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ジェイテックは調整一巡感、技術者派遣の需要高水準
- 2017/5/24 08:11
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジェイテック<2479>(JQ)は技術者派遣の「技術商社」を標榜して、技術職知財リース事業を展開している。18年3月期は減益予想だが、技術者派遣の需要は高水準である。株価は調整一巡感を強めている。戻りを試す展開が期待される。
■技術者派遣の「技術職知財リース事業」が主力
製造業の開発・設計部門に技術者を派遣する「技術職知財リース事業」を主力としている。専門教育による知識を基盤として、新たな付加価値を顧客に提供する社員を「テクノロジスト」と呼称し、一般的なエンジニアと区別していることが特徴だ。そして「技術商社」を標榜し、テクノロジストが保有する知恵を提供(リース)することで、顧客とともに新たな価値を創造する「技術職知財リース事業」としている。
子会社ジェイテックアーキテクトは建築設計分野の技術者派遣、子会社ジェイテックアドバンストテクノロジは製造業向け一般派遣およびエンジニア派遣事業、子会社ジェイテックビジネスサポートはベンチャー総研グループから譲り受けたヒューマンリソース事業およびポスティング事業を展開している。
17年3月期のセグメント別売上構成比は技術職知財リース事業94%、一般派遣およびエンジニア派遣事業6%である。主力の「技術職知財リース事業」は機械設計開発、電気・電子設計開発、ソフトウェア開発、および建築設計の4分野を柱としている。特定の業界・企業への依存度を低くして、業種別・顧客別売上構成比のバランスを維持していることも特徴だ。
また収益面では期後半の利益構成比が高い特性がある。期前半は新卒テクノロジストの研修期間中の人件費や教育・研修費用が先行するため利益がやや低水準だが、期後半に向けて新卒テクノロジストの戦力化が寄与する。
■先端IT技術を活用したシステムの開発・拡販も推進
15年3月には、NFC(近距離無線通信技術)など先端IT技術を活用して、飲食店向け多言語対応注文支援システム「グルくる」を開発した。16年1月には「グルくる」の特許を取得して拡販を推進している。スマホからNFCタグまたはQRコードを読み取るだけで注文でき、約十カ国後の多言語対応のため外国人旅行客もスムーズに注文できる。
16年9月には、ストレスチェック制度導入をサポートする自社開発システム「こころチェッカー」の販売を開始した。改正労働安全衛生法に基づいて15年12月から50名以上の労働者が在籍する事業場でストレスチェックの実施が義務付けられたことに対応し、厚生労働省に定められた「職業性ストレス簡易調査票」の全57項目に準拠した検査ができる。
17年2月には「JTEC技術教育研修プログラム」の外販を開始した。継続的な社内教育で蓄積したカリキュラムから厳選して外部に提供する。
■17年3月期は大幅増益
5月9日発表した前期(17年3月期)の連結業績(5月2日に売上高を減額、利益を増額修正)は、売上高が前々期(16年3月期)比0.8%減の33億30百万円、営業利益が同69.5%増の1億23百万円、経常利益が同61.3%増の1億23百万円、純利益が同90.3%増の89百万円だった。
計画どおりのテクノロジスト確保が厳しく、人材不足によって案件に対応しきれない状況だったため、売上高は計画を下回り微減収となった。一方で安定的な単価上昇および高稼働率を維持し、営業所統合による経営資源の効率化や、グループ全体の業務合理化も寄与して、各利益は計画を上回り大幅増益だった。
売上総利益は同2.7%減少し、売上総利益率は23.9%で同0.5ポイント低下した。販管費は同9.8%減少し、販管費比率は20.2%で同2.0ポイント低下した。ROEは11.9%で同4.9ポイント上昇、自己資本比率は44.2%で同5.3ポイント低下した。配当は5月16日に期末1円増額して年間2円(期末一括=普通配当1円+創立20周年・上場10周年記念配当1円)とした。前々期との比較でも1円増配となる。配当性向は19.1%となる。
セグメント別動向を見ると、技術職知財リース事業は売上高が同1.9%減の31億38百万円で営業利益(連結調整前)が同14.1%増の4億28百万円だった。微減収だったが、原価管理徹底や経費削減の効果で増益だった。一般派遣およびエンジニアリング派遣事業は売上高が同21.4%増の1億93百万円で営業利益が4百万円の赤字(前々期は3百万円の赤字)だった。ジェイテックビジネスサポートによる取引が増加したが、関連費用も増加した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期8億39百万円、第2四半期8億46百万円、第3四半期8億22百万円、第4四半期8億23百万円、営業利益は15百万円、47百万円、4百万円、57百万円だった。
■18年3月期減益予想
今期(18年3月期)の連結業績予想(5月9日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比2.9%増の34億28百万円、営業利益が同17.6%減の1億02百万円、経常利益が同18.0%減の1億01百万円、純利益が同20.7%減の71百万円としている。
需要が高水準で増収だが、採用コストの増加などで減益予想である。配当予想は前期から記念配当を落として1円減配の年間1円(期末一括)としている。予想配当性向は12.1%となる。
■人材確保課題だが、需要高水準で受注環境良好
中期経営計画では基本戦略として、さらなる成長発展に向けた収益基盤の強化、財務基盤の一層の強化と安定した株主還元、経営理念に基づく新たな挑戦を掲げ、経営目標値は19年3月期売上高42億25百万円、営業利益1億14百万円、経常利益1億12百万円、純利益79百万円としている。
主要取引先の大手製造業では新製品開発など高水準の研究開発投資を継続しているため、自動車関連、産業機器関連、電機・精密機器関連などを中心に、技術開発や製品設計に対応可能なスキルを持つ技術者に対して派遣需要が一段と高まっている。そして改正労働者派遣法もプラス要因となる。人材確保が課題だが、中期的に受注環境は良好だろう。
■株価は調整一巡感
株価の動きを見ると、4月27日の戻り高値283円から反落したが、地合い悪化が影響した4月13日の年初来安値204円まで下押すことなく、230円近辺で下げ渋り調整一巡感を強めている。
5月23日の終値232円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円29銭で算出)は28倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS93円79銭で算出)は2.5倍近辺である。時価総額は約20億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線が下値を支える形だ。調整一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)