カナモトは調整一巡して上値試す、17年10月期増益・連続増配予想

 カナモト<9678>(東1)は北海道を地盤とする建設機械レンタル大手である。需要堅調で17年10月期増収増益・連続増配予想である。中期的にも災害復旧・復興、国土強靭化、20年東京五輪関連など事業環境は良好で在り、さらに長期ビジョンでは海外展開を成長エンジンと位置付けている。株価は調整一巡し、好業績を評価して上値を試す展開が期待される。

■建設機械レンタルの大手

 建設機械レンタルを主力として、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタルなども展開している。M&Aも活用し、北海道を地盤として全国展開と業容拡大を加速している。

 17年3月には北海道地区日胆ブロック14店舗目となる日高機械センターを新設した。これにより全国営業拠点数は185拠点、グループ合計で462拠点となった。

■M&Aを積極活用

 M&Aを積極活用して業容を拡大している。12年6月道路建機レンタルと道路工事施工のユナイトを子会社化、15年7月大手ゼネコン向け汎用小型建設機械レンタルの有限会社ヱーワ商会(埼玉県)の全株式を取得(非連結子会社)した。15年11月には名岐エンジニアリング(岐阜県)および東友エンジニアリング(東京都)で構成されるグループと、一部株式取得を含めて建設機械レンタル事業に関して業務提携した。

 16年3月にはニシケン(福岡県)を子会社化(出資比率76.62%)した。同社は建設機械レンタル事業ならびに福祉介護用品レンタル事業を福岡県中心に九州各県や中国・近畿地方に展開している。また16年5月にはサッポロドラッグストアー<2786>と共同で、建設現場事務所で使用される日用品セットを販売すると発表した。北海道内でのサービスとしてスタートするが、将来的には全国規模でのサービス拡充を計画している。

■17年10月期ROE10%以上目標、成長エンジンとして海外展開強化

 14年9月策定の新長期ビジョンおよび中期経営計画では、55期の19年を見据えたグループの目指す姿を新長期ビジョン「BULL55」として示し、実行計画である3ヵ年中期経営計画「BULL53」では目標数値として17年10月期売上高1500億円、営業利益190億円、ROA5.0%以上、ROE10%以上などを掲げた。

 新長期ビジョン「BULL55」では海外展開強化を今後の成長エンジンと位置付けている。そして15年1月インドネシア現地法人が営業開始、15年6月ベトナム現地パートナー企業との合弁会社が営業開始、15年7月タイ現地パートナー企業との合弁会社が営業開始、16年3月フィリピン現地パートナー企業との合弁会社が営業開始した。

■公共工事が増加する第1四半期および第4四半期の構成比が高い季節要因

 四半期別業績推移を見ると、15年10月期は売上高が第1四半期363億27百万円、第2四半期319億80百万円、第3四半期306億49百万円、第4四半期343億36百万円で、営業利益が63億06百万円、43億46百万円、18億46百万円、37億72百万円だった。16年10月期は売上高が350億79百万円、333億83百万円、347億80百万円、414億48百万円で、営業利益が40億69百万円、45億36百万円、19億71百万円、45億58百万円だった。

 16年10月期第2四半期からニシケンを新規連結した。公共工事が増加する第1四半期および第4四半期の構成比が高い季節要因がある。

 16年10月期の連結業績は、売上高が15年10月期比8.7%増の1448億70百万円だったが、営業利益が同7.0%減の151億34百万円、経常利益が同10.9%減の144億05百万円、純利益が同15.3%減の80億98百万円だった。

 地方における公共投資減少の影響を受けたが、災害復興関連や東京五輪関連の建設需要が堅調に推移し、首都圏における拠点拡充・営業強化策や16年3月子会社化したニシケンの新規連結(7ヶ月分)も寄与して増収だった。ただし利益面では、レンタル用資産への投資増強に伴う減価償却費の増加で減益だった。

 売上総利益は同5.2%増加したが、売上総利益率は30.1%で同1.0ポイント低下した。販管費は同13.1%増加し、販管費比率は19.6%で同0.7ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前々期は差益96百万円、前期は差損4億93百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益3億07百万円が一巡した。なおROEは11.1%で同3.3ポイント低下、自己資本比率は34.7%で同0.4ポイント上昇した。

 セグメント別動向を見ると、建設関連は売上高が同6.2%増の1312億08百万円、営業利益(連結調整前)が同9.8%減の140億57百万円だった。地域別売上高は北海道0.5%減収、東北2.6%増収、関東甲信越6.1%増収、関西中部1.1%減収、九州沖縄89.9%増収だった。東北や首都圏が堅調に推移し、ニシケンの新規連結によって九州沖縄が大幅増収だった。中古建機販売は計画的な売却で4.1%減少した。その他は売上高が同40.6%増の136億62百万円、営業利益が同2.2倍の6億60百万円だった。新規連結したニシケンの福祉関連事業が寄与した。

 配当は同10円増配の年間45円(第2四半期末15円、期末30円)で配当性向は19.6%だった。配当政策については事業環境に関わらず一定の配当を安定して行い、業績に応じて利益還元を加えていきたいとしている。そのうえで、財務体質の強化と将来の積極的事業展開に必要な内部留保の充実を図ることを基本方針としている。

■17年10月期第1四半期は2桁増収増益

 今期(17年10月期)第1四半期(11~1月)の連結業績は、売上高が前年同期比11.0%増の389億37百万円、営業利益が同10.3%増の44億90百万円、経常利益が同19.3%増の48億48百万円、純利益が同23.5%増の31億28百万円だった。

 民間投資の継続に加えて、公共投資も政府の経済政策を背景として堅調に推移した。売上総利益は同17.8%増加し、売上総利益率は31.2%で同1.8ポイント上昇した。販管費は同22.7%増加し、販管費比率は19.6%で同1.8ポイント上昇した。営業外収益では為替差益2億04百万円を計上した。

 セグメント別動向を見ると、建設関連は売上高が同9.2%増の355億38百万円で営業利益(連結調整前)が同4.4%増の40億70百万円だった。東京五輪に向けたインフラ再整備などで首都圏が堅調に推移し、ニシケンの新規連結によって九州地区の売上高・利益とも大幅伸長した。中古建機販売は災害復旧に対応するため第2四半期(2~4月)以降に先送りしたことから56.2%減少した。その他は売上高が同33.8%増の33億99百万円で営業利益が同4.7倍の3億17百万円だった。新規連結したニシケンの福祉関連事業が寄与した。

■17年10月期増収増益・連続増配予想

 今期(17年10月期)通期連結業績予想(12月9日公表)は、売上高が前期(16年10月期)比5.6%増の1530億円、営業利益が同4.5%増の158億20百万円、経常利益が同8.2%増の155億80百万円、純利益が同16.8%増の94億60百万円としている。配当予想については同5円増配の年間50円(第2四半期末15円、期末35円)としている。連続増配で予想配当性向は18.7%となる。

 北海道の新幹線延伸工事や豪雨災害復旧・復興工事、東北地方の震災復興工事、首都圏での20年東京五輪に向けたインフラ関連工事、その他民間の首都圏再開発プロジェクト、熊本をはじめとする各地での地震災害に対する復旧・復興工事などで建設機械レンタル需要が堅調に推移する。また首都圏等の大都市圏や関東以西の未出店エリアへの拠点展開で国内営業基盤の拡充・拡大を図る。海外も現地パートナー企業との連携で拠点拡充を積極推進する。ニシケンの通期連結も寄与して増収基調に変化はなく、減価償却負担を吸収して増益予想だ。

 なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が25.4%、営業利益が28.4%、経常利益が31.1%、純利益が33.1%である。公共工事が増加する第1四半期および第4四半期の構成比が高い季節要因があることを考慮しても順調な水準と言えるだろう。通期ベースでも好業績が期待される。

■中期的に事業環境良好

 国内では震災復興関連工事、激甚災害現場復旧工事、防災・減災・耐震化関連工事、老朽化インフラ補修・更新関連工事、都市再開発関連工事などが活発であり、リニア新幹線関連工事や20年東京夏季五輪関連工事も本格化する。中期的に良好な事業環境に変化はなく、建設機械レンタル需要は高水準で推移することが予想される。また16年12月合意の日ロ共同経済活動が具体化すれば、北海道を地盤とする当社にとってもビジネスチャンスが期待される。

■株価は調整一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、地合い悪化が影響した4月17日の直近安値2693円から切り返しの動きを強めている。4月28日には3070円まで上伸し、3月の戻り高値3250円、そして1月の年初来高値3270円に接近している。

 5月1日の終値3020円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS267円69銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2169円93銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約1090億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を回復した。調整が一巡し、好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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