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パイプドHDは調整一巡感、18年2月期は先行投資負担だが中期成長期待
- 2017/5/31 08:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業、広告事業、ソリューション事業を展開している。18年2月期は先行投資負担で営業利益横ばい予想だが、増収基調に変化はなく、中期成長が期待される。株価は4月の年初来安値圏から切り返して調整一巡感を強めている。
■情報資産プラットフォーム事業などを展開
国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(情報資産プラットフォーム「スパイラル」によるデータ管理などのクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービスなど)、ソリューション事業(インターネット広告制作やWebシステム開発の請負、BIMコンサルティング、デジタルCRMなど)を展開している。
17年2月期の売上構成比は、情報資産プラットフォーム事業が71%、広告事業が5%、ソリューション事業が25%である。情報資産プラットフォーム事業は契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。
17年3月末現在の連結子会社は、パイプドビッツ(情報資産プラットフォーム・広告・ソリューション)、ペーパーレススタジオジャパン(建築プロデュース&マネジメント・BIMコンサルタント)、アズベイス(コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」運営)、パブリカ(マイ広報紙)、ゴンドラ(情報資産プラットフォーム・広告・Webソリューション)、フレンディット(サイト企画・制作・構築およびEC運用)、美歴(美容室向け電子カルテ「美歴」運営)、カレン(デジタルCRM)、ブルームノーツ(人材育成代行)、VOTE FOR(政治関連活動「政治山」運営およびソリューション)、アイラブ(イベント運営)の11社である。
持分法適用関連会社はMAKE HOUSE(住宅業界向けBIM事業)で、持分法を適用しない出資会社は、ソーシャルマネジメントプラットフォーム事業の米国SprinklrとSprinklr Japan、およびMOKIとインタラクティブ・コミュニケーションズである。
■情報資産プラットフォーム「スパイラル」は国内最大規模
情報資産プラットフォーム事業は国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、アパレル特化型ECプラットフォーム、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム、薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム、美容関連ヘアカルテ共有サービス、地域密着型SNS、政治・選挙プラットフォーム、BIM建築情報プラットフォーム、コールセンタープラットフォームサービス、自治体向け広報紙オープン化・活用サービス、ソーシャルマネジメントプラットフォームなどを展開している。
15年7月マイナンバー運用体制整備をサポートする「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」を開始、オムニチャネル対応顧客情報統一管理「スパイラル・オムニチャネルソリューション」を開始、16年5月「スパイラル マイナンバー収集代行サービス」を開始した。
また16年3月SBIインベストメントが運営するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(FinTechファンド)に1億円出資、17年4月ヘルスケア業界向け経営支援プラットフォームを展開するクロスリンクに出資している。
なお5月25日、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」事業から撤退すると発表した。当該事業に係る減損損失は17年2月期特別損失に計上済みのため、18年2月期業績への影響は軽微である。
■17年2月期は大幅増収・増益
前期(17年2月期)連結業績は、売上高が前々期(16年2月期)比19.9%増の48億02百万円、営業利益が同45.6%増の8億45百万円、経常利益が同54.1%増の8億64百万円、純利益が同63.1%増の2億85百万円だった。
全事業合計の有効アカウント数は1万676件で同58件減少したが、主力の情報資産プラットフォーム事業が好調に推移して17期連続増収となり、人件費増加などを吸収して大幅増益だった。売上総利益は同14.8%増加したが、売上総利益率は68.3%で同3.0ポイント低下した。販管費は同7.0%増加したが、販管費比率は50.7%で同6.1ポイント低下した。
特別損失には16年6月発生した外部からの不正アクセスに伴うセキュリティ事故対応費用16百万円、会計クラウドシステムに係る減損損失65百万円を計上した。ROEは20.4%で同9.3ポイント上昇、自己資本比率は41.2%で同7.4ポイント低下した。配当は実質的に16年2月期比3円増配の年間21円(第2四半期末9円、期末12円)とした。配当性向は39.4%である。
セグメント別に見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同11.4%増の33億86百万円、営業利益(連結調整前)が同54.4%増の8億53百万円だった。有効アカウント数は1万264件だった。
広告事業は売上高が同4.4%増の2億31百万円で、営業利益が同3.0%増の55百万円だった。有効アカウント数は217件だった。なお売上高は広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)で、広告枠仕入高控除前の総額表示(グロス表示)では22億40百万円だった。
ソリューション事業は売上高が同59.3%増の11億83百万円で、営業利益が62百万円の赤字(16年2月期は25百万円の赤字)だった。有効アカウント数は195件だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期11億62百万円、第2四半期11億86百万円、第3四半期11億39百万円、第4四半期13億15百万円、営業利益は2億16百万円、1億92百万円、1億88百万円、2億49百万円だった。
■18年2月期営業利益横ばい予想だが増収基調に変化なし
今期(18年2月期)連結業績予想(3月31日公表)は、売上高が前期(17年2月期)比10.4%増の53億円、営業利益が同横ばい8億45百万円、経常利益が同3.4%減の8億35百万円、純利益が同16.2%増の4億70百万円としている。
人材採用・育成強化などの先行投資負担で営業利益横ばい予想だが、需要好調で増収基調に変化はないようだ。配当予想は17年2月期と同額の年間21円(第2四半期末9円、期末12円)としている。予想配当性向は33.9%となる。
■20年2月期営業利益17億円目標
17年3月策定した「中期経営計画2020」では、目標数値に20年2月期売上高73億円、営業利益17億円を掲げている。重点戦略として、リアルビジネスとの接点の強化、イノベーティブな事業への挑戦、グループ全体の採用・育成の強化、グループ各社の情報資産の有効活用を推進する。中期成長が期待される。
■株価は調整一巡して出直り期待
株価の動きを見ると、4月17日の年初来安値940円から切り返して1000円台を回復している。調整が一巡したようだ。
5月30日の終値1051円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS61円94銭で算出)は17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間21円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS274円71銭で算出)は3.8倍近辺である。時価総額は約85億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して出直りが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)