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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テラは今期営業赤字幅拡大見通しだが株価はポジティブ反応、中期成長力を評価して出直り展開
- 2015/2/10 06:57
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
独自開発のがん治療技術を医療機関に提供するテラ<2191>(JQS)は2月6日に決算を発表した。そして今期(15年12月期)は営業赤字幅が拡大する見通しだが、9日の株価は前日比57円(3.58%)高とポジティブに反応し、モミ合い上放れの動きを強めている。樹状細胞ワクチン「バクセル」薬事承認取得に向けた開発活動本格化が注目され、中期成長力を評価して出直り展開だろう。
東京大学医科学研究所発のバイオベンチャーで、細胞医療事業(樹状細胞ワクチン「バクセル」を中心とした独自開発のがん治療技術を契約医療機関に提供)を主力として、医療支援事業(研究機関・医療機関から受託する細胞加工施設の運営・保守管理サービス、細胞培養関連機器の販売、治験支援サービスなど)、および医薬品事業(樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得に向けた開発活動)を展開している。
樹状細胞ワクチン「バクセル」は、最新のがん免疫療法として注目されている。樹状細胞(体内に侵入した異物を攻撃する役割を持つリンパ球に対して、攻撃指令を与える司令塔のような細胞)を体外で大量に培養し、患者のがん組織や人工的に作製したがんの目印である物質(がん抗原)の特徴を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞からリンパ球にがんの特徴を伝達し、そのリンパ球にがん細胞のみを狙って攻撃させる。そして独自技術で改良を重ね、がん治療用として最適化した。
主力の細胞医療事業は契約医療機関における症例数に応じた収入が収益柱である。14年12月末時点の契約医療機関数は全国で合計37カ所、契約医療機関における会社設立以降の累計症例数は約8900症例に達している。
成長に向けたM&A・アライアンス戦略も加速している。13年4月iPS細胞による再生医療実用化を目指すヘリオスに出資、13年5月がん新薬を中心としたCRO(治験支援)事業に参入するため子会社タイタンを設立、13年7月アンジェスMG<4563>と子宮頸がんの前がん病変治療ワクチンの共同研究・開発基本契約を締結、13年12月iPS細胞を利用したがん免疫細胞療法の開発に向けてヘリオスと業務提携した。
さらに14年1月樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得を目指して子会社テラファーマを設立、14年2月ゲノム診断支援事業に向けてゲノム解析ソフトウェア開発のジナリスと合弁子会社ジェノサイファー(14年9月オールジーンに商号変更)を設立、14年4月組織培養用培地のパイオニアであるコージンバイオに出資して資本業務提携、14年8月に少額短期保険業者のミニンシュラーを子会社化(14年12月テラ少額短期保険に商号変更)して保険事業(免疫保険)に参入した。
なお1月8日には、樹状細胞ワクチン「バクセル」の局所再発胃がんに対する症例報告が、英国の腫瘍外科専門学術誌「World Journal of Surgical Oncology」に掲載されたと発表した。2月6日には、樹状細胞ワクチン「バクセル」と抗がん剤の併用における膵臓がん患者の予後予測因子について、がん専門誌「ANTICANCER RESEARCH」に掲載されたと発表した。
2月6日に発表した前期(14年12月期)の連結業績は、売上高が前々期比21.2%増の18億65百万円、営業利益が2億93百万円の赤字(前々期は23百万円の黒字)、経常利益が3億30百万円の赤字(同24百万円の赤字)、純利益が4億02百万円の赤字(同58百万円の赤字)だった。
医療支援事業で細胞培養関連機器の大型案件が寄与して大幅増収だったが、樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得に向けた開発活動本格化による経費増加、新規事業立ち上げ費用などが影響して各利益は赤字だった。純利益については、繰延税金資産を取り崩して法人税等調整額1億17百万円を計上したことも影響した。
セグメント別売上高を見ると、細胞医療事業は同0.9%増の11億07百万円だった。契約医療機関における症例数は約1300症例だった。医療支援事業は同79.0%増の8億47百万円だった。大型案件の受注や新規参入のCRO(事業が寄与した。医薬品事業は14年1月設立のテラファーマで、樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得に向けた開発体制を整備した。
今期(15年12月期)の連結業績見通し(2月6日公表)は売上高が前期比19.1%増の22億21百万円、営業利益が3億65百万円の赤字(前期は2億93百万円の赤字)、経常利益が3億53百万円の赤字(同3億30百万円の赤字)、純利益が3億81百万円の赤字(同4億02百万円の赤字)としている。
既存契約医療機関との連携強化、新規契約医療機関の開拓、新規がん抗原の実用化推進などで症例数の増加を図り、細胞培養関連機器の新規受注拡大などで増収見通しだが、樹状細胞ワクチン「バクセル」の開発費用増加で営業赤字幅が拡大する見通しだ。
13年5月公布の「再生医療推進法」の理念のもと、14年11月に「医薬品医療機器等法(旧薬事法の改正)」および「再生医療等安全性確保法」の再生医療関連2法が施行され、再生医療・細胞医療の早期実用化の促進が期待されている。樹状細胞ワクチン「バクセル」に関しては「医薬品医療機器等法」に基づき、がん治療用再生医療等製品として早期承認制度を活用した薬事承認取得に向けて開発体制整備を強化し、15年度中に治験届の提出を目指すとしている。中期成長に対する期待感が高まる。
株価の動きを見ると、12月25日の直近安値1322円から1月13日の1877円まで急伸した後、反落して概ね1500円~1600円近辺で推移している。そして2月6日発表の今期連結業績見通しは営業赤字幅が拡大する見通しだったが、9日は前日比57円(3.58%)高とポジティブに反応して切り返しの動きを強めている。
2月9日の終値は1648円だった。日足チャートで見ると25日移動平均線が上向きに転じてサポートラインとなった。また週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を突破している。強基調に転換してモミ合いから上放れの動きだ。中期成長力を評価して出直り展開だろう。