ジャパンフーズは戻り高値圏、18年3月期増益予想や低PBRを見直して上値試す

 ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託生産の国内最大手である。加工料収入が堅調に推移して18年3月期(連結決算に移行)も増益予想である。中期経営計画では「日本一のパッカー」を目指し、競争力の一段の向上を図る方針だ。株価は戻り高値圏でモミ合う展開だが、好業績や低PBRを見直して上値を試す展開が期待される。

■飲料受託生産の国内最大手

 伊藤忠商事<8001>系で飲料受託生産の国内最大手である。主要得意先はサントリー食品インターナショナル<2587>、伊藤園<2593>、アサヒ飲料などの大手飲料メーカーで、品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。

 17年3月期製造数量(ケース数)の品目別構成比は炭酸飲料63.7%、茶系飲料13.7%、酒類飲料6.6%、コーヒー飲料5.5%、果実飲料4.2%、機能性飲料等6.2%である。容器別構成比はPETボトル70.6%(うち大型PET26.2%、小型PET・ボトル缶44.4%)、SOT缶19.8%、広口ボトル缶(TEC缶含む)6.3%、瓶1.7%、その他1.7%である。
■フレキシブルで効率的な生産に強み

 本社工場では12年7月に世界最新鋭の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン(Eライン)が稼動し、14年3月には既存の大型ペットボトルライン(Tライン)もリバイタライズ(機能増強)で炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン化した。さまざまな容器(ペットボトル、瓶、缶)の飲料を世界最大級の本社1工場で生産し、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産を強みとしている。

 また本社工場のある千葉県長柄町は、首都圏に近いロケーションという競争優位性に加えて、表層地盤の揺れやすさが0.4~0.6と安定しているため災害優位性にも優れている。

■新規ビジネスも積極展開

 新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)も積極展開している。

 17年4月には当社の水宅配事業を子会社JFウォーターサービス(旧ジャパンジュースプロセッシングが商号変更)に承継させた。これに伴って18年3月期から連結決算に移行する。

 また国内で水宅配事業を展開するウォーターネット、中国における日系初の清涼飲料受託製造会社である東洋飲料(東洋製罐と合弁)については、18年3月期から持分連結を開始する。

 自社ブランド商品は、本社工場がある千葉県産の農林水産物を使用した商品「おいしい房総サイダー」シリーズなどを千葉県中心に販売している。

■上期(4月~9月)繁忙期、下期(10月~3月)閑散期の収益構造

 個人消費や天候などの影響を受けやすいことに加えて、飲料業界全体が夏場の上期(4~9月)に繁忙期となり、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。

 なお16年3月期から一部飲料メーカーとの取引形態が、有償支給(顧客指定の原材料を購入し、加工料+原材料費で売上計上する方法)から、無償支給(顧客指定の原材料を受給し、加工料を売上計上する方法)に変更された。このため見かけ上の売上高は大幅に減少しているが、実質的な売上高である加工料収入に影響はない。また建物およびリース資産を除く有形固定資産の減価償却方法について、16年3月期から「主として定率法」を「主として定額法」に変更した。

■17年3月期は加工料収入増加やコストダウン効果で増益

 前期(17年3月期)非連結業績は売上高が前々期(16年3月期)比4.2%減の151億18百万円だが、営業利益が同7.6%増の11億54百万円、経常利益が同10.1%増の11億67百万円、純利益が同64.6%増の7億16百万円だった。一部顧客との取引形態変更で見かけ上は減収だが、受託製造数量および加工料収入が増加し、ユーテリティ関連コスト削減効果などで増益だった。

 受託製造数量は同2.6%増の4230.5万ケースだった。9月の残暑や10月以降の好天も寄与して飲料業界全体の販売数量が同2%増(飲料総研調べ)と堅調に推移したことに加えて、積極的な受注活動を推進し、一部ブランドオーナーによる在庫調整の影響を吸収して受託製造数量が増加した。

 売上総利益は同5.0%増加した。加工料収入が3.5%増加し、新規商材獲得に伴うプロダクトミックス改善やコストダウンが寄与した。販管費は同3.6%増加にとどまった。特別利益では国庫補助金10億76百万円が一巡したが、特別損失では固定資産圧縮損7億71百万円、関係会社株式評価損3億80百万円が一巡した。ROEは9.3%で同3.3ポイント上昇、自己資本比率は42.2%で同4.8ポイント上昇した。

 配当は前々期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)とした。配当性向は18.2%である。配当の基本方針は、健全な財務体質を目指し、将来の事業発展に備えた設備投資等のための内部留保を確保する一方、業績に応じた安定かつ継続的な配当を行うとしている。

 なお四半期別の業績推移を見ると、受託製造数量は第1四半期1320.0万ケース、第2四半期1214.0万ケース、第3四半期774.8万ケース、第4四半期921.7万ケースで、売上高は49億円、41億44百万円、30億16百万円、30億58百万円、営業利益は10億44百万円、7億60百万円、3億76百万円の赤字、2億74百万円の赤字だった。

■18年3月期(連結決算に移行)も増益予想

 今期(18年3月期、連結決算に移行)の連結業績予想(4月27日公表)は、売上高が前期(17年3月期)の非連結業績との比較で5.7%増の159億80百万円、営業利益が同4.9%増の12億10百万円、経常利益が同4.5%増の12億20百万円、純利益が同11.7%増の8億円としている。

 新規商材受託などで受託製造数量が増加し、実質的な売上高となる加工料収入および売上総利益が増加する。コストダウン効果も寄与して増益予想である。配当予想は前期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。予想配当性向は16.3%となる。

■中期経営計画で19年3月期ROE10.9%目標

 16年度~18年度対象の新中期経営計画「“JUMP+2018”-躍動-」では、成長戦略の方向性・キーワードを「戦略的パートナーシップ」「自立自発」「100年企業」「イノベーション」とした。そして2つの成長戦略は、コアビジネス(国内飲料受託製造事業)の収益拡大と、新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)の着実な推進としている。

 コアビジネスでは「名実ともに日本一のパッカー」を目指し、経営課題としている「ふ(防ぐ)」「け(削る)」「か(稼ぐ)」を確実に実行する。品質向上の追求、ローコストオペレーション(生産効率・稼働率・原単位の向上)、新規商材の取り込みを積極推進するとともに、既存設備S&B(スクラップ&ビルド)などの積極投資を推進して競争力向上を図る。

 新規ビジネス分野では、もう一つの経営基盤構築に向けて、戦略的パートナーシップも活用して業容拡大を目指す。中国の(TPC)は東洋飲料16年度に黒字化し、17年度には経常黒字化を目指している。またウォーターネットは黒字が定着し、さらなる収益拡大を目指している。

 経営目標値(18年3月期から連結決算に移行)としては、19年3月期連結売上高168億円、営業利益19億円、経常利益16億円(コアビジネス80%、新規ビジネス20%)、当期純利益10億円、ROE10.9%、ROA4.9%を掲げている。

 設備投資額は17年3月期(非連結)実績が24億13百万円で、18年3月期は79億50百万円、19年3月期は10億円の計画である。S&Bの第1フェーズとして本社工場内に工場建屋、ペットボトルブロー成型機および充填ラインの新設を行う。投資額は約65億円、稼働時期は18年1月予定である。

■飲料受託生産の役割・存在感高まり、競争力強化で中期成長期待

 飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量の減少を懸念する見方もあるようだが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。

 このため飲料受託生産の役割や存在感は一段と高まっている。そして当社は飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮することが期待される。さらに一段の競争力強化に向けた投資の成果により、受託製造数量増加、プロダクトミックス改善、コストダウンが進展して中期成長が期待される。

■株主優待制度は毎年3月末に実施

 株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈している。

■株価は戻り高値圏、好業績や低PBRを見直して上値試す

 株価の動きを見ると、戻り高値圏1300円台でモミ合う展開だが、6月16日には1389円まで上伸してモミ合い上放れの動きを強めている。

 6月16日の終値1380円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS165円88銭で算出)は8~9倍近辺で、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は2.0%近辺、前期実績PBR(前期実績の非連結BPS1659円85銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約70億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって13週移動平均線を突破した。好業績や低PBRを見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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