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メディカル・データ・ビジョンは上場来高値更新の展開、17年12月期大幅増益予想
- 2017/6/5 08:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
メディカル・データ・ビジョン<3902>(東1)は医療分野のビッグデータ関連ビジネスを展開している。大規模診療データベースは17年5月末現在で実患者数1863万人と日本国民7人に1人に相当する規模に達した。17年12月期大幅増収増益予想である。株価は好業績を評価して上場来高値更新の展開だ。
■医療分野のビッグデータ関連ビジネス
医療分野のビッグデータ関連ビジネスとして、医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツール・サービスを販売するデータ利活用サービスを展開している。
データネットワークサービスで医療機関向けに医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報を分析し、データ利活用サービスとして主に製薬会社向けに提供するビジネスモデルだ。
医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、および製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)が収益源で、16年12月期事業別売上構成比はデータネットワークサービス55%、データ利活用サービス45%である。収益面では特にデータ利活用サービスにおいて下期偏重の特性がある。
■医療機関向けデータネットワークスサービス
医療機関向けのデータネットワークサービスは、DPC制度導入対象病院向けのDPC分析ベンチマークシステム「EVE」と、病院経営支援システム「Medical Code」を主力としている。DPC制度は急性期病院における入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。厚生労働省が03年導入した。
DPCベンチマークシステム「EVE」は自院の診療内容や状況を他院と比較しながら分析できるシステムである。16年12月期末の導入病院数は15年12月期末比23病院増加の791病院となり、DPC制度を導入している全国1667病院のうち約45%と圧倒的シェアを獲得している。
病院向け経営支援システム「Medical Code」は病院経営全般に関わる事項を分析できるシステムである。16年12月期末の導入病院数は15年12月期末比48病院増加の224病院である。
今後の戦略として、DPC分析ベンチマークシステム「EVE」は45%の市場シェアを維持しながら純増を目指すが、販売の軸足を病院経営支援システム「Medical Code」に移す方針としている。
■病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」拡販
病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」は16年10月提供開始した。患者自身が診療情報の一部を閲覧できるWEBサービス「カルテコ」や医療費後払いサービス「CADA決済」などを融合した。
この「CADA-BOX」を介し、検査結果などを含むよりリアルタイムなデータを集積することで、データ利活用ビジネスの拡大を目指す考えだ。当初は電子カルテ機能を含むシステム提供での実現を考えていたが、よりスピーディなデータ集積を目的に戦略転換した。
また「CADA-BOX」を既存の電子カルテシステムに連携させるため、CEホールディングス<4320>の子会社で電子カルテシステム大手のシーエスアイ(CSI)と16年8月業務提携した。
16年12月期に3病院への導入が決定し、17年2月には大同病院(名古屋市)で「CADA-BOX」が全国で初めて稼働した。19年までに2次医療圏(医療法に基づき厚生労働省が決定している医療の地域圏)344エリアの地域中核病院への導入を推進していく計画としている。
■製薬会社向けデータ利活用サービス
製薬会社向けのデータ利活用サービスは、医療機関向けのデータネットワークサービスで集積した医療ビッグデータを活用し、処方数、処方診療科、併用薬などの分析ツールおよび分析調査サービスを提供している。
製薬会社の個別ニーズに対するアドホック調査サービスを主力として、医療機関における処方実態が把握可能な診療データ分析ツール「MDV analyzer」も提供している。「MDV analyzer」は比較的大規模な製薬会社を対象としており、アドホック調査サービスの成長で当面はデータ利活用ビジネスを拡大していく方針だ。
■大規模診療データベースを活用して新規分野にも事業展開
民間最大級の大規模診療データベースを活用して、新規分野への事業展開も推進している。OTC(一般用医薬品)とH&BC(ヘルス&ビューティケア)分野を対象とした各種調査分析サービスでは、診療統計データ分析レポート、診療統計データ分析レポート、インシュアランス(保険)業界向けデータ分析サービス、実臨床現場における医療材料に関するメーカー別・製品別シェア分析調査サービスなどを提供している。
17年1月には歯科分野の医師向け会員型サービスを展開するDoctorbookの全株式を取得して子会社化した。
17年2月設立した子会社MDVコンシューマー・ヘルスケアは、17年3月日本国内における医薬品販売業許可を取得、17年4月第二種医薬品製造販売業許可、医薬部外品製造販売業許可、化粧品製造販売業許可を取得した。そして5月30日には乾燥性敏感肌用スキンケア「KISOU」を7月から発売すると発表した。独自に保有する大規模診療データベースを活用して開発した。
17年3月はメディパルホールディングス<7459>の子会社メディエと協業した。医療材料の市場把握が可能となる日本最大規模の診療データベースを目指す。
また5月23日にはヒップの子会社コスメックスの全株式を取得して子会社化(株式取得日6月7日予定)する基本合意書締結を発表した。コスメックスのSMO(治験施設支援機関)事業の成長を支援し、大規模診療データベースを利活用した治験事業の展開も視野に入れる。
■日本国民7人に1人という民間最大規模の診療データベース
データ利活用ビジネスを支えるのは大規模診療データベース(病院から2次利用の許諾を得て匿名化処理がなされた入院患者ごとの診断名、治療方法、薬剤処方が分かる実臨床データ)である。
17年5月末現在の実患者数は1863万人(16年12月末比140万人増加)となり、日本国民7人に1人に相当する規模に達している。全保険種類を網羅した民間最大級のデータベースで、規模と質において高い評価を受けている。
■17年12月期第1四半期は実質大幅増益
今期(17年12月期)第1四半期(1月~3月)連結業績は売上高が6億45百万円、営業利益が64百万円、経常利益が63百万円、純利益が46百万円だった。前期(16年12月期)第2四半期から連結決算に移行しているため、前年同期の非連結業績との比較で見ると24.3%増収、5.4倍営業増益、5.6倍経常増益、8.6倍最終増益だった。
データ利活用サービスが大幅伸長して牽引し、人件費、のれん償却、広告宣伝費の増加を吸収して実質大幅増収増益だった。売上総利益は23.7%増加したが、売上総利益率は81.5%で0.4ポイント低下した。販管費は11.7%増加したが、販管費比率は71.6%で8.0ポイント低下した。
事業別売上高は、データネットワークサービスが同2.4%減の3億09百万円、データ利活用サービスが同66.2%増の3億35百万円だった。
データネットワークサービスはパッケージが減収だったが、経年ユーザー数の増加でメンテナンスは増収基調である。DPC分析ベンチマークシステム「EVE」導入病院数は790病院、病院経営支援システム「Medical Code」導入病院数は227病院となった。
データ利活用サービスの売上高の内訳は「MDV analyzer」が75百万円、アドホック調査サービスが2億48百万円、新規が11百万円だった。いずれも大幅増収で、特にアドホック調査サービスが認知度向上効果で大幅伸長した。診療データ分析ツール「MDV analyzer」利用社数は13社となった。
■17年12月期通期も大幅増収増益予想
今期(17年12月期)連結業績予想(2月13日公表)は、売上高が前期(16年12月期)比36.8%増の36億円、営業利益が同25.9%増の5億42百万円、経常利益が同29.9%増の5億40百万円、そして純利益が同74.9%増の3億11百万円としている。
第2四半期(4月~6月)以降に営業人員を積極採用し、データネットワークサービスで病院経営支援システム「Medical Code」の販売を強化する。投資回収に向けた積極的な営業活動で基盤事業を再成長させるとともに、新規事業の収益化も推進し、採用拡大(約40名採用予定)による人件費増加を吸収して5期連続増収増益予想である。
データネットワークサービスの売上高は34.5%増の19億94百万円(内訳はパッケージが21.3%増の7億41百万円、メンテナンスが8.2%増の8億71百万円、病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」等の新規が18倍の3億80百万円)としている。病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」は期末15病院への導入を目標とする。
データ利活用サービスは38.6%増の16億05百万円(内訳はアドホック調査サービスが24.9%増の10億75百万円、診療データ分析ツール「MDV analyzer」が4.9%増の2億76百万円、子会社・OTC・インシュアランス等の新規が3.7倍の2億54百万円としている。アドホック調査サービスの大型契約拡大、既存データによる新領域(医療材料メーカー、インシュアランス等)への本格展開、子会社・新規事業(MDVコンシューマー・ヘルスケア、Doctorbook等)の早期売上化を推進する。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は低水準の形だが、特にデータ利活用サービスにおいて下期偏重の特性があるためネガティブ要因とはならない。
■成長の第4フェーズで17年12月期から投資回収
中期成長イメージでは17年12月期~19年12月期を、成長の第4フェーズとして投資回収期に位置付けている。患者のリアルタイムデータ、地域医療の診療データ・画像データなども統合してデータ利活用ビジネスの急拡大を図り、売上高の増加とともに投資回収を開始する方針だ。
重点取り組みとして、2次医療圏344病院への「CADA-BOX」導入、データ基盤のさらなる拡大、データ利活用ビジネスの拡大、M&Aを含めた他社との協業を推進する。データ利活用の新領域としては、治験分野でのデータ活用を予定している。中期的に収益拡大基調、そして一段の高収益化が期待される。
■株主優待制度を16年12月期末から導入
株主優待制度は毎年12月31日現在の100株(1単元)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。16年12月期から導入した。配当は、患者のリアルタイムデータ集積によるデータ利活用サービスの拡大に目途がついた段階で検討していく方針だ。
■株価は上場来高値更新の展開
株価の動き(17年5月1日付で株式2分割)を見ると、上場来高値更新の展開で5月30日には2661円まで上伸した。4月高値2140円を突破して上げ足を速めた。
6月2日の終値2476円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS16円34銭で算出)は152倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式2分割を考慮した連結BPS140円44銭で算出)は18倍近辺である。時価総額は約495億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。目先的な過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)