【村山貢司の気象&経済歳時記】温暖化とエネルギー
- 2017/6/1 12:14
- 株式投資News
5月の末に仙台にある、東北電力の新仙台火力発電所を視察した。3号系列の1号機と2号機で合計98万KWの出力である。規模は他の火力発電所に比べて特に大きなものではないが、特徴は熱効率が60%以上と極めて高く、二酸化炭素の排出量が少ないことである。コンバインドサイクルといって、液化天然ガス(LNG)を燃焼させ、まずガスタービンを回す。ガスタービンから出る640度の高温の燃焼ガスを用いて水蒸気を発生させ。蒸気タービンを回す仕組みで2つのタービンが直結し、世界で最高水準の熱効率になっている。重油を燃やして発電していた従来の火力発電に比べると、1kWh当たりの燃料は1/4減少し、二酸化炭素の排出量は1/3も減少している。
新仙台火力発電所
東日本大震災以降、多くの原発が停止した状態が続き、電力のうち火力発電が占める割合は80%以上になっている。その多くは老朽化した熱効率の悪い火力発電所である。日本は2030年には13年比で26%もの二酸化炭素を削減する目標を世界に約束した。その内容は再生可能エネルギーを22%程度にし、原発の再稼働を進めるものである。原発の是非は別にして、再生可能エネルギーを増加させるためには、熱効率の悪い石炭や重油を用いる老朽化した火力発電所をコンバインドサイクルの火力発電所に切り替えることである。LNGを用いる新型火力発電は立ち上がりが早いのが特徴であり、再生可能エネルギーが十分に供給されない場合の電源として活用できる。
気象の面からみると太陽光発電は天候の影響を大きく受ける。2003年7月の東京の場合、7月6日から26日までの3週間の日照時間はわずか15.3時間であり、太陽光発電はほとんど機能しないことになる。風力を含めた再生可能エネルギーの増加には正確・詳細な気象情報とバックアップになる火力発電が不可欠である。従来の火力発電では温暖化対策に逆行するため、熱効率の高いコンバインドサイクルの火力に切り替え、その分の再生可能エネルギーを増加させることが、温暖化対策と同時にエネルギーの安定供給を行うことになる。(村山貢司=気象予報士・経済評論家)