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アスカネットは18年4月期も収益拡大基調期待
- 2017/5/31 08:17
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工関連や写真集制作関連を主力としている。5月9日には樹脂製AIプレート生産の方向性をリリースした。18年4月期も収益拡大基調が期待され、人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」関連としても注目される。株価は上値を切り下げる形だが調整一巡して反発が期待される。なお6月9日に17年4月期決算発表を予定している。
■写真加工関連を主力として新規事業AIも育成
葬儀社・写真館向け遺影写真合成・加工関連のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作関連のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、空中結像技術を用いた新規事業のエアリアルイメージング(AI)事業も推進している。16年4月期売上高構成比はMDS事業45%、PPS事業54%、AI事業1%だった。
■MDS事業とPPS事業は安定収益源
MDS事業は全国の葬儀社や写真館との間にネットワークを構築し、葬儀に使用する遺影写真のデジタル加工サービスを提供している。操作不要のフルリモートコントロール方法で、約2200ヶ所の葬儀社などBtoB中心に年間約32.5万枚の写真画像を提供している。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器類売上などである。
PPS事業は写真集をインターネットで受注して制作するサービスで、約3700社の写真館向け(BtoB)や一般コンシューマー向け(BtoC)に年間約38万冊の写真集を提供している。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などが強みである。15年5月にはNTTドコモ<9437>「フォトコレクションプラス」向けにフォトブックおよびプリント商品の独占OEM供給を開始した。
MDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場であり、景気変動の影響を受けにくい安定収益源である。また第3四半期および第4四半期の構成比が高い特性がある。配当の基本方針は配当性向30%を目安としている。
■空中結像AIプレート事業は製品化に向けて着実に進展
AI事業は空中結像技術を用いて新しい映像画像の表現方法を提唱している。AIプレートは画像映像を表す光を特殊なパネルを通過させることによって反対側の空中に映像を結像する新技術である。AIプレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど、多方面の業界・業種から注目されている。
16年2月インセル型液晶パネルとAIプレートを活用した「非接触入力装置および方法」特許を取得し、16年3月パイオニア<6773>が保有する空中表示技術に関する特許権(特許出願中を含む)を取得した。
また海外市場も開拓する方針を打ち出し、17年3月には海外展示会出展内容確定と海外向け専用ウェブサイトオープンをリリースした。海外向けブランドは「ASKA3D」で販売するプレート製品名は「ASKA3D-Plate」とした。
独自技術を強固にするための特許申請を進めるとともに、将来的には自ら立体映像を空中に創出する技術の確立も目指している。そして基本技術を確立し、試作品の販売を進めながら、低コストと大量生産を可能にする本格量産技術(ファブレス形態で製造して自社ブランドで販売)の確立に取り組んでいる。
AIプレート量産については、ガラス素材による量産と樹脂素材による量産に分けられ、それぞれ複数の協力会社と取り組んでいる。ガラス素材プレートはコストおよび量産性が相対的に劣るものの、結像品質は相対的に優れている。樹脂素材プレートはコストおよび量産性が相対的に優れており、結像品質は想定的に劣る。両素材に一長一短があるため、並行して量産技術の確立に挑んでいる。
ガラス素材プレートについては量産技術を確立し、品質の安定・向上、歩留まりの向上への改善を進めている。樹脂素材プレートについては、試作品の製造手法とは全く異なる新しい方法にトライし、大型パネルや視野角拡大タイプの研究・試作も進めている。そして5月9日、樹脂素材プレートについては新製法による量産確立を優先的に取り組む方針とリリースした。
なお当社が想定している第一段階の量産は、リスク等を考慮して現有の設備やラインを最大限に活用することを前提としており、いきなり大規模・大ロットの量産を指向していない。複数の製造方法のうち最も優れた方法が明確になった時点で、専用ラインの立ち上げなどにより多量の量産が可能な体制を段階的に構築する方針としている。
またAIプレートは素材であり、AIプレート供給先がAIプレートを活用して商品化することが量産の前提となる。したがってAIプレート供給先の実際の商品化までは一定の時間を要する可能性がある。このため当面は小ロット案件を中心に確実に案件を積み重ね、その後の大ロット案件に繋げたいとしている。
■ユニロボットに出資して資本業務提携
17年2月人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造・販売するユニロボットに出資して資本業務提携した。人との会話を重ねることによって、その人の個性を学習していくという真のパートナーロボットとして期待されている。
■17年4月期第3四半期累計は2桁増益
前期(17年4月期)第3四半期累計(5月~1月)の非連結業績は売上高が前年同期比4.6%増の40億29百万円、営業利益が同7.9%増の6億49百万円、経常利益が同7.9%増の6億52百万円、純利益が同11.7%増の4億44百万円だった。
MDS事業、およびPPS事業のBtoBとOEMが順調に推移し、OEM生産の稼働率上昇効果も寄与して増収増益だった。売上総利益は同5.5%増加し、売上総利益率は51.6%で同0.5ポイント上昇した。販管費は同4.5%増加し、販管費比率は35.5%で同横ばいだった。
セグメント別(連結調整前)に見るとMDS事業は売上高が同4.0%増の17億93百万円で営業利益が同5.0%増の5億84百万円だった。遺影写真加工収入は第1四半期にやや苦戦したが、第2四半期以降に回復傾向となった。動画など葬儀演出関連サービスも伸長した。
PPS事業は売上高が同5.1%増の21億91百万円で営業利益が同13.0%増の4億94百万円だった。BtoC関連は価格競争激化などで苦戦したが、BtoB関連のプロフェッショナル写真家向けが順調に推移し、OEM供給が伸長した。利益面ではOEM生産の稼働率上昇も寄与した。
AI事業は売上高が同9.3%増の43百万円で営業利益が91百万円の赤字(前年同期は64百万円の赤字)だった。売上面ではアミューズメントパーク向け大型案件が一巡し、小ロットのサンプル販売にとどまった。費用面では量産に向けた研究開発費が増加した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期12億30百万円、第2四半期12億75百万円、第3四半期15億24百万円、営業利益は1億35百万円、1億77百万円、3億37百万円だった。
■17年4月期増収増益予想、18年4月期も収益拡大期待
前期(17年4月期)通期の非連結業績予想(6月10日公表)は売上高が前々期(16年4月期)比5.6%増の54億61百万円、営業利益が同3.5%増の8億円、経常利益が同3.7%増の8億05百万円、純利益が同0.7%増の5億51百万円としている。
新サービス・企画や社内体制充実のためのコストが発生するため小幅増益見込みとしている。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)としている。予想配当性向は30.4%となる。
セグメント別売上高の計画は、MDS事業が同3.8%増の24億20百万円、PPS事業が同4.7%増の29億11百万円、AI事業が同2.2倍の1億30百万円としている。MDS事業は遺影写真加工収入の着実な積み上げ、PPS事業はOEM供給の寄与を見込み、AI事業は中ロット案件の積み重ねに注力する。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73.8%、営業利益が81.1%、経常利益が81.0%、純利益が80.6%だった。第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益特性を考慮すれば通期上振れ余地がありそうだ。そして来期(18年4月期)も収益拡大が期待される。
■株主優待制度は毎年4月末に実施
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。100株以上400株未満所有株主に対して1000円割引利用券1枚、400株以上2000株未満所有株主に対して1000円割引利用券2枚、2000株以上所有株主に対して1000円割引利用券3枚を贈呈する。
■株価は調整一巡して反発期待
株価の動きを見ると、3月の年初来高値2514円から反落して上値を切り下げる形となった。ただし売られ過ぎ感も強めている。
5月30日の終値1768円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS32円93銭で算出)は54倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.6%近辺、前々期実績PBR(前々期実績のBPS250円03銭で算出)は7.1倍近辺である。時価総額は約309億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、26週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。調整一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)