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アンジェスMGは急動意で底放れの動き、HGF遺伝子治療薬の臨床研究進展期待
- 2017/6/7 07:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アンジェス MG<4563>(東マ)(17年7月1日付でアンジェスに商号変更予定)は、遺伝子医薬の創薬バイオベンチャーで遺伝子治療薬、核酸医薬、DNAワクチンの開発を推進している。5月に6例目の被験者への投与を開始したHGF遺伝子治療薬の医師主導型臨床研究の進展が期待される。株価は6月6日に急動意の形となった。第29回新株予約権の行使も進展し、底放れから水準切り上げの展開が期待されそうだ。
■遺伝子医薬のグローバルリーダー目指す創薬バイオベンチャー
遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す大阪大学発の創薬バイオベンチャーである。HGF(肝細胞増殖因子)遺伝子治療薬、NF-kBデコイオリゴ核酸医薬、DNA治療ワクチンなど、遺伝子の働きを活用した遺伝子医薬分野で開発を推進している。
自社開発品の販売権または開発販売権を製薬会社に供与し、契約に基づいて契約一時金収入、開発の進捗に対応したマイルストーン収入、上市後の売上に対する一定対価のロイヤリティ収入を得る。
日本では14年11月施行の「医薬品医療機器等法(改正薬事法)」で新たに再生医療等製品が定義され、遺伝子治療を含む再生医療等製品に対する早期承認制度が導入された。これによって遺伝子治療を含む再生医療分野に関しては、日本が世界で最も早く製品承認を取得できることなり、再生医療・細胞医療の早期実用化の促進が期待されている。なお当社が開発を進めているHGF遺伝子治療薬は、承認取得すれば先進国2番目の遺伝子治療薬となる可能性がある。
■複数のプロジェクトを保有してリスク分散
新薬開発は複数のプロジェクトを保有してリスク分散を図っている。重点プロジェクトの状況を整理すると以下のとおりとなる。
(1)重症虚血肢を対象とするHGF遺伝子治療薬は、国内では先進医療B制度の下、医師主導臨床試験を実施中である。6症例の実施を目指し、大阪大学医学部附属病院、徳島大学病院、愛媛大学医学部附属病院、神戸大学医学部附属病院に続いて、17年4月徳島大学病院で5例目、17年5月佐賀大学医学部附属病院で6例目の被験者への投与が開始された。条件および期限付承認制度によって17年半ばの申請、18年半ばの条件付承認獲得を目指す。
海外は計画を変更して米国で新たな試験計画を策定中である。新試験の概要がまとまり次第、米食品医薬品局(FDA)との協議を開始する。なお16年12月には米スタンフォード大学と協業の覚書を締結した。HGF遺伝子治療薬の新開発戦略構築をはじめ、DNAワクチンなど将来の事業分野を対象に幅広く協力を進める。
(2)原発性リンパ浮腫を対象とするHGF遺伝子治療薬は、国内で13年10月から第1・2相臨床試験を実施し、16年4月症例登録完了した。
(3)椎間板性腰痛症を対象とするNF-kBデコイオリゴDNAは米国における第1・2相臨床試験を準備中である。17年3月には米食品医薬品局(FDA)に申請していた新薬臨床試験開始届(IND)が承認されている。17年半ばからカリフォルニア州立大学サンディエゴ校などで第1b相臨床試験を開始する予定だ。
(4)次世代型デコイ核酸医薬キメラデコイの基盤技術開発を完了し、新たに開発を始めるデコイはキメラ型を主軸とする。STAT6とNF-kBという炎症に関わる2つの重要な因子を同時に抑制する働きをもった核酸医薬で、NF-kBのみをターゲットとした従来のデコイに比べて炎症を抑える効果が格段に高いことが期待される。
16年10月にはNF-kB・STAT6キメラデコイオリゴ核酸の開発プロジェクトが「平成28年度おおさか地域創造ファンド重点プロジェクト事業助成金」に採択された。また17年3月には、NF-kBデコイオリゴDNAおよび次世代型デコイ核酸医薬キメラデコイに関して、共同研究を実施しているカリフォルニア州立大学サンディエゴ校研究チームが、専門学会ORS 2017 Annual Meetingにおいて研究成果を報告した。
(5)次世代遺伝子医薬DNA治療ワクチン事業は、遺伝子治療薬、核酸医薬に次ぐ第3の柱として推進する。16年8月米バイオ企業Vical社への出資比率引き上げと事業提携で基本合意、16年9月高血圧DNAワクチンに関する物質特許(大阪大学と共同出願)が米国で成立、16年10月動脈硬化症を対象としたDNAワクチンに関する日本国内の用途特許が成立、16年12月米Vical社と戦略的事業提携契約を締結、17年1月DNAワクチンに関する日本における物質特許(16年9月米国で成立した特許と同じ内容)が成立した。また高血圧DNAワクチンの臨床試験を17年第1四半期からオーストラリアで開始する。
17年2月には、カナダのサスカチュワン大学と共同で進めているDNAワクチン技術を用いたエボラ出血熱抗血清製剤の開発に関して、良好な試験結果が得られたと発表した。次の段階として、当血清をエボラウイルスに感染した動物に投与して効果を確認する試験を、カナダで実施する計画としている。
17年3月には、当社寄付講座である先端臨床医学開発講座の鈴木淳一特任准教授のもとで実施された高血圧DNAワクチンに関する論文が、科学雑誌Nature誌の関連誌に掲載され、高血圧DNAワクチンが心機能障害にも有効であることを示唆したと発表している。
17年4月には米Vical社と慢性B型肝炎の治癒を目指した遺伝子治療薬の共同開発に関する契約を締結した。米Vical社が持つ遺伝子導入技術を使い、今後約1年をかけ、マウスを使った実験を共同で実施して効果を確認する。良い結果が得られた場合は次の段階に進むことを両社で協議する。また契約により、日本における開発・販売権を対象とした優先交渉権を獲得した。
また17年4月には、当社寄付講座である先端臨床医学開発講座の若山幸示特任助教のもとで実施された高血圧ペプチドワクチンに関する論文が、著名な米国医学雑誌Strokeに掲載されたと発表している。高血圧DNAワクチンが虚血性脳梗塞(脳卒中)の予防・治療にも有効であることを示唆する内容である。
(6)子宮頸部前がん治療ワクチン(CIN治療ワクチン)の独占的開発・製造・販売権については、森下仁丹に再許諾するライセンス契約を16年10月締結した。対価として契約一時金および将来の商業化時におけるロイヤリティを受け取る。
■17年12月期は赤字縮小予想
今期(17年12月期)の連結業績予想は、売上高が3億60百万円、営業利益が34億円の赤字、経常利益が34億円の赤字、純利益が34億円の赤字としている。16年12月期との比較で赤字が縮小する。提携企業からの契約一時金受領は見込まず、NF-kBアトピー性皮膚炎治療薬の国内臨床試験関連の費用が減少する。
第1四半期(1月~3月)は、売上高が83百万円、営業利益が10億35百万円の赤字、経常利益が10億30百万円の赤字、純利益が15億11百万円の赤字だった。特別損失に投資有価証券評価損4億76百万円を計上したため純利益は赤字が拡大したが、研究開発費が減少(8億75百万円で1億15百万円減少)して営業利益は赤字が縮小した。
■株価は底放れの動き
なお17年1月発行の第29回新株予約権(第三者割当、行使価額修正条項付、当初行使価額253円、総数8万個=800万株)の月間行使状況に関するリリースによると、5月末時点における未行使個数は3万7500個(375万株)である。
株価の動きを見ると、安値圏240円~260円近辺でのモミ合い展開だったが、6月6日は急動意の形となり、前日比78円(31.57%)高の325円まで急伸する場面があった。特段の材料は見当たらないが、底放れの動きだ。6月6日の終値は299円で時価総額は約219億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線、26週移動平均線、そして52週移動平均線を一気に突破した。第29回新株予約権の行使も進展し、底放れから水準切り上げの展開が期待されそうだ。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)