ファーストコーポレーションは調整一巡、18年5月期も収益拡大基調

 ファーストコーポレーション<1430>(東1)は分譲マンション建設に特化したゼネコンである。強みを持つ造注方式で高利益率を特徴としている。17年5月期大幅増収増益である。高水準の受注残で18年5月期も収益拡大基調が予想される。株価は5月の年初来高値から反落したが調整一巡し、好業績を評価して上値を試す展開が期待される。なお7月7日に17年5月期決算発表を予定している。

■東京圏の分譲マンション建設に特化したゼネコン

 東京圏(1都3県)の分譲マンション建設に特化したゼネコンである。11年6月設立からスピード成長で15年3月東証マザーズに新規上場し、16年12月東証1部に市場変更した。

■造注方式で高利益率が特徴、アグレッシブな事業展開でスピード成長

 造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、そして品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。

 造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。当社がマンション・デベロッパーを選定して条件を交渉するため入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。

 造注方式に関しては、ゼネコンとして土地開発の専任部隊を有していることが強みであり、新規顧客の開拓、取引条件や収益性の向上、適正な工期の設定、JV案件の成約などに繋がる。分譲マンション建設のスペシャリストとして、造注方式を核としたアグレッシブな事業展開がスピード成長を可能にしている。

 品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。

 建設請負先は飯田グループ、タカラレーベン、NTT都市開発、三井不動産レジデンシャル、阪急不動産など、大手を中心とする優良なマンション・デベロッパーである。アグレッシブな事業展開で、新規顧客開拓や案件大型化も進展している。

 なお収益面では受注高・受注残高の動向がポイントとなる。また完成工事高の収益認識は工事進行基準だが、不動産売上(マンション用地販売)によって四半期業績が変動する可能性がある。

■17年5月期第3四半期累計は大幅増収増益

 前期(17年5月期)第3四半期累計(6月~2月)の非連結業績は売上高が前年同期比54.3%増の176億20百万円、営業利益が同43.7%増の16億16百万円、経常利益が同47.3%増の15億68百万円、純利益が同51.9%増の10億73百万円だった。

 不動産売上計上や竣工物件の収支改善などで大幅増収増益だった。売上高の内訳は完成工事高が同0.8%増の108億12百万円、不動産売上が同11.0倍の66億22百万円、その他が同2.1倍の1億85百万円だった。

 売上総利益は同43.9%増加したが、売上総利益率は12.7%で同0.9ポイント低下した。不動産売上が大幅増加したため全体の売上総利益率が低下したが、完成工事総利益率は14.8%で同1.0ポイント上昇した。販管費は同44.4%増加したが、販管費比率は3.5%で同0.2ポイント低下した。

 受注実績は阪急不動産のジオ新宿若松町(竣工予定18年5月)、オスタラ・ヘルスケア・ワン特定目的会社の佐島1丁目老人ホーム計画(同18年4月)、中央住宅のルピアコート西大宮計画(同18年3月)、NTT都市開発・安田不動産のウエリス新宿西早稲田の森(同18年8月)、アーネストワンのサンクレイドル日本橋小伝馬町(同18年8月)、三栄建築設計のメルディアレジデンス藤ヶ丘(同18年5月)、日本エスコンのレ・ジェイド川崎(同18年3月)の7件・696戸で合計172億48百万円だった。このうち造注方式による受注高は120億91百万円で、受注高に占める造注比率は70.1%だった。

 マンション建設用地の確保は、東京都文京区(デベロッパーと建築請負契約で17年6月着工予定)、東京都江戸川区(デベロッパーと建築請負契約で17年6月着工予定)、千葉県柏市(デベロッパーから買付証明書入手で17年9月着工予定)、神奈川県横須賀市(17年1月共有持分取得に関する契約締結で17年11月着工予定)の4件である。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期79億92百万円、第2四半期49億80百万円、第3四半期46億48百万円、営業利益は6億74百万円、3億42百万円、6億円だった。

■17年5月期通期増収増益予想、18年5月期も収益拡大基調

 前期(17年5月期)通期の非連結業績予想(7月8日公表)は、売上高が前々期(16年5月期)比34.2%増の218億42百万円、営業利益が同19.1%増の19億08百万円、経常利益が同21.3%増の18億36百万円、そして純利益が同23.4%増の12億70百万円としている。受注残が高水準で大幅増収増益予想である。

 売上高の内訳は完成工事高が同3.6%増の142億76百万円、不動産売上が同4.2倍の72億81百万円、その他が同41.7%増の2億83百万円である。売上総利益率は同1.6ポイント低下の12.0%(うち完成工事総利益率は同0.8ポイント上昇の13.9%)、販管費比率は同0.5ポイント低下の3.3%としている。不動産売上が大幅増加するため全体の売上総利益率は低下するが、完成工事総利益率は上昇する見込みだ。

 受注高の計画は同2.4倍の269億88百万円(15件)で、うち造注方式の受注高が同5.5倍の176億33百万円(受注高に占める造注比率65.3%)としている。なお通期受注計画に対する第3四半期累計の進捗率は63.9%である。期末受注残高は同2.1倍の291億99百万円の計画だ。高水準の受注残を背景に今期(18年5月期)も収益拡大基調が予想される。

 なお配当予想(12月6日に増額修正)は期末に市場変更記念配当6円を実施して年間37円(期末一括)としている。16年5月期との比較では11円増配で、予想配当性向は36.5%となる。

■中期経営計画で19年5月期経常利益30億89百万円目標

 中期経営計画「Innovation 2016」では、3ヶ年を永続的な繁栄を目指すための基盤づくりの期間と位置づけて、営業・開発部門のさらなる強化による造注方式の拡大、新規顧客開拓による東京圏(1都3県)での市場シェアの拡大、施工能力の量的・質的な拡充、内部管理体制強化を含めた業容拡大を支える体制の構築、施工品質を保ちながらの生産性向上、投下資本の効率運用による高収益体質の追求などを推進する。事業基盤強化に向けてM&Aも積極活用する方針だ。

 目標数値には19年5月期の売上高350億59百万円、経常利益30億89百万円、受注高310億40百万円、期末受注残高398億56百万円を掲げている。戸当たり受注単価および完成工事総利益率は概ね横這い推移を見込み、受注面積の拡大で中期成長を目指す方針だ。

 また財務面の目標数値としては、自己資本比率40%超、ROA20%超、ROE40%を超える水準の維持を掲げている。財務体質の改善による企業価値の向上を目指す方針だ。利益還元については配当性向30%維持を基本方針として、新たに株主優待制度も導入(16年11月30日から開始)した。内部留保の状況により、可能な範囲で配当性向の向上を検討するとしている。

■事業環境良好で中期成長余地大きい

 東京圏(1都3県)の分譲マンション建設市場に関しては、杭施工問題発覚後の供給抑制も影響して2016年の供給戸数が前年比減少したが、好立地物件を中心に着工戸数ベースでは好調が続いている。

 また大手ゼネコンは、大型都市再開発事業や2020年東京五輪関連工事などで手持ち工事が豊富なこともあり、マンション建設請負に消極的である。このため当社にとって大手ゼネコンとの競争が大幅に緩和されている状況だ。さらに16年5月期における当社の施工実績551戸は市場シェア1.36%に過ぎず、市場シェアアップ余地が大きい。

 また当面のマンション建設コスト上昇懸念は低下している。こうした状況を考慮すれば、当社にとっては市場規模よりも、市場シェア拡大による中期的な成長余地が大きいと言えるだろう。

■株主優待制度は毎年11月末に実施

 株主優待制度は毎年11月30日現在で、100単元(1万株)未満保有株主に対してクオカード1000円分、100単元以上保有株主に対してクオカード2000円分を贈呈する。

■株価は調整一巡感

 株価の動きを見ると、5月26日の年初来高値1196円から配当権利落ちで反落したが、1000円を割り込むことなく推移して調整一巡感を強めている。

 6月15日の終値1037円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS101円37銭で算出)は10~11倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間37円で算出)は3.6%近辺である。時価総額は約138億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインの形だ。調整一巡し、好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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