事業で28件・10億22百万円、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業で15件・5億53百万円、16年3月期が経営コンサルタント事業で32件・13億08百万円、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業で17件・6億48百万円だった。順調に増加している。
■17年3月期第3四半期累計は大幅増収増益
前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比26.9%増の76億77百万円、営業利益が同38.5%増の14億40百万円、経常利益が同43.8%増の15億25百万円、純利益が同49.3%増の9億79百万円だった。
売上総利益は同24.6%増加したが、売上総利益率は87.9%で同0.6ポイント低下した。また販管費は同20.4%増加したが、販管費比率は67.5%で同2.9ポイント低下した。営業外では為替差損が増加(前期73百万円、今期2億07百万円)した。
セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、経営コンサルタント事業は売上高が同33.5%増の57億66百万円で営業利益が同74.5%増の12億45百万円だった。大型コンサルティング案件が売上実現し、M&Aおよび事業承継コンサルティングが順調に推移した。
資本・株式・株主に関するコンサルティング事業は売上高が同20.2%増の8億04百万円で営業利益が28百万円の赤字(前年同期は58百万円の黒字)だった。ファイナンシャルアドバイザリー業務が順調だったが、M&A案件の売上実現が遅れ、人員増加でコストが増加した。
不動産コンサルティング事業は売上高が同21.1%減の5億02百万円で営業利益が同33.6%減の1億37百万円だった。受注件数は増加したが、役務提供の完了が第4四半期(1~3月)となる案件が多いようだ。FP関連事業は売上高が同16.9%減の4億57百万円で営業利益が同91.8%減の5百万円だった。確定年金拠出(DC)関連研修の実施回数大幅減少が影響した。投資・ファンド事業は売上高が1億81百万円(前年同期はなし)で営業利益が79百万円(同2百万円の赤字)だった。投資株式の償還益を計上した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期26億34百万円、第2四半期24億72百万円、第3四半期25億71百万円、営業利益は5億86百万円、4億54百万円、4億円だった。
■17年3月期増収増益・連続増配予想、18年3月期も収益拡大期待
前期(17年3月期)通期の連結業績予想(4月27日公表)は売上高が前々期(16年3月期)比15.0%増の105億円、営業利益が同7.7%増の23億円、経常利益が同12.6%増の23億20百万円、純利益が同15.1%増の15億円としている。配当予想は、同20円増配の年間135円(第2四半期末65円、期末70円)で、予想配当性向は42.8%となる。
経営コンサルタント事業は事業再生が減少傾向だが、事業成長、事業承継、M&Aが拡大基調である。なお16年4月子会社化したSPIRE(スパイア)社については、営業利益がのれん償却額とほぼ同額になる見込みのため、営業利益に対する影響はないとしている。資本・株式・株主に関するコンサルティング事業はM&A関連を中心に事業規模が拡大する。不動産コンサルティング事業は人材確保に係るコストが増加するが、提携会計事務所からの案件受注が好調に推移して安定的な利益確保を目指す。FP関連事業は法人マーケットでの拡販で増収増益を目指す。投資・ファンド事業は投資株式(優先株式)の償還益計上で若干の営業利益を見込んでいる。
なお通期のセグメント別の計画については、経営コンサルタント事業の売上高が同12.8%増の72億円で営業利益が同6.0%増の14億50百万円、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業の売上高が同34.7%増の18億円で営業利益が同12.2%増の4億40百万円、不動産コンサルティング事業の売上高が同8.7%増の8億50百万円で営業利益が同7.1%増の2億55百万円、FP関連事業の売上高が同13.3%増の8億25百万円で営業利益が同1.0%減の95百万円、投資・ファンド事業の売上高が70百万円(前期は45百万円)で営業利益が60百万円(同42百万円)としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73.1%、営業利益が62.6%、経常利益が65.7%、純利益が65.2%である。やや低水準の形だが、好採算案件や大型案件の有無で四半期利益が変動しやすい収益構造であり、経営コンサルタント事業における事業成長・事業承継・M&A関連が牽引して好業績が期待される。そして今期(18年3月期)も収益拡大が期待される。
■株価は06年来高値圏モミ合いから上放れの動き
株価の動きを見ると、06年来の高値圏4600円~5000円近辺で堅調に推移している。そして4月4日には5090円まで上伸し、モミ合い上放れの動きを強めてきた。
4月5日の終値4950円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS316円11銭で算出)は15~16倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間135円で算出)は2.7%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1844円73銭で算出)は2.7倍近辺である。時価総額は約246億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって中段保ち合いから上放れる動きだ。1月高値5250円は射程圏であり、好業績を評価して上値を試す展開が期待される。これを突破すれば05年の上場来高値7600円を目指す展開だ。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)