三洋貿易は17年9月期業績・配当予想の増額修正を好感して上場来高値更新の展開

 三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。M&Aも積極活用して業容拡大戦略・グローバル展開を推進している。4月25日発表の17年9月期業績・配当予想の増額修正を好感し、株価は上場来高値更新の展開となった。通期予想には再増額余地があり、上値を試す展開が期待される。

■自動車業界向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社

 ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開する専門商社である。メーカー並みの技術サポート力に加えて、財務面で実質無借金経営であることも特徴だ。

 16年9月期セグメント別(連結調整前)売上高構成比は、化成品41%、機械資材32%、海外現地法人18%、国内子会社9%、その他0%で、営業利益構成比は化成品28%、機械資材49%、海外現地法人8%、国内子会社13%、その他3%だった。

 業界別売上構成(単体ベース)で見ると、自動車が過半を占め、OA・家電、塗料・インキ、その他化学などが続いている。自動車関連は各種合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーターはカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポートは世界市場6割を占有している。

 飼料・エネルギー・リサイクル関連では飼料や固定燃料などを製造するペレットミルが高シェアだ。国内子会社のコスモス商事は地熱・海洋資源開発関連分野で掘削用機材の輸入販売・レンタルを手掛けている。

■M&Aも活用して業容拡大戦略・グローバル展開を推進

 グループとして重点志向する事業領域への経営資源集中を進めるとともに、国内外でM&Aも活用して業容拡大戦略・グローバル展開を推進している。15年3月エレクトロニクス関連商品卸売の連結子会社アロマンの株式をタクミ商事に譲渡、15年9月連結子会社ケムインターが工業用洗剤輸入販売のコムスタージャパンを子会社化、16年2月工業化学薬品輸入販売のソートを子会社化した。

 16年6月洸陽電機と業務提携した。小型高効率の独ブルクハルト社製木質バイオマスコージェネレーション(熱電併給)システムの販売拡大で提携し、17年9月期に2社共同事業による合計売上高50億円を見込んでいる。16年7月には医療機器開発・製造販売や医療機器・理科学機器の輸入販売を手掛ける日本ルフトを子会社化した。17年2月には子会社の三洋テクノスが、老舗のマイクロポンプ専業メーカーである古江サイエンスを子会社化した。

 海外は米国、メキシコ、タイ、中国(上海、香港)、インド、ベトナム、インドネシアに展開している。15年7月シンガポールの工業用フィルム販社BPS社を子会社化(シンガポール三洋貿易に社名変更)し、15年10月タイに子会社Sanyo Trading(Thailand)を設立した。

 17年3月には独デュッセルドルフに駐在員事務所を設立した。欧州諸国の優れた自動車部品メーカーの開拓を進め、高付加価値の新商品開発に注力するとともに、グローバルネットワークの拡充も図る方針だ。

■3月決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別の業績推移を見ると、15年9月期は売上高が第1四半期153億86百万円、第2四半期156億16百万円、第3四半期156億82百万円、第4四半期139億88百万円、営業利益が9億82百万円、10億54百万円、10億68百万円、5億02百万円、経常利益が11億48百万円、10億47百万円、12億09百万円、7億06百万円、16年9月期は売上高が163億87百万円、149億46百万円、137億18百万円、148億57百万円、営業利益が13億11百万円、9億94百万円、7億35百万円、10億12百万円、経常利益が13億90百万円、9億86百万円、7億90百万円、11億08百万円だった。

 設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高くなりやすい収益構造である。

 16年9月期の連結業績は15年9月期比1.3%減収、12.4%営業増益、4.0%経常増益、1.3%最終減益だった。円高や新興国経済減速の影響で減収だったが、営業利益はほぼ計画水準の増益で着地した。純利益はアロマン株式譲渡に伴う税負担減少効果一巡が影響した。

 売上総利益は同6.0%増加し、売上総利益率は16.7%で同1.1ポイント上昇した。販管費は同2.1%増加し、販管費比率は10.0%で同0.4ポイント上昇した。営業外では為替差益が減少(15年9月期3億32百万円、16年9月期98百万円)した。ROEは14.1%で同1.8ポイント低下し、自己資本比率は62.7%で同0.6ポイント上昇した。配当は年間49円(第2四半期末23円、期末26円)で配当性向は25.4%だった。配当の基本方針は連結配当性向25%を下限の目途としている。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、化成品は売上高が同3.8%増の244億83百万円で営業利益が同14.4%増の12億63百万円だった。自動車向けを中心に合成ゴムや副資材が堅調で、子会社化したソートも寄与した。機械資材は売上高が同8.0%増の191億04百万円で営業利益が同12.7%増の22億11百万円だった。産業資材関連で自動車内装用部品やシート用高機能性部品・原材料が伸長した。機械・環境関連では飼料・肥料用ペレットミルが堅調に推移した。バイオマス関連では熱電併給設備の大型案件を受注した。

 海外現地法人は円高による為替換算の影響で売上高が同13.0%減の107億51百万円、営業利益が同27.0%減の3億66百万円だった。SCOA(米国)および三洋物産貿易(上海)はゴム・自動車用部品が堅調だったが、San-Thap(タイ)ではタイパーツ安による輸入品の採算悪化が影響した。国内子会社は売上高が同22.0%減の52億94百万円、営業利益が同8.1%減の5億85百万円だった。コスモス商事は地熱関連が堅調だったが、ケムインターは韓国経済低迷や円高の影響で化学品が低調だった。

■17年9月期第1四半期は増収増益

 今期(17年9月期)第1四半期(10~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.4%増の167億84百万円、営業利益が同0.5%増の13億18百万円、経常利益が同6.0%増の14億74百万円、純利益が同4.9%増の9億円だった。

 売上総利益は同9.6%増加し、売上総利益率は18.0%で同1.2ポイント上昇した。販管費は同17.8%増加し、販管費比率は10.1%で同1.3ポイント上昇した。営業外では為替差益が増加(前期54百万円、今期1億37百万円)した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、化成品は売上高が同16.3%増の67億80百万円で営業利益が同61.5%増の4億69百万円だった。ゴム関連製品で自動車や家電・情報機器向けの合成ゴムや副資材が特に好調だった。前期連結子会社化したソートも寄与した。機械資材は売上高が同0.9%減の51億98百万円で営業利益が同11.9%減の5億94百万円だった。産業資材関連はシート用部品など自動車内装用部品が引き続き好調だが、前年同期比では減収だった。機械・環境関連ではバイオマス関連設備を納入した。

 海外現地法人は売上高が同10.8%増の36億27百万円となり、営業利益が同2.4倍の2億18百万円だった。SCOA(米国)は自動車用部品、三洋物産貿易(上海)は接着剤、San-Thap(タイ)は自動車内装用部品が好調だった。国内子会社は売上高が同42.6%減の11億33百万円で営業利益が同55.4%減の1億45百万円だった。コスモス商事は前期の海洋・船舶の大型案件が一巡し、ケムインターは韓国経済低迷の影響で低調だった。

■17年9月期業績・配当予想を増額修正、通期は再増額余地

 4月25日に今期(17年9月期)第2四半期累計(10月~3月)と通期の連結業績予想、および配当予想の増額修正を発表した。

 第2四半期累計の連結業績予想は前回予想(11月8日公表)に対して、売上高を28億円増額して前年同期比7.9%増の338億円、営業利益を10億20百万円増額して同22.3%増の28億20百万円、経常利益を10億20百万円増額して同25.0%増の29億70百万円、純利益を6億40百万円増額して同28.4%増の18億90百万円とした。ゴム関連商材、自動車部品、機械資材関連商材が好調に推移し、第2四半期累計は減収減益予想から一転して増収増益予想となった。

 通期の連結業績予想は、前回予想(11月8日公表)に対して、売上高は据え置いて前期(16年9月期)比11.8%増の670億円だが、営業利益を6億円増額して同18.5%増の48億円、経常利益を6億円増額して同15.8%増の49億50百万円、純利益を4億10百万円増額して同16.1%増の32億円とした。上期の増額幅に比べて下期の期初計画を減額した形となるが、需要が堅調に推移して通期ベースの増益幅が拡大する見込みだ。

 修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が50.4%、営業利益が58.8%、経常利益が60.0%、純利益が59.1%となる。設備投資関連商材を含むため3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高くなりやすい収益構造を考慮しても、円安もプラス要因となって通期予想には再増額余地がありそうだ。

 配当予想は、第2四半期末に5円増額、期末に3円増額、合計8円増額して年間58円(第2四半期末28円、期末30円)とした。16年9月期の年間49円との比較では9円増配となる。予想配当性向は25.9%となる。

■長期ビジョンで20年9月期までにROE15%以上目指す

 15年11月策定の16年9月期~17年9月期2カ年中期経営計画では、目標数値に17年9月期売上高670億円、経常利益44億50百万円を掲げている。

 重点戦略は(1)コアビジネスの収益の強化と安定化、(2)新規事業は地熱・海洋資源開発機材など資源エネルギー分野、木質バイオマス機材など環境関連分野、医薬中間体・医療用原材料・バイオなどライフサイエンス分野へ展開、(3)グローバル展開(自動車産業を中心に日系企業の進出が続くアセアン+インド、中国、北中米に主軸)、(4)投資案件への積極的取り組み(既存事業との相乗効果、成長性、グローバル展開を目指すM&A含む投資案件)、(5)マンパワーの強化と人材育成とした。

 そして15年10月1日~20年9月30日の5年間長期ビジョン「VISION2020」では、目標数値に20年9月期までに経常利益50億円、ROE15%以上、自己資本比率50%以上を掲げている。

 基本方針は(1)盤石な財務基盤、(2)強みを通じた価値創造、(3)自由闊達な社風と機会創出の組織として、6つの戦略に、戦略A:既存ビジネスの深化、戦略B:ビジネスポートフォリオの明確化、戦略C:新規ビジネスのプロジェクト立ち上げ、戦略D:グローバル展開の加速、戦略E:新規投資案件の推進、戦略F:国内外の組織の強化を掲げた。

 戦略Cの新規プロジェクト立ち上げでは、20年までに具現化可能な新規ビジネスとして、地熱・海底資源開発関連機材、医薬中間体・原体、特殊フィルムの海外展開、木質バイオマス・ガス化発電関連機材を推進する。

 戦略Eの新規投資案件では、新規投資目標を5件以上として、会社方針に符合する案件にM&A・商権譲渡・資本参加・JV設立などの形で積極投資を行う。戦略Fの国内外の組織の強化では、グローバル化に対応すべく約260人のグループ社員を20年には300人以上に増強する方針だ。

 4月25日の増額修正で利益目標は大幅超過達成の見込みとなった。中期的にも収益拡大基調が期待される。

■株価は増額修正好感して上場来高値更新の展開

 株価の動きを見ると、3月高値1918円から利益確定売りで反落して調整局面だったが、4月25日発表の17年9月期業績・配当予想の増額修正を好感し、4月27日の2115円まで急伸して上場来高値更新の展開となった。

 5月2日の終値2070円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS223円64銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間58円で算出)は2.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1422円34銭で算出)は1.5倍近辺である。なお時価総額は約300億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するプラス乖離率が10%を超えて目先的には過熱感もあるが、週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返して強基調に回帰した形だ。通期予想には再増額余地があり、目先的な過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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