エイジアは急反落したが売られ過ぎ感、18年3月期も収益拡大基調期待

 エイジア<2352>(東2)はメール配信システムの大手である。eコマース分野を強化し、AI(人工知能)を活用した新サービス開発も推進している。17年3月期2桁増収増益・増配予想で、18年3月期も収益拡大基調が期待される。株価は株式2分割後の4月に入って急反落の形となったが売られ過ぎ感を強めている。好業績を見直して上値を試す展開が期待される。

■メール配信などe-CRMシステム「WEBCAS」シリーズが主力

 自社開発e-CRMシステムのWEBCASシリーズを提供するアプリケーション事業を主力として、システム受託開発やマーケティングコンサルティングなども展開している。16年3月期の事業別売上構成比はアプリケーション事業84%、サービスソリューション事業16%だった。17年3月期からサービスソリューション事業を分解し、事業セグメントをアプリケーション事業、コンサルティング事業、オーダーメイド開発事業とした。

 01年発売開始したメール配信システム「WEBCAS e-mail」は顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。通販企業、メーカー、生命保険、情報サービス会社など多様な業界の企業や官公庁に導入され、国内メール配信パッケージ市場でシェア1位である。

 またWEBCASシリーズは、メール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心として、メール共有システム「WEBCAS mailcenter」などをラインナップに抱えるe-CRMアプリケーションシリーズである。16年8月にはWEBCASシリーズ導入企業が3000社を突破した。

 17年2月にはITR発行の市場調査レポート「ITR Market View:マーケティング管理市場2017」において、メール配信システム「WEBCAS e-mail」が2015年度メール送信パッケージ市場のベンダー別売上金額シェア1位を獲得したと発表している。

■WEBCASシリーズのラインナップ強化

 中期成長戦略として「メールアプリケーションソフトのエイジア」から、販売促進・マーケティング支援分野に事業領域を拡大して「eコマースの売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」への発展を目指し、クラウドサービス(ASP、SaaS)の強化、新製品・サービス開発の推進、サービスソリューション事業の拡大に取り組んでいる。

 15年9月システムインテグレータの「SI Omni Channel Services」と「WEBCAS e-mail」を連携したオムニチャネルマーケティング・ソリューション開始、15年11月LINEビジネスコネクトを活用したセグメント抽出型メッセージ配信システム「WEBCAS taLk」発売、16年4月地方創生関連施策の推進や検証をサポートするCRMシステム「WEBCAS地方創生応援パック」発売、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)対応「WEBCAS e-mail for AWS」を発売した。

 16年6月には新製品マーケティングオートメーション「WEBCAS Auto Relations(ウェブキャス・オート・リレーションズ)」を発売した。ユーザーの行動に基づいた効果的なマーケティング・コミュニケーションを自動で実行できるBtoCのEC事業者向けマーケティング・プラットフォームである。今後の開発戦略について、16年にはSTEP2としてチャネルの複数化・多様化、定性分析による顧客セグメント化、17年にはSTEP3として人工知能「将来予測エンジン」の搭載または連携、IOT技術を活用したビッグデータ対応を計画している。

■M&A・アライアンスも積極活用

 M&A・アライアンス戦略では、12年4月ECサイト構築・運営事業拡大に向けてシステムインテグレータ<3826>と資本・業務提携、12年12月メールマガジン制作・運用支援のグリーゼと資本・業務提携、13年10月メールマガジン戦略立案・企画・制作・分析サービスのFUCAを連結子会社化、14年1月Webサイトソーシャル化支援サービスのフィードフォース社と業務提携、15年11月調査・コンサルティングサービスのwizpraと業務提携した。

 16年1月ダイレクトマーケティング専門エージェンシーのフュージョンと業務提携、16年4月CMS開発・販売のミックスネットワークと業務提携、16年6月電通ダイレクトフォースと業務提携、16年10月ダイレクトコミュニケーションに特化したアウトソーシングサービスのディーエムエス(DMS)とマーケティングオートメーションを活用したEC事業者向け販促支援サービスの共同提供を目的に業務提携した。

 16年11月には、ECサイトやWebサイトのコンバージョンアップへ向けたトータルソリューションの提供を目的に、IoTインテグレーションやEC・オムニチャネルパッケージを提供するエスキュービズム、人工知能「AIアナリスト」を通じてWebサイトのコンバージョン改善提案サービスを提供するWACUL、およびWebサイト構築・運営プラットフォーム「SITE PUBLIS(サイトパブリス)」を提供するミックスネットワークの3社との協業を発表した。

 17年1月には、動画マーケティング支援サービスの共同提供を目的として、動画編集ツール「GrowMovie」を提供するグロウ・ムービー・ジャパンとの資本業務提携を発表した。

■デジタルポスト社と業務提携して新サービス

 15年10月Webサービス「Digital POST」を提供するデジタルポスト社と業務提携した。デジタルポスト社は日本郵便のハイブリッド郵便サービスを事業化するため11年に設立され、ネットやアプリから郵便やDMを作成・配送できるユニークなサービスを提供している。

 15年12月WEBCASシリーズの新サービスとして、インターネット上からDM(ダイレクトメール)やハガキ、手紙などの作成から郵送までを行えるDM配送サービス「WEBCAS DM」の発売を開始した。デジタルポスト社から技術供与を受けた。

■人工知能(AI)を活用した新サービス開発にも注力

 15年10月人工知能(AI)技術や自然言語解析技術を活用したマーケティングソリューションの共同研究・開発を目的として、人工知能型「顧客の声」分析エンジンを提供するメタデータと資本・業務提携し、16年2月メタデータがAIを活用した高速マッチングエンジン「xTech(エックステック)」を販売開始した。実用性に乏しい機械学習アルゴリズム(ディープラーニング)や、処理が遅延しがちな従来型マッチングエンジンの問題を解決する超高速マッチングエンジンである。

 16年6月には人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」を発売した。メタデータから技術供与を受けた。

■海外はマレーシアを強化

 海外は15年12月マレーシアでマーケティング支援業務を行うMarvelous International社を子会社化した。購買力の高い富裕層や中間所得層が拡大する成長市場マレーシアにおける事業を強化する。

■下期の構成比が高い収益構造

 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期2億22百万円、第2四半期2億65百万円、第3四半期2億67百万円、第4四半期2億77百万円、営業利益が14百万円、51百万円、54百万円、59百万円、16年3月期は売上高が2億51百万円、2億90百万円、2億83百万円、3億21百万円、営業利益が25百万円、73百万円、55百万円、86百万円だった。ストック型で下期の構成比が高い収益構造である。

 16年3月期は利益率の高いクラウドサービスが好調に推移し、15年3月期比で計画超の2桁増収増益だった。売上総利益は同16.0%増加し、売上総利益率は65.4%で同2.8ポイント上昇した。販管費は同9.1%増加したが、販管費比率は44.5%で同0.8ポイント低下した。ROEは15.6%で同3.2ポイント上昇、自己資本比率は81.3%で同2.3ポイント上昇した。配当は同3円増配の年間18円(期末一括)で配当性向は22.2%である。利益配分については、新規事業投資や研究開発投資等に必要な内部留保は従来どおり行いつつ、配当金による利益配分を行っていくことを基本方針としている。

 アプリケーション事業は売上高が同12.5%増の9億62百万円、売上総利益率が同3.0ポイント上昇の73.0%、営業利益(連結調整前)が同20.9%増の4億51百万円で、重点分野のクラウドサービス売上高は同19.0%増加の6億59百万円だった。サービスソリューション事業は売上高が同4.3%増の1億82百万円、売上総利益率が同1.3ポイント低下の25.2%、営業利益が同50.9%減の6百万円だった。

■17年3月期第3四半期累計は2桁増収増益

 前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は売上高が前年同期比14.7%増の9億45百万円、営業利益が同26.7%増の1億93百万円、経常利益が同26.0%増の1億97百万円、純利益が同26.5%増の1億26百万円だった。

 コンサルティングサービスやクラウドサービスが伸長して2桁増収増益だった。売上総利益は同12.8%増加したが、売上総利益率は62.9%で同1.0ポイント低下した。販管費は同7.1%増加したが、販管費比率は42.4%で同3.0ポイント低下した。

 セグメント別に見ると、アプリケーション事業は売上高が同14.3%増の7億88百万円で売上総利益率が同1.0ポイント低下の70.9%、コンサルティング事業は売上高が同28.0%増の1億39百万円で売上総利益率が同6.8ポイント低下の18.0%、オーダーメイド開発事業は売上高が同32.9%減の17百万円で売上総利益率が同40.4ポイント上昇の57.1%だった。なお重点分野としているクラウドサービスの売上高は同18.0%増の5億64百万円、コンサルティングサービスの売上高は同2.7%増の85百万円だった。オーダーメイド開発事業は自社企画製品開発(アプリケーション事業)に経営資源を集中させるため、今期は好採算案件のみ取り組む方針である。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期2億85百万円、第2四半期3億12百万円、第3四半期3億48百万円、営業利益は46百万円、61百万円、86百万円だった。

■17年3月期通期は2桁増収増益予想、配当予想を増額

 前期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月10日公表)は、売上高が前々期(16年3月期)比10.4%増の12億65百万円、営業利益が同10.7%増の2億65百万円、経常利益が同11.2%増の2億70百万円、そして純利益が同11.8%増の1億80百万円としている。

 配当予想(1月31日に期末5円増額修正)は年間25円(期末一括)としている。前々期との比較では7円増配で、推定配当性向は28.6%となる。株主還元のさらなる充実を図るべく、意識する配当性向を従来の20%前後から今後は30%前後に引き上げた。

 BtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」や、人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」など、新製品投入も寄与してアプリケーション事業が好調に推移する。戦略的投資として、クラウドサービス提供サーバ等のインフラ増強18百万円、ESOPによるモチベーション戦略21百万円、新卒採用を含めた人材投資23百万円、「WEBCAS e-mail for AWS」提供環境構築1百万円、マレーシア市場開発7百万円、合計約70百万円を計画しているが、増収効果で先行投資費用を吸収する。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.7%、営業利益が72.8%、経常利益が73.0%、純利益が70.0%と順調な水準である。通期ベースでも好業績が期待される。そして今期(18年3月期)も収益拡大基調が期待される。

■株主優待制度は毎年3月末に実施

 株主優待制度については、毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。15年3月期末から実施した。

■株価は売られ過ぎ感、好業績を見直して上値試す

 株価の動き(17年4月1日付で株式2分割)を見ると、2月21日の年初来高値1311円から反落し、さらに株式2分割後の4月に入って急反落の形となった。4月12日には916円まで調整した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 4月12日の終値936円を指標面(1株当たり数値は17年4月1日付の株式2分割を考慮して算出)で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS43円72銭で算出)は21~22倍近辺で、前期推定配当利回り(会社予想の年間12円50銭で算出)は1.3%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS278円16銭で算出)は3.4倍近辺である。時価総額は約億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。好業績を見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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