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PALTEKは17年12月期第1四半期大幅増益、通期予想を増額修正
- 2017/5/11 06:25
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
PALTEK<7587>(東2)はFPGAを主力とする半導体輸入商社で、受託設計・開発のデザインサービス事業や新規分野のスマートエネルギー事業も強化している。17年12月期第1四半期は円安も寄与して大幅増益だった。そして第2四半期累計および通期予想を増額修正した。これを好感して株価は年初来高値を更新した。上値を試す展開が期待される。本日は、1040円の高値をつけて、15年7月高値1009円を突破した。04年来の高値圏となっている。
■FPGAなどの半導体事業が主力
ザイリンクス社のFPGA(PLDの一種で設計者が手元で変更を行いながら論理回路をプログラミングできるLSI)を主力として、特定用途IC、汎用IC、アナログ、メモリなどを扱う半導体事業、試作ボードや量産ボードなどを受託設計・開発・製造(ODM、EMS、OEM)するデザインサービス事業、新規分野としてスマートエネルギー事業(病院・介護施設向け停電対策システム)を展開している。海外は香港に拠点展開している。
16年12月期売上構成比は半導体事業94.6%(FPGA36.0%、特定用途IC16.6%、汎用IC10.3%、アナログ7.6%、メモリ24.2%)、デザインサービス事業5.0%、その他0.4%だった。
主要仕入先は、FPGAがザイリンクス社、汎用ICがNXPセミコンダクターズ社、マイクロチップテクノロジー社、アナログがリニアテクノロジー社、メモリがマイクロンテクノロジー社である。用途別には産業機器向けを主力としてFA機器、通信機器、放送機器、医療機器、車載機器向けなどに展開し、センサ分野ソリューションも強化している。主要販売先はNEC<6701>、京セラ<6971>、オリンパス<7733>などである。
■M&A・アライアンスも活用して事業領域拡大
M&A・アライアンスも活用して事業領域を拡大している。12年7月レート制御機能搭載「H.264コーデック装置」を開発しているエクスプローラを子会社化した。14年6月子会社テクノロジー・イノベーションを設立し、サイミックス社から半導体事業およびMEMS(微小電気機械システム)事業を譲り受けた。
15年2月超高精度衛星測位システムを開発するマゼランシステムズジャパンと総販売代理店契約を締結した。産業機器や農業機械の自動運転向けなどにRTK(リアルタイム・キネマティック)GNSSシステムを提供する。15年5月米フリアーシステムズ社の赤外線カメラに関するセンサ製品の販売を開始した。検査機器、防災機器、セキュリティ用監視カメラなどの分野で赤外線カメラに関するソリューションを提供する。15年8月米IHS社と販売代理店契約を締結した。同社はデータ分析と予測サービスを提供し、世界150ヶ国の企業と政府機関の意思決定と戦略策定を支援している。
16年2月沖電気工業<6703>とIoT市場向けに920MHz帯の無線通信製品に対する販売パートナー契約を締結した。またIoT市場向けにゲートウェイを提供するロバステル社(中国)と販売代理店契約を締結した。16年4月米フリアーシステムズ社の高度道路交通システム(ITS)市場向け赤外線製品の販売を開始した。
16年10月には、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコム(東京都)のパートナープログラムである「SORACOM パートナースペース(SPS)」における「SPS認定済デバイスパートナー」に認定された。産業用途のIoTプラットフォームにおいて連携を強化する。
17年3月には、IoTクラウドプラットフォームを提供するUPR、IoT向けデータ通信サービスを提供するソラコムと連携し、インダストリアルIoTソリューションパッケージの販売を開始すると発表した。また企業向けビデオソリューションのマーケットリーダーであるカナダのHaivision社との販売代理店契約締結を発表した。
さらに17年3月には、産業用コンピュータモジュールの専業メーカーである独congatec社との販売代理店契約締結を発表している。IoT、医療機器、ロボット、FA市場向けにCPUモジュールの提供を開始する。
■仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動する収益特性
四半期別の業績推移を見ると、15年12月期は売上高が第1四半期65億08百万円、第2四半期68億円、第3四半期73億34百万円、第4四半期81億99百万円、営業利益が4億59百万円、2億88百万円、2億20百万円、3億94百万円、16年12月期は売上高が94億31百万円、78億55百万円、76億58百万円、86億円、営業利益が1億26百万円、30百万円の赤字、90百万円の赤字、5億09百万円だった。
一部の主要仕入先に対して保有する仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動し、売上総利益の増減に影響を与える収益特性がある。ドル高・円安は売上総利益押し上げ要因、ドル安・円高は売上総利益押し下げ要因となる。為替影響は15年12月期が4億31百万円の売上総利益増加要因、16年12月期が5億30百万円の売上総利益減少要因となった。
16年12月期は15年12月期比16.3%増収、同62.1%営業減益、同90.3%経常減益、同98.3%最終減益だった。半導体事業の需要が高水準で大幅増収だが、ドル安・円高で仕入値引きドル建て債権評価額が減少して売上総利益を押し下げた。
事業別売上高は、半導体事業が同16.5%増の317億46百万円(FPGAが同10.0%減の120億66百万円、特定用途ICが同5.6%減の55億72百万円、汎用ICが同3.9%減の34億50百万円、アナログが同23.8%増の25億51百万円、メモリが同3.5倍の81億05百万円)で、デザインサービスが同21.7%増の16億49百万円、その他が同35.7%減の1億49百万円だった。
半導体事業の用途別売上高は、産業機器向けが同4.6%減の144億85百万円、通信機器向けが同8.6%減の50億08百万円、民生機器向けが同6.9倍の66億23百万円、コンピュータ向けが同16.8%増の16億68百万円、その他が同5.8%減の39億59百万円だった。
為替影響を含む売上総利益は同15.8%減少し、為替影響を含む売上総利益率は10.7%で同4.1ポイント低下した。為替影響額は5億30百万円の売上総利益減少要因(前期は4億31百万円の売上総利益増加要因)だった。為替影響除く実力値ベースの売上総利益は同7.5%増加し、為替影響除く実力値ベースの売上総利益率は12.3%で同1.0ポイント低下した。半導体事業において売上総利益率の低い民生機器向け案件の売上高が大幅に増加した。販管費は同5.9%増加したが、販管費比率は9.2%で同0.9ポイント低下した。
なお営業利益増減分析では、増益要因が売上高増加5億77百万円、減益要因が売上総利益率低下2億90百万円、仕入値引きドル建て債権評価額減少を含む為替影響9億61百万円、販管費増加1億70百万円としている。営業外では為替差損が増加(前期1億29百万円、今期3億20百万円)した。また営業外収益で補助金収入が減少(前期40百万円、今期2百万円)した。ROEは0.1%で同7.5ポイント低下、自己資本比率は57.4%で同0.8ポイント上昇した。
配当は同2円減配の年間13円(期末一括)とした。ただし15年12月期の年間15円には記念配当3円が含まれているため、普通配当ベースでは1円増配となった。配当性向は1238.7%である。
■17年12月期第1四半期は円安も寄与して大幅増益
5月9日発表した今期(17年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比18.0%減の77億34百万円、営業利益が同2.9倍の3億60百万円、経常利益が同3.5倍の4億39百万円、純利益が同4.3倍の2億97百万円だった。
売上面では民生機器用メモリが大幅に減少して減収だったが、概ね計画水準のようだ。利益面では利益率の低い製品の売上が減少したことに加えて、円安による仕入値引きドル建て債権の評価額増加が寄与して大幅増益だった。
事業別売上高は、半導体事業が同19.5%減の71億93百万円(FPGAが同11.1%減の29億57百万円、特定用途ICが同3.6%減の14億61百万円、汎用ICが同31.0%減の7億73百万円、アナログが同33.6%増の7億75百万円、メモリが同48.7%減の12億26百万円)で、デザインサービスが同9.7%増の4億87百万円、その他が同8.1%増の53百万円だった。
半導体事業の用途別売上高は、産業機器向けが同4.6%減の144億85百万円、通信機器向けが同8.6%減の50億08百万円、民生機器向けが同6.9倍の66億23百万円、コンピュータ向けが同16.8%増の16億68百万円、その他が同5.8%減の39億59百万円だった。
FPGAは通信機器、医療機器向けが減少したが、車載向けは増加した。特定用途ICはブロードバンド通信機器向けが減少したが、PC向けタッチパッド製品などは増加した。汎用ICはオフィス機器向けが増加した。アナログは産業機器向けが増加した。メモリは民生機器向けが大幅減少した。
為替影響を含む売上総利益は同30.0%増加し、売上総利益率は14.9%で同5.5ポイント上昇した。為替影響額は1億02百万円の売上総利益増加要因(前年同期は1億26百万円の売上総利益減少要因)だった。為替影響除く実力値ベースの売上総利益は同3.7%増加し、売上総利益率は13.6%で同2.9ポイント上昇した。半導体事業において売上総利益率の低い案件の売上が減少した。販管費は同4.2%増加し、販管費比率は10.2%で同2.2ポイント上昇した。
営業利益増減分析では、増益要因が売上総利益率上昇2億18百万円、仕入値引きドル建て債権評価額増加を含む為替影響2億28百万円、減益要因が売上高減少1億81百万円、販管費増加31百万円としている。営業外では為替差益が増加(前期38百万円、今期1億円)した。
■17年12月期予想を増額修正、円安も寄与して大幅増益予想
5月2日に今期(17年12月期)第2四半期累計(1月~6月)および通期の連結業績予想を増額修正した。円安による仕入値引きドル建て債権の評価額増加が売上総利益押し上げ要因となり、営業外での為替差益増加も寄与する。なお第2四半期累計の想定為替レートは1ドル=111円21銭で、第3四半期以降については為替変動影響を考慮していない。足元のドル高・円安傾向を考慮すれば再増額余地がありそうだ。
第2四半期累計の連結業績予想は前回予想(2月9日公表)に対して、売上高を2億円増額して前年同期比3.4%減の167億円、営業利益を1億20百万円増額して同6.2倍の6億円、経常利益を2億30百万円増額して同5.5倍の6億40百万円、純利益を1億40百万円増額して同8.1倍の4億20百万円とした。
通期の連結業績予想は前回予想(2月9日公表)に対して、売上高を2億円増額して前期(16年12月期)比2.0%増の342億円、営業利益を1億20百万円増額して同2.6倍の13億20百万円、経常利益を2億30百万円増額して同12倍の12億80百万円、純利益を1億40百万円増額して同76倍の8億40百万円とした。第2四半期累計の増額分を上乗せした形である。
配当予想は据え置いて前期と同額の年間13円(期末一括)としている。予想配当性向は17%となる。
■FPGAの市場拡大に注目
中期的な収益向上に向けた取り組みとして、半導体事業では高付加価値製品の取り扱い拡大、中核製品であるFPGAのさらなる拡販、第2の柱となる製品の売上拡大(センサー関連やIoT関連製品の拡充など)、医療・産業・通信・放送など成長分野への注力、デザインサービス事業では医療・放送・通信分野の受託設計・開発・ODM強化、自社製品の開発・販売強化、スマートエネルギー事業では病院・介護施設向け停電対策システムの構築・販売を強化する方針だ。
中核製品のFPGAに関しては、通信・産業・放送・医療・車載機器分野において、新規顧客獲得を含めて拡販を強化する。FPGAは論理回路構成を自由に書き換えられるため、世界的なトレンドとしてプロセッサーを内蔵したFPGAをメインチップとする傾向を強めている。そして今後は自動車の先進運転支援システム(ADAS)分野などを中心として市場拡大が予想されている。
センサ関連に関しては、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の赤外線カメラモジュールを、産業機器(検査機器、防災機器、産業向け携帯情報端末)やセキュリティ用監視カメラ向けに拡販する方針だ。
中期経営計画では数値目標に、20年12月期売上高400億円以上、営業利益率5%以上を掲げている。為替動向に注意が必要となるが、高度なデザイン力やソリューション力を武器として中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は12月末に実施、16年12月期末から導入
16年7月に株主優待制度の導入を発表した。毎年12月31日現在100株以上保有株主を対象として、保有株式数と継続保有期間に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HPを参照)する。16年12月期末から実施した。
■今期予想連結PERは13倍
5月11日の終値1007円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS76円68銭で算出)は13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS812円01銭で算出)は1.2倍近辺である。時価総額は約119億円である。週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドだ。上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)