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カーリットホールディングスは調整一巡して戻り試す、18年3月期増収増益予想で0.6倍近辺の低PBRも見直し
- 2017/5/26 13:15
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
カーリットホールディングス<4275>(東1)は化学品事業を主力に、M&Aも積極活用して規模拡大や事業多様化を推進している。当社はロケット用固体推進薬原料を国内で唯一製造しており、宇宙関連銘柄の一つである。18年3月期増収増益予想である。積極的な事業展開で中期的に収益拡大が期待される。株価は調整一巡し、0.6倍近辺の低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。
■化学品、ボトリング、産業用部材を展開、M&Aで規模拡大と事業多様化
グループ収益基盤と総合力強化に向けたM&A戦略で、規模拡大と事業多様化を推進している。
12年1月工業用塗料販売・塗装工事の富士商事、12年8月耐火・耐熱金物製造販売の並田機工、13年10月一級建築士事務所の総合設計、14年2月各種スプリング製造・販売の東洋発條工業を子会社化した。15年10月並田機工がアジア技研(北九州市)からスタッド事業を譲り受け、アジア技研(大阪市)を新設して承継した。16年2月合成樹脂原材料販売の三協実業を子会社化した。17年3月には連結子会社の総合設計がエスディーネットワークを子会社化した。
17年3月期売上高構成比は、化学品事業(産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、信号炎管、危険性評価試験受託、二次電池試験受託、ロケット固体推進薬原料などの化成品関連、電子材料・機能性材料など)43%、ボトリング事業37%、産業用部材事業(半導体用シリコンウェーハ、研削材、耐火・耐熱金物・スプリングワッシャーなど)17%、その他3%である。
化学品事業の自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用を展開し、国内市場シェアは約8~9割と想定されている。ボトリング事業は伊藤園<2593>向けが主力である。産業用部材事業の半導体用シリコンウェーハは小口径4~6インチのニッチ市場を主力としている。
海外は並田機工がベトナムで耐火・耐熱金物を製造販売する子会社を設立した。当社グループにとってASEAN地域における初の生産拠点とである。
■中期経営計画「礎100」で事業基盤確立を推進
中期経営計画「礎100」では、18年の創業100周年を迎え、次の100年の礎となる事業基盤確立を推進する方針としている。
基本戦略には、成長基盤強化(新商品・新規事業の創出と育成、M&Aや資本・技術提携)、収益基盤強化(経営資源の有効配分、新商品開発のスピードアップ)、グループ経営基盤強化(グループシナジーの最大化、子会社・事業の再編・統廃合、R&Dの新体制構築、海外展開の強化、CSR経営の推進)を掲げている。
新商品・新規事業の創出と育成に関しては、H-Ⅱロケット用など高エネルギー化学物質の宇宙産業への展開、環境・エネルギー関連における次世代電池用材料への展開、ライフサイエンス分野のヘルスケア材料におけるバイオリファイナリー製品展開、サーモグラフィー用材料の車載向けへの展開など重点分野を一段と強化する。
15年7月にはR&Dセンターとグループ会社のシリコンテクノロジーが、サーモグラフィー用材料分野への参入を発表した。車載、セキュリティ、エネルギーマネジメントなどで使用されるサーモグラフィー用材料分野の非冷却赤外線カメラ市場は拡大が予想されているため、低コストで大量供給が可能なシリコンをベースに高性能結晶材料を開発し、国内外の複数の企業とサンプルテストを実施して良好な結果が得られている。
15年8月には、日本カーリットが同社所有の水力発電所である広桃(こうとう)発電所(群馬県前橋市)の大規模更新工事の実施を決定した。工事完了は17年度。投資額は約23億円の予定である。
17年2月には子会社の東洋発條工業が300tサーボプレス機を導入したとリリースしている。より複雑で難易度の高い加工や大型サイズの部品の製造が可能となる。製品ラインナップの拡充を図り、同社の新たな事業の柱とする計画だ。
なお目標数値については5月15日に修正を発表し、18年度売上高540億円、営業利益24億円、営業利益率4%とした。事業環境の変化で目標値を引き下げた。
■17年3月期増収増益
5月15日発表した前期(17年3月期)の連結業績は、売上高が前々期(16年3月期)比3.0%増の477億67百万円、営業利益が同8.1%増の13億51百万円、経常利益が同8.2%増の14億39百万円、純利益が同1.5%増の7億65百万円だった。
新規連結や産業用部材事業の損益改善も寄与して増収増益だった。売上総利益は同7.1%増加し、売上総利益率は16.0%で同0.6ポイント上昇した。販管費は同6.9%増加し、販管費比率は13.2%で同0.5ポイント上昇した。特別損失では固定資産除却損1億32百万円、減損損失1億23百万円を計上した。
ROEは3.3%で同0.2ポイント低下、自己資本比率は48.4%で同0.4ポイント上昇した。配当は前々期と同額の年間10円(期末一括)とした。配当性向は30.9%である。
セグメント別(連結調整前)に見ると、化学品は売上高が同4.9%増の205億79百万円で営業利益が同17.1%増の7億74百万円だった。16年2月連結子会社化した合成樹脂原料商社の三協実業も寄与して増収増益だった。自動車用緊急保安炎筒は車検交換用が減少したが、新車装着用が増加し、全体として微増だった。受託評価分野は減収だった。ロケット固体推進薬の原料である過塩素酸アンモニウムは横ばいだった。電子材料分野では機能性高分子コンデンサ向けピロール関連製品などが増収だった。
ボトリングは売上高が同1.1%減の175億88百万円で営業利益が同9.0%減の3億77百万円だった。ペットボトルラインの設備増強に伴う製造停止期間発生の影響で、主力の茶系飲料が減収となった。
産業用部材は売上高が同4.5%増の79億80百万円で営業利益が同2.6倍の2億17百万円だった。金属加工品のばね・座金製品が建設機械向けや自動車向けに好調だった。15年10月にアジア技研から譲り受けたスタッド事業も寄与した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期117億50百万円、第2四半期120億81百万円、第3四半期118億90百万円、第4四半期120億46百万円、営業利益は46百万円、3億47百万円、4億23百万円、5億35百万円だった。
■18年3月期増収増益予想
今期(18年3月期)連結業績予想(5月15日公表)は売上高が前期(17年3月期)比6.8%増の510億円、営業利益が同11.0%増の15億円、経常利益が同7.7%増の15億50百万円、純利益が同11.1%増の8億50百万円としている。
建設機械関連が堅調に推移し、ボトリングの回復やM&A子会社も寄与して増収増益予想である。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)で、予想配当性向は27.8%となる。連結配当性向の目標は20~30%としている。
■株価は調整一巡、低PBRも見直して戻り試す
株価の動きを見ると、地合い悪化が影響した4月13日の年初来安値528円から切り返している。調整が一巡したようだ。
5月25日の終値569円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS35円91銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1010円55銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約137億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を回復した。調整一巡し、0.6倍近辺の低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)