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アドアーズは17年10月持株会社へ移行予定、M&A活用して機動的に事業再編推進
- 2017/4/21 06:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アドアーズ<4712>(JQ)はアミューズメント施設運営の総合エンターテインメント事業を主力として、不動産事業、商業施設建築事業、店舗サブリース事業を展開している。17年3月期大幅増益予想で、18年3月期も収益改善基調が期待される。なお17年10月に持株会社へ移行予定で、M&Aも活用して機動的に事業再編を推進する方針だ。株価は売り一巡して反発展開が期待される。なお5月9日に17年3月期決算発表を予定している。
■Jトラストグループで総合エンターテインメント事業などを展開
Jトラスト<8508>グループで、アミューズメント施設運営の総合エンターテインメント事業を主力として、戸建て住宅分譲の不動産事業、商業施設建築事業、オリーブスパと16年3月業務提携した店舗サブリース事業などを展開している。
アミューズメント施設運営部門の16年3月期末店舗数はアドアーズ直営50店舗(うちコラボ店7店舗)、子会社ブレイク直営1店舗である。ゲームジャンル別売上構成比はメダルゲーム35.5%、クレーンゲーム28.6%、プリクラ2.4%、アーケードゲーム20.1%、その他(コンテンツ関連含む)13.4%だった。
■経営資源の集中を推進、17年10月持株会社へ移行予定
17年3月にはアミューズメント景品の企画・製造・販売を展開する子会社ブレイクの全株式をフォーサイド<2330>に売却した。事業の選択と集中を進め、VRエンターテインメント施設の運営強化など総合エンターテインメント事業の拡大に向けた展開を図る。
3月14日に持株会社へ移行するための検討を開始すると発表し、4月20日に持株会社体制への移行に伴う子会社(分割準備会社)の設立を発表した。17年10月持株会社へ移行予定で、積極的なM&Aの実施による機動的な事業再編やグループ全体の経営資源の最適配分を図る。
■海外で総合エンターテインメント事業拡大
海外は14年9月韓国JBアミューズメント(JBA)の第2位株主となった。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指す。
また16年6月には香港特別行政区に当社の孫会社となるブレイク・アジア(布雷克有限公司)設立が完了した。日本ライセンス商品の販売を拡大し、総合エンターテインメント事業の業容拡大を目指す。
■介護事業は休止
14年11月に通所介護事業の日本介護福祉グループを連結子会社化して介護事業に参入したが、15年8月に同社株式の譲渡と介護事業の休止を発表した。競争激化などで通所介護事業の業績改善の兆しが見込めないため、同社の創業者である藤田英明氏に全株式を譲渡して介護事業を休止した。なお15年12月、藤田英明氏に対して損害補償請求訴訟を東京地方裁判所に提起している。
■オリーブスパと業務提携して店舗サブリース事業を開始
16年3月、首都圏中心に全国34拠点(16年2月末現在、海外1店舗含む)でリラクゼーションサロン「OLIVE SPA」等を運営するオリーブスパ(オリスパ社)と、オリスパ社の店舗開発、出店時の内外装工事、店舗サブリース、オリスパ店舗チケットを活用した販促活動に関して業務提携した。
店舗サブリース事業による収益強化、子会社キーノートの商業施設建築事業の拡大、株主優待制度導入などオリスパ社のブランド力を活かした販促活動が可能になるとしている。
■VR(仮想現実)関連事業でグリーと業務提携
16年8月にはグリー<3632>と業務提携した。VR(仮想現実)に関する事業の進展を目的として、VR関連技術を活用したアミューズメント施設、アミューズメント施設向け遊戯機器および付帯するソフトウェアの開発を推進する。中長期的にはVRソフト等の国内外におけるライセンス販売や、VRとスマホの連携アプリ企画・開発までを視野に入れてVR関連事業を推進する方針だ。
そして旗艦店であるアドアーズ渋谷店の4Fを全面改装し、初のVRエンターテインメント施設「VR PARK TOKYO」を16年12月オープンした。
■新規事業を積極展開
16年10月には新規事業として、訪日外国人旅行客を対象とした外貨両替所事業の開始、保育所事業の開始検討を発表した。
外貨両替所事業は、アミューズメント施設の駅前好立地という店舗特性を活かして既存店舗の一部区画に外貨両替所を設置し、訪日外国人観光客を対象としてサービスを提供する。そして16年12月に当社初となる外貨両替所を開設した。
保育所事業は、企業主導型保育事業の助成決定通知を受けたため、保育事業の開始に向けた具体的な検討を開始する。アミューズメント施設の駅前好立地という店舗特性を活かして既存店舗の一部区画を業態転換し、各地域に根差した保育所の開設と運営を図る。
■16年3月期は減損損失計上
四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期56億85百万円、第2四半期60億97百万円、第3四半期61億04百万円、第4四半期55億13百万円、営業利益が3億60百万円、3億52百万円、1億10百万円、1億58百万円の赤字、16年3月期は売上高が54億74百万円、56億84百万円、54億08百万円、58億30百万円、営業利益が11百万円、3億37百万円、1億36百万円、94百万円だった。15年3月期第4四半期の営業損益悪化は介護事業の連結化も影響した。
16年3月期はアミューズメント施設の店舗数減少および既存店減収、商業施設建築事業の大型施工案件受注時期ズレ込み、アミューズメント施設店舗関連資産の減損損失計上、介護事業休止に伴う減損損失計上、介護事業休止に伴う繰延税金資産取崩、その他法人税等調整額の計上で最終赤字だった。
売上総利益は同5.4%減少し、売上総利益率は14.2%で同0.2ポイント低下した。販管費は同3.5%減少したが、販管費比率は11.7%で同0.1ポイント上昇した。ROEはマイナス11.9%で同16.0ポイント低下、自己資本比率は46.1%で同1.6ポイント低下した。配当は同1円減配の年間1円(期末一括)だった。利益還元については将来必要となる設備投資や投資資金とのバランスを総合的に勘案したうえで、利益還元の充実を図っていくことを基本方針としている。
セグメント別に見ると、総合エンターテインメント事業は売上高が同2.3%減の147億89百万円、営業利益(連結調整前)が同19.7%減の6億93百万円だった。既存店売上は96.6%だった。不動産事業は売上高が同6.1%増の61億92百万円で営業利益が同19.1%増の4億93百万円だった。商業施設建築事業は大型施工案件受注時期ズレ込みで売上高が同56.0%減の7億69百万円、営業利益が同93.2%減の8百万円だった。介護事業(15年3月期第4四半期から連結、15年8月事業休止)は売上高が6億08百万円で営業利益が1億10百万円の赤字、その他は売上高が36百万円で営業利益が10百万円の赤字だった。
■17年3月期第3四半期累計は大幅増益
前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比0.9%増の167億19百万円、営業利益が同28.7%増の6億23百万円、経常利益が同27.6%増の5億36百万円、そして純利益が2億38百万円の黒字(前年同期は4億15百万円の赤字)だった。総合エンターテインメント事業の損益改善、商業施設建築事業における大型案件が牽引して大幅増益だった。
売上総利益は同2.7%減少し、売上総利益率は14.5%で同0.6ポイント低下した。販管費は同10.3%減少し、販管費比率は10.8%で同1.3ポイント低下した。特別利益では固定資産売却益が減少(前期2億08百万円、今期19百万円)し、前期計上の関係会社株式売却益1億54百万円が一巡したが、投資有価証券売却益1億21百万円を計上した。特別損失では投資有価証券評価損2億98百万円を計上したが、減損損失が減少(前期10億72百万円、今期3百万円)した。
セグメント別に見ると、総合エンターテインメント事業は売上高が同7.5%減の103億12百万円で営業利益(連結調整前)が同12.9%増の7億01百万円だった。アミューズメント施設運営部門における既存店売上は94.9%とやや低調だったが、利益面では施設運営に係る費用が想定を下回り、光熱費などのコスト抑制も寄与した。期末総店舗数は47店舗となった。
不動産事業は営業拠点拡大に伴う引き渡し数増加で売上高が同9.0%増の46億96百万円と順調だが、施工人件費高騰の影響などで営業利益が同28.2%減の2億72百万円だった。商業施設建築事業は大型案件の完成工事売上が寄与して売上高が3.4倍の16億67百万円で営業利益が59百万円(前年同期は2百万円の赤字)だった。店舗サブリース事業は売上高が24百万円で営業利益が0.6百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期56億11百万円、第2四半期57億34百万円、第3四半期53億74百万円、営業利益は2億65百万円、3億24百万円、34百万円だった。
■17年3月期通期も大幅増益予想、18年3月期も収益改善基調期待
前期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月10日公表)は、売上高が前々期(16年3月期)比1.8%減の220億円、営業利益が同38.2%増の8億円、経常利益が同37.9%増の7億円、純利益が3億円(前々期は12億53百万円の赤字)としている。介護事業休止による費用減少などで大幅営業・経常増益予想である。また前々期計上した減損損失が一巡して最終黒字化予想である。
配当予想は3月14日に期末2円を1円に減額修正して前々期と同額の年間1円(期末一括)とした。持株会社移行にあたり、M&Aによる機動的な事業再編の実施に向けた内部留保を確保するためとしている。
セグメント別計画は、総合エンターテインメント事業の売上高が同1.5%減の145億70百万円で営業利益(連結調整前)が同19.8%増の8億30百万円、不動産事業と商業施設建築事業の合計の売上高が同4.9%増の73億円で営業利益が同15.8%増の5億80百万円、その他(店舗サブリース)の売上高が1億30百万円、営業利益が20百万円としている。
総合エンターテインメント事業は、50周年記念イベントによる認知度向上、自社開発メダルゲーム機の導入、クレーンゲームジャンルにおけるマシン増台、コラボ店舗のドミナント出店、香港進出による販路拡大などに取り組む。またVRエンターテインメント施設「VR PARK TOKYO」を16年12月オープンした。不動産事業および商業施設建築事業は一戸建分譲部門の事業規模拡大、商業施設建築の大型案件受注に取り組む。一戸建分譲部門の引渡件数は同9件増加の120件の計画としている。また新規事業として業務提携したオリーブスパの店舗サブリース事業も推進する。
アミューズメント施設の月次既存店売上高(前年比、速報値)を見ると、17年3月は88.2%で5ヶ月連続のマイナスだった。全体として集客に苦戦した。17年3月末店舗数は47店舗である。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が76.0%、営業利益が77.9%、経常利益が76.6%、純利益が79.3%と順調である。通期ベースでも収益改善基調が期待される。
なお子会社ブレイクの全株式売却に伴って、関係会社株式売却益として概算1億99百万円を特別利益に計上するが、通期予想に対する影響は算定中としている。また今期(18年3月期)も収益改善基調が期待される。
■中期経営計画で18年3月期ROE8%目標
中期経営計画では目標数値として18年3月期売上高330億円、営業利益17億円、経常利益14億円、純利益9億50百万円、ROE8%を掲げている。さらに20年3月期には売上高410億円、営業利益29億円、経常利益23億円、純利益14億円を目指すとしている。
中期戦略として、総合エンターテインメント事業では自社コンテンツ保有、VRやARなど新たな遊びの活用、20年に向けたインバウンド施策強化、不動産事業・商業建築事業では一戸建分譲部門における自社施工比率の向上と「KEY STYKE」ブランドの確立、新規事業の店舗サブリース事業ではオリーブスパ以外の新規事業会社を対象とする展開も検討する。グループ連携強化も奏功して中期的に収益拡大が期待される。
■株主優待制度は毎年3月末に実施
17年3月期末の株主優待制度は17年3月末日時点の3500株(35単元)以上保有株主を対象として、業務提携先のオリーブスパが首都圏中心に運営するリラクゼーションサロン「OLIVE SPA」および「PANTHEON」の全店舗で利用できるアロマオイルトリートメント120分ボディコース(2万2000円相当分)のサロンチケット2枚を贈呈する。
■株価は売り一巡して反発期待
株価の動きを見ると、2月の年初来高値167円から17年3月期配当予想減額修正を嫌気する形で急反落し、地合い悪化も影響して4月13日、14日、17日の110円まで調整した。その後は売り一巡して下げ渋る形だ。
4月20日の終値114円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS2円20銭で算出)は52倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.9%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS69円08銭で算出)は1.7倍近辺である。時価総額は約159億円である。
週足チャートで見ると一気に52週移動平均線まで割り込んだが、売り一巡して反発展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)