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インフォコムは上場来高値更新の展開、18年3月期増収増益・連続増配予想を評価
- 2017/6/16 08:33
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォコム<4348>(JQ)はITサービスや電子書籍配信サービスを主力としてIoT領域の事業創出も積極推進している。18年3月期も増収増益・連続増配予想である。株価は03年高値を突破して上場来高値更新の展開だ。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。
■ITサービス事業とネットビジネス事業を展開
帝人<3401>グループで、ITサービス(一般企業向けSIのエンタープライズ事業、ERPソフト「GRANDIT」や緊急連絡・安全確認サービスなどのサービスビジネス事業、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、)、および一般消費者向けネットビジネス(子会社アムタスの電子書籍配信サービス、eコマース、各種デジタルコンテンツの提供)を展開している。
17年3月期のセグメント別売上高構成比はITサービス54%、ネットビジネス46%、営業利益構成比(連結調整前)はITサービス42%、ネットビジネス58%である。収益面では、ITサービス事業は年度末にあたる第4四半期(1月~3月)の構成比が高い特性がある。
中期成長に向けて戦略的M&A・アライアンスも積極推進している。また新規事業の発掘を目的として米国シリコンバレーにインフォコムファンドを設立し、投資実績は30社超となっている。
■GRANDITはクラウド対応、ヘルスケアは地域包括ケア対応を強化
ITサービスのサービスビジネス事業では、GRANDIT導入企業数が900社を超えている。また緊急連絡・安全確認サービス「エマージェンシーコール」の導入企業数が1000社を超えている。15年9月には企業・団体向けMVNO(仮想移動体サービス事業者)サービスを開始した。
GRANDITはコンソーシアム方式により、業界を代表するSI企業のノウハウを集大成した完全Web-ERPソフトである。開発・販売を推進するGRANDITコンソーシアムはプライムパートナー14社、ビジネスパートナーを加えると58社で構成され、中期成長に向けてクラウド対応も強化している。
16年12月クラウド型ID管理サービス「OneLogin」の積極的な販売を目的としてTISインテックグループのTISと販売代理店契約を締結した。17年4月には働き方改革第1弾としてGRANDITユーザー向けにスマホで簡単入力できる経費精算クラウドサービス「G-tan経費精算」を開始した。17年5月にはGRANDIT事業の発展に貢献したパートナー企業を表彰する「GRANDIT AWARD 2016」を発表した。
ヘルスケア事業では帝人との連携も強化しながら、厚生労働省「地域包括ケア」に対応した医療ITからヘルスケアサービスへの展開を強化している。15年11月ソラスト<6197>とヘルスケア事業分野において業務・資本提携、リゾートソリューション<5261>とメンタルヘルスケア事業で協業開始、17年2月介護業務の負担軽減や効率化を実現するIoTシステムの実用化を進めるZ-Worksと資本業務提携した。
17年5月にはドローンを活用した血液検体搬送の共同事業に参画すると発表している。総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)の地域ICT振興型研究開発枠に採択された。
6月14日には藤田保健衛生大学、日本福祉大学、愛知県半田市と共同で、災害時の避難者の状況や避難所の状況等の情報を収集して災害対策本部に伝達する「災害救急医療・福祉情報システム」の開発に取り組むと発表した。
■ネットビジネスは主力の電子書籍配信「めちゃコミック」が伸長
ネットビジネスの電子書籍配信サービスでは、06年11月開始のスマートフォン・フィーチャーフォン向け電子書籍配信サービス「めちゃコミック」が国内トップクラスの地位を強固にし、月間サイト来訪ユニークユーザー数は約800万人(16年5月)に達している。13年11月開始のマルチデバイス対応電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調である。
電子書籍配信サービス分野はコンテンツ拡充と海外展開による事業拡大を推進している。14年10月シフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」を開始、15年2月アムタスが中国でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ社)と業務提携した。
15年9月には、中国およびアジア地域でのアニメ・マンガ版権の保護や産業の良質な発展の促進を目的として、アムタス、少年画報社、業務提携先の中国・ユーラボ社、および中国通信事業者のアニメ・マンガ関連部門、中国政府機関などと共同でアジア版権保護連盟を設立した。中国政府機関も参画することで版権侵害行為の取り締まりから法的手続きまで行うことができ、出版・版権元および運用企業の利益と権利を守ることが可能になる。
ソーシャルゲームについては15年4月自社タイトル開発・配信を終了し、国内外の人気ミニゲームの流通に特化している。
■IoT領域の事業創出を積極推進
IoT領域の事業創出も積極推進している。15年12月米EverySense社(14年7月IoTおよびM2M領域における共同開発を目的として当社、光電製作所、コーデンテクノインフォの3社共同で設立)が世界初のIoTデータ交換取引所を日本に開設した。また米Afero社と事業提携した。
16年4月一般社団法人インターネット協会のIoT推進委員会IoT実証実験ワーキンググループが推進するIoTソリューションの有効性実証実験に参画し、当社を含む7社でオフィス内環境モニタリング実証実験をスタートした。16年7月米EverySense社がIoTを通じて取得した測定データを提供する「情報仲介システム」の中核的な仕組みに関する日本国内の特許を取得した。16年10月農作物を栽培する土壌環境の状態表示を行うアプリケーション「SOIL MANAGER(ソイル マネジャー)」を開発した。
■新たな中期経営計画を策定して成長加速
17年2月には新中期経営計画(18年3月期~20年3月期)を発表し、基本方針を「成長の追求」と「成長を支える経営基盤の継続強化」とした。
成長の追求では電子コミックとヘルスケアを重点事業としてM&Aを積極推進し、AIやIoTを活用したビジネス展開も推進する。成長を支える経営基盤の継続強化では品質管理の継続強化とサービス品質向上、業務プロセス改革による効率化と社会との協業強化、人財育成強化を推進する。
経営目標数値には20年3月期売上高600億円~800億円、EBITDA(営業利益+償却費)70億円~100億円、重点事業(電子コミックとヘルスケア)比率70%、ROE10%以上、配当性向30%を掲げた。M&A戦略投資枠200億円を設定した。
電子コミック事業では最新IT技術による機能強化や、導線強化による会員数拡大を推進する。ヘルスケア事業では地域包括・介護領域への注力で売上高140億円規模への拡大を目指す。
■17年3月期は増収増益・連続増配
前期(17年3月期)の連結業績は売上高が前々期(16年3月期)比3.6%増の417億68百万円、営業利益が同7.9%増の47億76百万円、経常利益が同6.5%増の48億54百万円、純利益が同4.5倍の32億61百万円だった。
電子書籍配信サービスの好調が牽引して売上高、利益とも過去最高だった。売上総利益は同7.2%増加し、売上総利益率は47.0%で同1.6ポイント上昇した。販管費は同7.0%増加し、販管費比率は35.5%で同1.1ポイント上昇した。
純利益は自社保有データセンターによるサービス提供終了に伴う事業再編損25億45百万円が一巡し、事業再編損失引当金戻入益3億49百万円計上も寄与した。ROEは14.6%で同11.1ポイント上昇、自己資本比率は72.2%で同5.7ポイント上昇した。配当は同3円増配の年間25円(第2四半期末10円、期末15円)で、配当性向は21.0%だった。
セグメント別に見ると、ITサービスは売上高が同5.6%減の224億16百万円で営業利益(連結調整前)が同19.5%減の19億90百万円だった。企業向けは好調だったが、ヘルスケア事業が診療報酬改定等による医療機関でのIT投資抑制の影響を受けた。
ネットビジネスは、売上高が同16.7%増の193億52百万円で営業利益が同43.2%増の28億円だった。電子書籍配信サービスは「めちゃコミック」の有料会員数が100万人を突破するなど好調に推移し、電子書籍配信サービスの売上高は同19.4%増の180億円に拡大した。利益面では継続的なコスト削減策やEコマースの構造改革も寄与した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期89億06百万円、第2四半期104億30百万円、第3四半期97億36百万円、第4四半期126億96百万円で、営業利益は1億61百万円、14億49百万円、9億36百万円、22億30百万円だった。
■18年3月期も増収増益・連続増配予想
今期(18年3月期)の連結業績予想(4月27日公表)は売上高が前期(17年3月期)比10.1%増の460億円、営業利益が同11.0%増の53億円、経常利益が同9.2%増の53億円、純利益が同22.7%増の40億円としている。
EBITDAは同11.3%増の65億円としている。純利益にはデータセンター売却による特別利益計上(約9億円)を見込んでいる。配当予想は同10円増配の年間35円(第2四半期末10円、期末25円)で予想配当性向は23.9%となる。
セグメント別の計画を見ると、ITサービスはヘルスケア事業が回復して売上高が同4.9%増の235億円、新規ビジネスへの先行投資負担を吸収して営業利益が同5.5%増の21億円としている。ネットビジネスは電子書籍配信サービスが伸長して売上高が同16.3%増の225億円、営業利益が同14.3%増の32億円としている。電子書籍配信サービスの売上高目標は210億円としている。
なお新横浜DC(17年6月までに稼働停止、17年9月29日物件引渡・譲渡代金決済予定)によるサービス提供終了によって、運用コスト低減や、固定資産である建物・設備劣化に対する改修・新規投資の抑制など、データセンターのコモデティ化による売上減少回避なども含めて、10年間で約40億円の費用削減効果が得られる見込みとしている。中期的にも収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は毎年9月末に実施
株主優待制度は毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。
■株価は上場来高値更新の展開
株価の動きを見ると6月6日に2255円まで上伸し、03年10月高値2247円を突破して上場来高値更新の展開となった。好業績を評価する動きだろう。
6月15日の終値2166円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS146円29銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間35円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS861円50銭で算出)は2.5倍近辺である。時価総額は約624億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)