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イノベーションは売られ過ぎ感強めて反発、法人向けネットマーケティング支援で中期成長
- 2017/4/14 08:05
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イノベーション<3970>(東マ)は、ミッションに「法人営業の新しいスタイルを創造する」と掲げ、法人向け(BtoB)に特化したインターネットマーケティング支援事業を展開している。17年3月期大幅増益予想で、18年3月期も経営基盤強化に向けた先行投資負担を吸収して収益拡大基調が予想される。そして中期成長期待も高まる。株価は安値更新の形だが売られ過ぎ感を強めている。中期成長力を見直して反発展開が期待される。
■法人向けインターネットマーケティング支援
法人向け(BtoB)に特化したインターネットマーケティング支援(成果報酬型の比較・資料請求サイトの運営、およびマーケティングオートメーションツールの開発・提供)を展開している。
インターネットを活用して属人的で非効率な法人営業の無駄をなくし、法人営業の生産性向上に貢献するビジネスモデルだ。ミッションには「法人営業の新しいスタイルを創造する」と掲げている。
00年12月設立で、16年12月東証マザーズに新規上場した。会社設立初期に展開していた法人向けテレマーケティング事業は15年3月、リスティング広告代理店事業は15年12月撤退し、現在は07年開始したオンラインメディア事業、および10年12月開始したセールスクラウド事業を主力としている。
なお15年7月、日経BP社およびリンクアンドモチベーション<2170>に対する第三者割当増資を実施している。
■法人営業の見込み顧客獲得からフォローアップまで一気通貫サービス提供
オンラインメディア事業は、07年7月開始した法人向けIT製品比較・資料請求サイト「ITトレンド」の運営、および08年1月開始した人事・総務部門向けアウトソーシングサービス等比較・資料請求サイト「BIZトレンド」の運営を主力としている。日経BP社が運営する各媒体の提供も行っている。
サイトを閲覧するユーザーは無料で、法人向けIT製品・サービスの比較・一括問い合わせ・資料請求を行うことができる。検索エンジン経由でサイトに来訪した購買意欲の高い見込み顧客を、成果報酬課金型でクライアント(サイトへの出稿企業)に提供する収益モデルであり、広告課金型の既存のメディア企業の収益モデルと一線を画している。
なおサイト掲載サービスカテゴリーおよび掲載製品・サービス数は、16年10月時点で、ITトレンドが勤怠管理システムや会計システムなど197カテゴリー・1395製品・サービス、BIZトレンドが研修・人事・採用・給与計算のアウトソーシングサービスなど62カテゴリー・290製品・サービスに達している。
セールスクラウド事業は、10年12月提供開始したマーケティングオートメーションツール「ListFinder(リストファインダー)」を主力としている。
リストファインダーは、購入意欲の高い見込み客の発見を支援するマーケティングオートメーションツールである。クラウドサービス型で提供する。中堅・中小企業の法人営業に最適な機能に絞り込み、導入・運用コストを競合他社に比べて数分の1で提供することで差別化している。BtoB中小企業向けマーケティングオートメーションツールの導入数シェアNO.1(富士キメラ総研調べ)で、16年12月末時点のアカウント数は537件に達している。
オンラインメディア事業において法人営業の見込み顧客獲得(リードジェネレーション)を支援し、セールスクラウド事業において見込み顧客育成(リードナーチャリング)から顧客獲得後のフォローアップまで支援するという、一気通貫のサービスを提供するビジネスモデルだ。そしてセールスクラウド事業はストック型の収益モデルである。
なお17年1月には、マーケティングオートメーションツールベンダーとしては国内で初めて、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得したと発表している。また3月29日には、経済産業省「サービス等生産性向上IT導入支援事業」(IT導入補助金)において、リストファインダーがIT導入補助金の対象サービスに認定されたと発表している。
■中期成長に向けて新技術・新サービスに積極投資
中期成長戦略としては、既存の事業基盤を一層発展させるとともに、新技術・新サービスにも積極投資して「法人営業の新たなスタイルの創造」の実現を目指すとしている。オンラインメディア事業におけるサービスカテゴリー拡大、セールスクラウド事業における機能開発を加速させる方針だ。
オンラインメディア事業では、現在の主力であるITトレンドおよびBIZトレンドのプラットフォームを活かしながら、日経BP社との連携も強化して、新たな領域へサービスカテゴリーを拡大する。
4月12日にはITトレンドにおいて、経済産業省「サービス等生産性向上IT導入支援事業」(IT導入補助金)の対象IT製品を比較・資料請求できる特設サイト「IT導入補助金ガイド」をオープンしたと発表している。
セールスクラウド事業では、リストファインダーの機能・データ活用を可能にするAPI(Application Program Interface=アプリケーション・プログラム・インターフェイス)の開発を促進し、他ツールとの連携を強化する。また領域ごとに最適な機能の開発を加速して一層の販路拡大を図る。
17年1月にはリストファインダーが、アベルザ(横浜市)が提供する製造業向け工業用間接資材カタログポータル「Cluez(クルーズ)」の利用企業向けマーケティングツールとして採用され、サービス提供を開始した。
17年2月にはリストファインダーと、Sansan(東京都)が提供する法人向け名刺管理サービス「Sansan」と、APIによるツール間データ連携を開始した。連携して利用することにより、過去獲得した名刺情報から有望な見込み顧客を発掘することが可能になる。
また4月3日には、法人営業の新しいスタイルを創造することを目的として、新技術の活用と創出に取り組む組織「Sales Tech Lab」の設立を発表した。社外の企業・専門家・研究機関とも連携したオープンな組織として運営する。
■17年3月期大幅増益予想で上振れ余地、中期成長も期待
前期(17年3月期)通期の非連結業績予想(16年12月21日公表)は、売上高が11億64百万円、営業利益が1億40百万円、経常利益が1億60百万円、純利益が1億21百万円としている。
IPO前の16年3月期業績(売上高13億03百万円、営業利益3百万円、経常利益4百万円、純利益13百万円)との比較で見ると、16年3月期中にマーケティング代行事業(16年3月期セグメント売上高3億88百万円)から撤退した影響で減収の形だが、現在のオンラインメディア事業、セールスクラウド事業とも好調に推移し、実質的に増収予想である。そして収益性の低いマーケティング代行事業の撤退で全体収益が改善するため、大幅増益予想である。
なお第3四半期累計(4~12月)の非連結業績は売上高が9億07百万円、営業利益が1億15百万円、経常利益が1億39百万円、純利益が86百万円だった。
オンラインメディア事業は、売上高が6億84百万円で営業利益(連結調整前)が3億27百万円だった。サイトの来訪者数(述べ人数)が前年同期比73.1%増の355万7426人と好調だった。セールスクラウド事業は、売上高が2億23百万円で営業利益が46百万円だった。リストファインダーのアカウント数は前年同期比25.8%増の537件となった。
そして通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が77.9%、営業利益が82.1%、経常利益が86.9%、純利益が71.1%と順調である。
16年4月~19年3月を成長加速期と位置付けて、経営基盤強化に向けた積極的な先行投資を行うため人件費や販促費などが増加するが、前期(17年3月期)大幅増益予想で上振れ余地があり、今期(18年3月期)も先行投資負担を吸収して収益拡大基調が予想される。そして中期成長期待も高まる。
■株価は売られ過ぎ感、中期成長力を見直して反発期待
株価の動きを見ると、6000円近辺でのモミ合いから下放れて上場来安値更新の形となった。4月12日には4710円まで下押す場面があった。ただし4月13日には終値で前日比235円高の5130円まで反発した。
4月13日の終値5130円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS163円30銭で算出)は31倍近辺である。時価総額は約45億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。中期成長力を見直して反発展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)