【編集長の視点】「水と安全はタダではない」のならセキュリティ関連株に「第2のRSC」が浮上余地=浅妻昭治
- 2015/2/9 11:01
- 編集長の視点
<マーケットセンサー>
「恐怖指数」と呼ばれるテクニカル指標がある。米国で算出・公表されている「ボラティリティ・インデックス(VIX指数)」の別称で、相場の先行きが不透明化し、投資家心理が不安に傾き悪化したときに数値が高くなるように設計されている。この「VIX指数」とは直接の関係はないものの、足元の東京市場で同種の「恐怖」、「不安」を逆バネに株価が急騰中の銘柄が出現した。RSC<アール・エス・シー、4664>(JQS)である。
同社株は、今年1月30日の終値272円に対して、2月2日から前週末6日の712円までの5日間、毎日がストップ高となる急騰を演じ、2.6倍の大化けをした。この間、5日、6日は比例配分で値をつけ売買高が減少したが、1週間合計の売買高は、発行済み株式数の実に4割強が高回転する賑わいをみせた。急騰のキッカケは、2月1日朝方にインターネットに痛ましい惨劇が配信されたことにあった。中東の過激派武装組織・イスラム国の人質となっていた後藤健二さんが、国内はもちろん、世界的にも強まっていた救出の願いもむなしく殺害される「非道、卑劣きわまりない」動画映像が公開され、同映像とともに「日本にとっての悪夢が始まる」と国際的なテロを壊滅させる有志連合に加わった日本を脅迫したからだ。このショック、恐怖、不安が、逆に同社主力の警備事業の需要拡大につながるとの思惑を強めて同社株買いを加速させた。
兜町は、国民全員が弔意を表さなくてはならない事件さえも買い材料にすると、節操のなさにまたお叱りを受けそうだ。しかし、「積極的平和主義」を政治理念とし、「地球儀を俯瞰する外交」を展開する安倍晋三首相が、5月以降の今通常国会に安全保障法制の関連法案を提出する予定しているなかにあって、日本が、いかに人道支援と後方支援に限定した国際貢献を主張したとしても、紛争多発の厳しい国際政治の現実の前で今後、どのような国際紛争に巻き込まれるか予断は許さず、このリスクを先取りしているとすれば、無節操で情緒的、非論理的な投資行動とはいえないはずだ。それは、かつてオウム真理教の地下鉄サリン事件以後にJR、地下鉄を問わずすべての駅構内からゴミ箱が撤去され、米国の同時多発テロ事件直後には、官庁や企業での入門規制が強化されカバンの中身までをも検査されたことにも抗議の声を上げるのを慎みず唯々諾々と従ったことと変わらない。今回のテロ事件が、かつてのベストセラーで指摘された「水と安全はタダではない」ことを改めて認識させたことになる。
株価が急騰したのはRSCだけではない。ALSOK<2331>(東1)、トスネット<4754>(JQS)、東洋テック<9686>(東2)の警備会社、ガードマン株も昨年来高値追いとなっている。後藤健二さんのあとヨルダンのパイロットの殺害映像が配信されて、有志連合のイスラム国壊滅作戦はエスカレートしており、海外在留邦人へのテロ懸念、国内でのテロ事件発生への警戒感が強まる可能性があり、幅広いセキュリティ関連株買いにつながっている。今後、全般相場が、どのような展開を辿ろうとも、このセキュリティ関連株は、今国会での5月以降の安全保障法制論議を踏まえて息の長いテーマ株、モメンタム株としてマークしておくことは正解で、「第2のRSC」が、次々に浮上する余地が大きいということになりそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)