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【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の戦法・まるで「秀吉の小田原攻め」
- 2017/4/11 12:12
- 小倉正男の経済コラム
■米中会談で圧倒的な格の違い
トランプ大統領のアメリカが、シリアのアサド政府軍が支配する空軍基地を巡航ミサイルで攻撃した。しかも、米中首脳会談の真ッ最中に叩いた。
アメリカの巡航ミサイルでの攻撃は、アサド政府軍が化学兵器を使用したことを大義名分としている。「いくつもの一線を越えた」――トランプ大統領はそう語っている。
米中トップ会談でフツーに「二大強国」を演出したいと思っていた習近平(=国家主席)としては、屈辱だったに違いない。面子を潰された思いがあったと思われる。
ただ、それ以上にあったのは、力で圧倒的な格の違いを見せつけられた思いではないか。
アメリカがシリアを攻撃したのを喜んだのは、北朝鮮の金正恩(=最高指導者)だったのではないか――。
アメリカは、やはり東アジアより中東が主戦場だ。北朝鮮には死活的な関心はない。それに北朝鮮、中東の二正面同時作戦は、いくらアメリカでも採れないだろう、と・・・。
しかし、アメリカは、シリア攻撃ではロシア、そしてシリア・アサド政府にも事前に告げていたフシがある。二正面作戦ではなく、陽動作戦というふうにもみえないでもない。
■「トランプの小田原攻め」
アメリカは、間髪をおかずにカール・ヴィンソン空母打撃群、さらにミサイル駆逐艦なども朝鮮半島に向けて航行させている。
力ではまったく格が違う――。隠密の航行ではない。なかばこれみよがしの堂々の航行である。金正恩が頭を下げるのなら許してやろうといったやり方である。
これではまるで「豊臣秀吉の小田原攻め」のように見える。
それでも金正恩は強がる可能性が高い。おそらく強がるに違いない。トランプ大統領としては、北朝鮮、いや金正恩はもうすでに”いくつもの一線を越えた”と判断しているのではないか。
このまま放置すれば、ますます難しいことになりかねない。それなら、いまでしょ、ということになるのか。中国は、そのときの家康の亜流みたいなもので、「トランプの小田原攻め」を黙認するしかない・・・。
■被害者意識ではすまないところにいる現実
アメリカが、北朝鮮を叩いてもいまは火の粉がアメリカ本土までは飛ばない。しかし、韓国、日本には火の粉が飛ぶ。
実害をこうむるのはアメリカではなく、韓国であり、日本である――。新聞、系列のテレビなどからそうした意見が出ている。
日本のリベラリズムは先送り論というところだ。被害者意識をベースにしているわけだが、先送りしても問題は解決しない。先送りしていまにいたっている面がある。
アメリカに火の粉が飛ぶまでになれば、それこそ解決は困難になる。北朝鮮の金正恩の思う壺というところか。
北朝鮮は、韓国、日本に火の粉を飛ばすことを盾に瀬戸際外交を続けてきている。結末はまだみえない。そんななかで日本も被害者意識ではすまないところにいる現実が突きつけられている。
(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)