フォーカスシステムズは期末権利落ちの売り一巡、システム需要高水準で18年3月期収益改善期待

 フォーカスシステムズ<4662>(東1)は公共関連・民間関連のシステム構築・保守・運用を主力としてセキュリティ機器関連事業も展開している。医療分野へのAI活用に向けた共同研究も開始した。外注費増加で17年3月期営業利益予想を減額したが、システム需要高水準で18年3月期は収益改善が期待される。株価は期末配当および株主優待権利落ちで年初来高値圏から急反落したが、売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して戻りを試す展開が期待される。

■システム構築・保守・運用を主力としてセキュリティ機器関連事業も展開

 公共関連・民間関連のシステム構築・保守・運用・管理サービスを主力として、セキュリティ機器関連事業も展開している。16年3月期事業別売上高構成比は公共関連事業35%、民間関連事業59%、セキュリティ機器関連事業6%だった。

 顧客別に見るとNTTデータ<9613>関連および日本IBM関連を主力として、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)<4739>関連、沖電気<6703>関連、ソフトバンク<9984>関連などが続いている。

 16年5月には女性活躍推進法に基づく厚生労働大臣認定「えるぼし」企業に認定された。認定は基準を満たす項目数に応じて3段階あり、最も高い「3段階目」の最上位認定を受けた。

■中期成長に向けてAI・ロボット分野を開拓

 中期成長に向けた重点戦略として、需要が潤沢なインフラビジネス分野における技術者の育成、ノウハウ蓄積にも繋がる運用系業務分野におけるシェア拡大、業務アプリケーション分野における専門技術への取り組み強化による対応領域拡大を推進している。また民間関連事業では関東圏・近畿圏に加えて、東海圏での業務拡大に取り組んでいる。

 16年1月にはベトナムの日系ソフトウェア開発会社であるインディビジュアルシステムズ(IVS)社に出資した。協業関係を一段と強化する。

 16年4月には、日立製作所<6501>のシステム運用に必要なあらゆる情報を関連付けて一元管理できるクラウドサービス「Hitachi Cloudアプリケーション運用ナビゲーションサービス」の販売パートナーになったと発表した。当社の強みであるintra-martとの連携導入も可能なため、システム構築から運用までをトータルにサポートする。

 16年6月には洛和会ヘルスケアシステム、FRONTEO(フロンテオ)<2158>(UBICが16年7月に社名変更)および当社が、病院経営や医療現場の運営に関わる意思決定や判断支援など、医療事業分野に人工知能(AI)を用いるための共同研究を開始すると発表した。

 16年10月には、ソフトバンクロボティクスのロボアプリパートナー(Basic)認定取得を発表した。さらに上位資格ロボアプリパートナー(Basic)with Microsoft Azureの認定取得を目指し、将来的にロボット分野への参入を目指すとしている。

 16年12月には、サイバーフォレンジック企業の米国Blackbag Technologies社と、日本国内における正規販売代理店契約を締結し、同社製品の販売を開始すると発表した。同社のソフトウェアは世界中の数百以上の法執行機関や政府機関で犯罪捜査のために使用されている。政府官公庁・法執行機関や大手企業をターゲットに同社ソリューションを提案して拡販する。

 3月22日には、防塵・防水機能を新たに追加した小型・軽量のBLEビーコンを開発したと発表している。タグ型とモジュール型の2種類で、モジュール型は組み込み可能な基盤を持った既存機器のIoT化にも適用可能である。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期35億83百万円、第2四半期37億03百万円、第3四半期35億90百万円、第4四半期42億05百万円、営業利益が99百万円、1億96百万円、2億40百万円、4億05百万円、16年3月期は売上高が35億42百万円、39億52百万円、42億02百万円、47億86百万円、営業利益が26百万円、1億75百万円、2億98百万円、4億54百万円だった。

 年度末にあたる第4四半期の構成比が高い収益構造である。16年3月期は受注が高水準で計画超の増収増益だった。売上総利益は15年3月期比4.4%増加したが、売上総利益率は13.3%で同0.7ポイント低下した。販管費は同6.8%増加したが、販管費比率は7.6%で同0.1ポイント低下した。特別利益には投資有価証券売却益を計上した。ROEは10.4%で同0.4ポイント上昇、自己資本比率は49.6%で同2.4ポイント上昇した。

 配当は年間16円(期末一括、普通配当12円50銭+記念配当3円50銭)で15年10月1日付株式2分割を考慮して年間32円に換算すると、15年3月期の年間25円(期末一括、普通配当10円+特別配当15円)に対して実質的に7円増配だった。配当性向は30.0%だった。

 セグメント別に見ると、公共関連事業は売上高が同6.7%増の57億34百万円で営業利益(連結調整前)が同2.4%減の8億35百万円、民間関連事業は売上高が同12.8%増の97億38百万円で営業利益が同13.1%増の11億87百万円、セキュリティ機器関連事業は売上高が同6.1%減の10億09百万円で営業利益が同12.7%減の1億73百万円だった。

■17年3月期第3四半期累計は先行投資負担で減益だが需要高水準

 前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の非連結業績は、売上高が前年同期比9.6%増の128億24百万円、営業利益が同14.4%減の4億27百万円、経常利益が同14.3%減の4億16百万円、純利益が同40.1%減の2億79百万円だった。

 需要が高水準で売上高は第3四半期累計として過去最高となったが、優秀な人材確保への採用投資、技術者一人ひとりの価値を高めるための教育投資、ガバナンス強化を目的とした社内管理体制へのシステム投資、自社製品開発・販売のための投資など、先行投資負担で減益だった。

 売上総利益は同1.9%増加したが、売上総利益率は11.4%で同0.8ポイント低下した。販管費は同10.7%増加し、販管費比率は8.0%で同横ばいだった。特別利益では前期計上の投資有価証券売却益2億08百万円が一巡した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期40億68百万円、第2四半期43億15百万円、第3四半期44億41百万円で、営業利益は20百万円、1億81百万円、2億26百万円だった。

■17年3月期通期も先行投資負担で減益予想

 前期(17年3月期)通期の非連結業績予想は3月17日に修正した。前回予想(5月13日公表値)に対して、売上高は8億60百万円増額して前々期(16年3月期)比8.4%増の178億60百万円だが、営業利益は1億15百万円減額して同28.1%減の6億85百万円、経常利益は1億05百万円減額して同30.0%減の6億65百万円、そして純利益は10百万円増額して同32.2%減の5億円とした。配当予想は据え置き、記念配当を落として同3円50銭減配の年間12円50銭(期末一括)としている。予想配当性向は34.6%となる。

 企業のIT投資が高水準に推移しているため売上高を増額したが、公共関連事業および民間関連事業の開発において外注費が増加し、公共関連事業における進捗遅れ案件の発生に伴うコスト増加も影響して、営業利益と経常利益を減額修正した。純利益については投資有価証券売却益の計上が寄与する。

 前期(17年3月期)は先行投資負担も影響して減益予想だが、システム需要が高水準で今期(18年3月期)は収益改善が期待される。

■17年3月期末から株主優待制度を導入

 株主優待制度導入は17年3月期末から開始し、毎年3月末現在2単元(200株)以上保有株主を対象として保有株式数に応じたポイントを贈呈する。そのポイントを株主限定の特設ウェブサイト「フォーカスシステムズ・プレミアム優待倶楽部」(17年6月下旬開設予定、登録必要)において、約700種類の商品の中から選んで交換できる。ポイントは次年度へ繰り越す(最大2年間有効)ことができる。

■株価は期末権利落ちの売り一巡して戻り試す

 株価の動きを見ると、期末配当および株主優待権利落ちで620円近辺の年初来高値圏から急反落し、4月4日には525円まで調整した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 4月5日の終値530円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS36円11銭で算出)は14~15倍近辺で、前期推定配当利回り(会社予想の年間12円50銭で算出)は2.4%近辺、前々期実績PBR(前々期実績BPS535円58銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約86億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。売り一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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