- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 日本エンタープライズは調整一巡感、17年5月期大幅営業増益予想
日本エンタープライズは調整一巡感、17年5月期大幅営業増益予想
- 2017/5/31 08:33
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信、店頭アフィリエイト広告、企業向けソリューションなどを展開し、EC分野やM2M/IoT分野への事業領域拡大戦略も推進している。17年5月期大幅営業増益予想である。株価は調整一巡し、収益改善を見直して反発が期待される。
■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開
交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。
16年5月期のセグメント別売上高構成比はコンテンツサービス事業40%、ソリューション事業60%で、営業利益構成比(連結調整前)はコンテンツサービス事業88%、ソリューション事業12%である。
■中国では携帯電話販売事業を展開
中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営や電子コミック配信サービスなどを手掛けている。15年10月には中国向けサンリオキャラクター商品卸売事業を行う合弁子会社NE銀潤を設立した。中国における事業展開については、携帯電話等販売事業、卸売をはじめとしたソリューション事業(NE銀潤に対するサンリオキャラクター商品の日本からの輸出など)、モバイルコンテンツ事業を積極展開する。
■中期成長に向けて事業領域拡大を推進
配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略として、ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化、成長分野のM2M/IoTへの事業領域拡大など、中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用している。
13年3月andOneを子会社化、14年4月子会社HighLab設立、14年11月ア会津ラボを子会社化、15年6月山口再エネ・ファクトリー設立、15年7月プロモートを子会社化、15年12月クルーズ<2138>が運営するフリマアプリ「Dealing」サービスを譲り受けてEC分野に参入、16年2月スマートバリュー<9417>と業務資本提携、16年4月エキサイト<3754>と業務提携した。
なおゲーム開発・運営の連結子会社HighLabを17年5月吸収合併した。早期収益確保・拡大に向けて、チャットアプリ「Fivetalk」を軸に品質向上、機能強化、IoTインターフェース等に向けた各種施策に取り組む。
■法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針、BtoB分野に本格参入
法人向け事業では、14年8月スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリ「AplosOneソフトフォン」開発、14年10月ビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」発表、15年5月会津ラボが会津若松市の「次世代型食品生産トライアル事業」に対するスマート農業支援発表、15年6月IDCフロンティアと業務提携してクラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービス開始した。
16年1月千葉県山武群横芝光町「横芝光町情報発信アプリサービス開発業務」を受託、16年2月静岡県下田市の子育て支援アプリ「しもだこどもDiary」を発表した。16年6月には東京都中央卸売市場築地市場・東京魚市場卸協同組合と協業で、電子商取引事業の子会社いなせりを設立して企業間(BtoB)EC分野に本格参入した。
16年10月にはパートナーエージェント<6181>と共同で、長野県南佐久郡川上村「女性活躍推進および結婚環境向上推進」における官民連携施策「KAWAKAMI SMART PROJECT」にシェアリングエコノミーシステム「MAKETIME」の提供を開始した。
■IoTやドローン分野の事業化に向けた技術開発も推進
ドローン関連は、会津ラボが会津大学との産学連携でドローン群制御技術「Dronet(ドロネット)」を開発し、17年1月には会津ラボと鈴与マタイが風力発電設備点検での有線ドローン実用化を目指して実証実験を開始した。
IoT関連では16年7月、会津ラボがタカショー<7590>および会津大学と協業し、ガーデニング・エクステリア製品をインターネットに接続して快適な癒し空間を作るIoT商品の共同開発を行うと発表した。17年2月には会津ラボが、IoTにおけるコミュニケーションツールとして「モノ」の感情を可視化する「mononome(もののめ)」を開発した。
■17年5月期第3四半期累計は大幅営業増益
今期(17年5月期)第3四半期累計(6月~2月)連結業績は、売上高が前年同期比8.9%減の36億63百万円、営業利益が同47.6%増の2億25百万円、経常利益が同45.6%増の2億44百万円、純利益が同53.7%減の60百万円だった。
コンテンツサービス事業は広告投資の抑制やキャリアの政策変更の影響で、キャリア月額制・定額制向けコンテンツの減収が続き、ソリューション事業における広告代理サービスの特需剥落も影響して減収となり、ソリューション事業の売上構成比上昇で売上総利益率も低下したが、広告宣伝費を中心とする販管費の減少などで大幅営業増益だった。
売上総利益は同15.2%減少し、売上総利益率は41.0%で同3.0ポイント低下した。販管費は同21.1%減少し、販管費比率は34.8%で同5.4ポイント低下した。
セグメント別に見ると、コンテンツサービス事業は売上高が同18.0%減の13億88百万円(交通情報が11.3%減、エンターテインメントが23.8%減、ライフスタイルが16.8%減)で、営業利益(連結調整前)が同19.1%増の5億60百万円だった。ソリューション事業は売上高が同2.3%減の22億74百万円(受託開発などソリューションが11.0%増、広告代理サービスが14.9%減、海外が14.3%減)で、営業利益が同57.3%減の40百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期12億45百万円、第2四半期12億49百万円、第3四半期11億69百万円、営業利益は67百万円、99百万円、59百万円だった。
■17年5月期通期も大幅営業増益予想
今期(16年5月期)の連結業績予想(7月12日公表)は売上高が前期(16年5月期)比4.2%減の53億円、営業利益が同50.2%増の3億30百万円、経常利益が同38.6%増の3億50百万円、純利益が同58.7%減の1億35百万円としている。配当予想は前期と同額の年間3円(期末一括)としている。予想配当性向は90.1%となる。
売上面ではソリューション事業が伸長するが、コンテンツサービス事業における行政の規制による影響やコンテンツ市場の環境変化を鑑み、全体として減収予想としている。また純利益は投資有価証券売却益一巡で減益予想だが、広告戦略転換による販管費減少で大幅営業増益・経常増益予想としている。
■6つのコンテンツプラットフォームを核としてサービス連携・拡充を推進
重点戦略としては、ヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」、総合電子書籍サービス「BOOKSMART」、フリマアプリ「Dealing」、道路・渋滞情報サービス「交通情報サービス」、メッセンジャーアプリ「Fivetalk」、クーポンアプリ「振ってクーポン」の6つのコンテンツプラットフォームを核として、サービス連携・拡充を推進する。
コンテンツサービス事業ではキャリアプラットフォーム(定額制・月額制)が下降トレンドのため、ヒットコンテンツ創出に向けて新規サービス推進部を新設した。VRゲームの初リリースを機に、多様な取り組みに挑むとしている。ソリューション事業では企業・自治体向けアプリ・システム受託開発・運用を積極推進し、ECやIoT分野などでの新サービス開発・事業化に取り組む方針だ。
■株価は調整一巡感
株価の動きを見ると、4月14日の年初来安値237円から反発して5月11日の273円まで上伸した。その後は上値の重い展開だが調整一巡感を強めている。
5月30日の終値256円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円33銭で算出)は77倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS123円96銭で算出)は2.1倍近辺である。時価総額は約104億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、調整一巡し、収益改善を見直して反発が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)