【ドクター箱崎幸也の健康増進実践法】帯状疱疹のワクチンによる予防

ドクター箱崎幸也 健康増進実践法

 今月は、最近高齢者の方々で問題となっている帯状疱疹についてお話します。小児期に水疱瘡(水痘)を発症しても殆ど自然に治癒しますが、その後も原因となる「水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)」は知覚神経節(神経の根元)に潜伏し続けています。高齢や抗がん剤治療などで抵抗力が低下すると、潜伏しているVZVが再活性化して帯状疱疹を引き起こします。

 高齢者での帯状疱疹では、肝臓や膵臓を巻き込んで全身に拡大し重篤化したり、眼神経が侵され失明することもあります。最も頻度が高く深刻となるのは、帯状疱疹後神経痛が数週間から数ヶ月間も持続することです。さらにこの神経痛から全身が衰弱し、死に至ることもあります。

 2014年小児期の水痘ワクチン定期接種化以降、小児における水痘流行は減少し患者数は激減しています。生涯で約15~30%の人が帯状疱疹に罹りますが、近年帯状疱疹の患者数はさらに増加しています。先日、美智子皇太后も罹患したとの報道もありましたが、高齢化が最も高い要因とされています。しかし成人では知らず知らずのうちに水痘患児との接触で、VZVに対する免疫が活性化(ブースター効果)して帯状疱疹に罹らなくなっています。

 米国では、ワクチン定期接種による小児の水痘患者の減少で帯状疱疹の患者が90%も増加したことが報告されています。帯状疱疹患者数の増加は高齢化だけでなく、小児の水痘減少も大きく関与しています。

 我が国でも、2016年3月水痘ワクチンを用いた帯状疱疹予防が承認され、帯状庖疹は予防しうる疾患となりました。しかし、水痘ワクチンによる帯状庖疹予防効果は100%ではありません。何年ごとに追加ワクチンを接種するのが効果的かも不明です。しかしワクチン接種にて、重症化や帯状庖疹後神経痛を半減させる効果は明らかです。

 家族や友人に帯状庖疹後神経痛の経験者がいる方は積極的に接種を希望されています。60歳以上の方は、ぜひ今の元気なうちに水痘ワクチン接種をして下さい。(箱崎幸也=元気会横浜病院々長、元自衛隊中央病院消化器内科部長)

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