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JPホールディングスは自律調整一巡して戻り試す、18年3月期収益改善期待
- 2017/4/21 06:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JPホールディングス<2749>(東1)は保育所運営の最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。17年3月期は保育士待遇改善を先行して実施するため減益予想だが、待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく、18年3月期は収益改善が期待される。中期的にも収益拡大基調だろう。株価は調整一巡して戻りを試す展開が期待される。
■保育所運営の最大手、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー
総合子育て支援カンパニーの持株会社である。保育所・学童クラブ・児童館などを運営する子育て支援事業(日本保育サービス、四国保育サービス)を主力に、保育所向け給食請負事業(ジェイキッチン)、英語・体操・リトミック教室請負事業(ジェイキャスト)、保育関連用品の物品販売事業(ジェイ・プランニング販売)、研究・研修・コンサルティング事業(日本保育総合研究所)も展開している。
16年3月期末の子育て支援施設数は首都圏中心に、保育所159園(認可園・公設民営10園、認可園・民設民営118園、東京都認証保育所26園、自治体認定保育所1園、その他認可外保育所4園)、学童クラブ55施設、児童館10施設の合計224園・施設(15年3月期比24園・施設増加)である。保育所運営の売上規模で競合他社を大きく引き離す業界最大手である。
16年9月には、横浜市において認可保育所および民間学童施設を運営する相鉄アメニティライフを子会社化した。重点拠点の一つである横浜エリアの事業展開の充実を図る。
17年2月には資生堂<4911>と共同で事業所内保育所運営受託の合弁会社KODOMOLOGY(コドモロジー)(当社出資比率49%)を設立した。事業所内保育所などへの公的補助を認可保育所並みにした「企業主導型保育事業」で、全国の様々な企業からの事業受託を目指す。資生堂掛川工場に事業所内保育所を17年秋に新設し、新会社の受託1号とする予定だ。
■保育士確保に向けて待遇改善を推進
保育士の新規採用については例年、新卒200名程度、中途100名程度を採用している。保育士資格を有する学生を即戦力に近い人材として採用するとともに、別の新規採用枠として保育士資格を持たない新卒を採用するなど、保育士確保に向けて採用手法を工夫している。16年4月には日本保育サービスが学校法人敬心学園日本児童教育専門学校の2名に奨学金支給を開始した。
16年5月には日本保育サービスに勤務する保育士全員の賃金水準を引き上げると発表した。引き上げ幅は年収ベースにして平均4%相当の見込みで、保育士改善費用として17年3月期に3億円を予定している。16年3月期のベースアップ8%に続く2年連続の大幅賃上げとなる。また18年3月期にも賃金水準の引き上げを実施する予定で、社会的に評価される賃金制度の構築を目指すとしている。
3月30日には、日本保育サービスが運営する全国の保育園に、hugmo(ハグモー)の保育クラウドサービス「hugmo」を順次導入すると発表した。保育士の業務負担軽減、保育士と保護者のコミュニケーション強化に向けた取り組みの一環としている。
処遇改善や働きやすい職場環境の整備を進め、17年度はグループ総勢391名の新卒社員、うち保育士は過去最多となる248名(16年度比約26%増)を採用した。2期生となる32名の保育士資格取得コースの新入社員は4月の保育士資格試験合格を目指している。
■期後半に向けて収益拡大する傾向
新規施設の稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大し、補助金の増減や実行時期なども影響する。16年3月期は新規開設や補助金増額などで人件費増加を吸収して15年3月期比2桁増収増益だった。新規開設は保育所17園、学童クラブ12施設、児童館2施設、撤退は保育所3園、児童館1施設で、純増は保育所14園、学童クラブ12施設、児童館1施設だった。新たに名古屋市に参入した。
■17年3月期第3四半期累計は増収減益、保育士待遇改善を先行実施
前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比11.1%増の167億20百万円、営業利益が同30.1%減の7億43百万円、経常利益が同22.3%減の8億83百万円、純利益が同26.2%減の5億14百万円だった。
新規開設も寄与して2桁増収だが、保育士の待遇改善を国に先行して実施したため減益だった。新規開設は保育所13園、学童クラブ7施設、児童館3施設、民間学童クラブ1施設で、16年9月末時点の子育て支援施設(16年9月末子会社化したアメニティライフ含む)は合計250施設(保育園172園、学童クラブ62施設、児童館12施設、民間学童クラブ4施設)となった。
売上総利益は同6.6%増加したが、売上総利益率は15.3%で同0.7ポイント低下した。販管費は同35.8%増加し、販管費比率は10.8%で同1.9ポイント上昇した。営業外収益では補助金収入が増加(前期45百万円、今期65百万円)した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期54億24百万円、第2四半期55億49百万円、第3四半期57億47百万円、営業利益は99百万円、2億52百万円、3億92百万円だった。
■17年3月期通期減益予想、18年3月期は収益改善期待
前期(17年3月期)通期の連結業績予想(2月2日に売上高を増額、利益を減額修正)は、売上高が前期(16年3月期)比10.6%増の227億26百万円、営業利益が同42.6%減の10億53百万円、経常利益が同34.4%減の12億35百万円、純利益が同57.9%減の5億03百万円としている。
新規開設も寄与して期初計画を上回る増収だが、国の政策に先駆けて賃金大幅引き上げなど保育士の待遇改善を実施し、人件費の増加が計画を上回る。また地方の施設を中心に、継続して収益性が悪化している施設に関して第4四半期(1~3月)に減損損失を計上する。
配当予想(2月2日に減額修正)は年間2円(期末一括)としている。前期比3円減配で予想配当性向は33.4%となる。利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。
■中期経営計画で保育士待遇改善、新学童クラブ、海外展開などを推進
新中期経営計画では重点目標として、安全対策の強化および保育の質のさらなる向上、新規開設および既存施設の保育士増員による受入児童数の拡大、人材投資の拡大(採用活動強化、人材育成強化、人事評価制度見直し)、経営管理体制の再整備(事業リスク管理体制強化、グループ会社連携強化)、収益基盤拡大に向けた新規事業への着手(民間児童クラブ、既存サービスの拡販、海外展開)を掲げている。
重点目標の実現に向けた諸施策は、安全管理体制のさらなる強化(専門部署を創設して組織横断的な体制強化を推進)、従業員給与の引き上げ(15年度保育士の給与引き上げ8%実績、16年度引き上げ4%予定)、各分野におけるシステム導入(業務負担の軽減、経営管理の効率化)、保育士確保に向けた施策のさらなる充実(求人費予算の増額)としている。
認可園以外の新規分野への事業展開では、グループ総合力を活かし、英会話・体操・音楽などを導入して料金設定の面で自由度が高い「公的ではない新学童クラブ」などによる幼児教育、英会話プログラムなどの外販、他社既存保育園の給食請負受託などを推進する方針だ。M&Aの活用も検討するようだ。
新たな目標数値は17年3月期売上高223億円、経常利益16億円、保育所開設13園、学童クラブ・児童館開設10施設、18年3月期売上高240億円、経常利益19億円、保育所開設11園、学童クラブ・児童館開設7施設とした。また上記とは別に、東京都認証保育所から認可保育所への移行(移転新設含む)が17年3月期2園、18年3月期2園、民間学童クラブの開設が17年3月期2施設の予定としている。
16年9月には東京都文京区湯島に、補助金を申請しない新タイプの学童クラブ「AEL(アエル)湯島」をオープンした。17年4月には第2号施設「AEL横浜ビジネスパーク」をオープン予定である。
海外はベトナムで幼稚園事業を本格展開する方針を打ち出している。現地で急増している中間層の共働き世帯をターゲットに幼稚園事業を展開する。現地でスタッフを採用して17年3月期中に1~2ヶ所の開設を目指す。当面は現地企業と合弁会社を設立し、認可外幼稚園として展開する。将来的には100%出資の現地法人で、公的幼稚園として日本国内と同規模の展開を目指すとしている。
■待機児童解消政策が追い風で中期的に収益拡大基調
都市部を中心に保育サービスの需要は高水準であり、社会問題化した待機児童解消政策論議が活発化し、保育士待遇改善、保育所運営補助金拡大、各種規制緩和などの政策が進展する見込みだ。国や東京都の待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく、中期的に収益拡大が期待される。
■株価は自律調整一巡して戻り試す
株価の動きを見ると、3月21日の年初来高値334円から利益確定売りで一旦反落したが、260円~270円近辺から切り返しの動きを強めている。自律調整が一巡したようだ。
4月20日の終値280円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS5円99銭で算出)は47倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間配当2円で算出)は0.7%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS78円68銭で算出)は3.6倍近辺である。時価総額は約246億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。調整一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)