アーバネットコーポレーションは17年6月期利益予想と配当予想の増額修正を好感して年初来高値に接近

 アーバネットコーポレーション<3242>(JQ)は、東京23区中心に投資用・分譲用マンション開発・販売事業を展開している。17年6月期利益予想と配当予想の増額修正を好感して、株価は3月の年初来高値に接近している。4%台の高配当利回りも注目点であり、上値を試す展開が期待される。

■東京23区中心に投資用マンション開発・販売

 東京23区中心に投資用・分譲用マンション開発・販売事業を展開している。徹底したアウトソーシングで固定費を極小化していることが特徴である。16年6月期末の役職員総数は50名で15年6月期末比7名増加、16年6月期の販管費比率は7.4%で同0.4ポイント低下した。

 15年7月連結子会社アーバネットリビングが操業した。当社は投資用ワンルームマンション開発・1棟販売や分譲マンション開発などBtoB卸売、アーバネットリビングは当社開発物件の戸別販売、他社物件の買取再販、マンション管理・賃貸などBtoC小売を基本事業とする。

 自社開発物件ブランドは、ワンルームマンションの「アジールコート」、コンパクトマンションの「アジールコフレ」、ファミリーマンションの「グランアジール」、戸建住宅の「アジールヴィラ」である。

■開発物件の分野を拡大

 16年3月には、最近の東京23区における事業用地購入の環境、ならびに将来の不動産市場の環境を考慮し、これらへの積極対応として開発物件の分野拡大を発表した。

 当社グループが展開している開発地域(東京23区駅10分以内に特化)の事業用地については、都心への人口流入や開発の一極集中による価格上昇もあり、優良事業用地の確保が難しい状況となっている。こうした環境に対応するため、従来は投資用ワンルームマンション用地として取得しなかった狭小用地についても、アパートや戸建住宅として開発する。川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策に加えて、開発物件分野拡大による業績の向上を目指す方針だ。

■海外投資家への直接販売強化

 投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化も推進している。

 14年7月売買契約締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」が海外投資家への直接販売第一弾となり、14年11月投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」の売買契約を締結、15年2月投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」店舗1戸の売買契約を締結した。15年10月には投資用ワンルームマンション「アジールコート麻布十番」(仮称、16年12月末竣工予定、56戸うち店舗1戸)について、東急リバブルソリューションン事業本部の仲介で海外法人との売買契約が成立した。

 15年12月投資用ワンルームマンション「錦糸町IVPJ」(仮称、16年6月竣工、96戸)について国内法人への1棟販売が確定した。売上計上は17年6月期予定で信託受益権売買としている。16年1月には投資用ワンルームマンション「芝公園PJ」(仮称、16年12月竣工予定、56戸)売却が確定した。国内個人投資家への1棟販売で売上計上は17年6月期予定である。

 16年4月には台湾投資家への当社の浸透を図ることを目的として、アンビシャス・コンサルタント・インターナショナル(台湾台北市)が台湾在住の投資家を対象に日本の不動産を紹介する拠点として開設する「M.I.J.サロン」(台北市)に当社常設ブースを設置した。

■物件売上計上で四半期業績が変動する収益構造

 四半期別業績推移を見ると、15年6月期の売上高は第1四半期(非連結)29億47百万円、第2四半期(非連結)18億84百万円、第3四半期(連結)53億91百万円、第4四半期(連結)16億88百万円、営業利益は3億63百万円、1億33百万円、9億51百万円、2億05百万円で、16年6月期の売上高は17億55百万円、61億04百万円、32億円、66億45百万円、営業利益は93百万円、8億21百万円、1億64百万円、9億27百万円だった。物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造である。また固定費比率が低いため、利益の出やすい収益構造である。

 16年6月期連結業績は15年6月期比48.6%増収、21.3%営業増益、23.3%経常増益、30.5%最終増益だった。事業別売上高は不動産開発販売が同35.0%増の157億55百万円、不動産仕入販売が17億76百万円(前々期は96百万円)、その他が同20.6%増の1億72百万円だった。なお15年7月操業の連結子会社アーバネットリビングは黒字だった。

 自社開発物件は前々期からの繰越物件2棟・107戸を含む投資用ワンルームマンション15棟・658戸(前々期は投資用ワンルームマンション11棟・507戸およびコンパクトマンション1棟・47戸)と分譲戸建物件4棟の合計662戸を売上計上した。さらに用地転売2物件、他社物件買取再販1棟・30戸と戸別7戸を売上計上した。自社開発投資用ワンルームマンションのうち2棟・67戸が海外法人、1棟・41戸が国内法人への一括販売だった。また前々期取得したアリシアコート八丁畷(32戸)に続き、自社開発物件であるアジールコート品川中延(64戸)およびアリシアコート多摩川(19戸)を自社保有収益物件として取得した。

 売上総利益は同28.4%増加したが、売上総利益率は18.7%で同3.0ポイント低下した。粗利益率の低い土地転売や買取再販の大幅増収が影響した。販管費は同41.1%増加したが、販管費比率は7.4%で同0.4ポイント低下した。増収効果で販管費増加を吸収した。ROEは20.8%で同0.3ポイント低下、自己資本比率は30.9%で同1.7ポイント低下した。営業外費用では支払手数料が減少(前々期83百万円、前期59百万円)したが、投資有価証券売却損31百万円を計上した。

 配当は同3円増配の年間16円(第2四半期末7円、期末9円)で、配当性向は35.1%だった。配当性向についての基本方針は、従来は当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の30%を配当するとしていたが、16年6月期より当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の35%を配当するとした。

■17年6月期第2四半期累計大幅増収増益

 今期(17年6月期)第2四半期累計(7~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比36.0%増の106億90百万円で、営業利益が同92.6%増の17億61百万円、経常利益が同2.2倍の16億32百万円、純利益が同2.3倍の11億17百万円だった。

 不動産開発販売で、自社開発投資用ワンルームマンション6棟・285戸(前期からの繰越物件1棟・14戸および店舗1戸を含む)および用地転売1物件、不動産仕入販売で買取再販物件3戸を売上計上した。自社開発投資用ワンルームマンション6棟のうち4棟が国内外法人への一括販売だった。

 売上総利益は同68.6%増加し、売上総利益率は24.0%で同4.6ポイント上昇した。販管費は同32.4%増加したが、販管費比率は7.5%で同0.2ポイント低下した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期39億91百万円、第2四半期66億99百万円、営業利益は5億46百万円、12億15百万円だった。

■17年6月期通期利益予想と配当予想を増額修正

 4月20日に今期(17年6月期)通期の連結業績予想と配当予想の修正を発表した。

 今期(17年6月期)通期の連結業績予想は、前回予想(8月9日公表)に対して、売上高を2億70百万円減額して前期(16年6月期)比0.1%増の177億30百万円、営業利益を50百万円増額して同17.2%増の23億50百万円、経常利益を1億70百万円増額して同20.3%増の20億70百万円、純利益を1億30百万円増額して同22.9%増の14億円とした。

 第2四半期累計時点で進捗率が高水準だったが、未契約だった物件の国内法人への1棟売却契約が締結され、通期連結業績予想を精査した結果、売上高を若干減額したが、各利益は前回予想を上回り、増益幅が拡大する見込みとなった。国内外法人ならびに個人への一括直接販売が増加して売上総利益率が上昇傾向である。

 配当予想は期末2円増額して年間20円(第2四半期末9円、期末11円)とした。16年6月期との比較では4円増配となる。予想配当性向は35.8%となる。

 なお売上計上の計画は、自社開発投資用ワンルームマンション12棟・587戸を含む合計599戸(16年6月期の分譲戸建4棟含む合計662戸に対して63戸減少)および買取再販1戸、土地転売1物件としていた。当初は15棟・713戸を予定していたが、うち2物件(62戸)が工期長期化で18年6月期の売上計上に後ズレし、1物件(52戸)を自社保有収益物件とすることにした。12棟のうち4棟が国内外法人ならびに個人への一括直接販売である。

 低金利継続や相続税対策による不動産投資見直しなどを背景に、海外投資家も加わって投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。

■株価は3月の年初来高値に接近、4%台の高配当利回りも注目点

 株価の動きを見ると、17年6月期利益予想と配当予想の増額修正を好感して、4月28日には426円まで上伸した。そして3月の年初来高値440円に接近している。

 5月8日の終値422円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS55円88銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は4.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS234円60銭で算出)は1.8倍近辺である。時価総額は約106億円である。

 週足チャートで見ると、26週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。依然として4%台の高配当利回りも注目点であり、上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る