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インフォマートは上場来高値更新の展開、利用企業数増加基調で17年12月期大幅増収増益予想
- 2017/6/19 06:43
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1)は企業間電子商取引「BtoBプラットフォーム」を運営している。利用企業数が増加基調で17年12月期大幅増収増益予想である。株価は好業績を評価し、15年高値を突破して上場来高値更新の展開だ。
■企業間(BtoB)電子商取引プラットフォームを運営
企業間で行われている世界共通の商行為を電子化する企業間電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」として、企業間受発注業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注、食の安全・安心の商品仕様書DBであるBtoBプラットフォーム規格書、企業間請求書発行・受取業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム請求書、BtoB専用の販売・購買システムであるBtoBプラットフォーム商談を運営している。
システムをネット経由で提供するクラウド型サービスのため、ネット環境さえあれば月々低料金で最新サービスを利用できるため利用企業数は増加基調である。そして利用企業数増加に伴って月額課金のシステム使用料収入が増加するストック型収益モデルである。17年5月には、主力の受発注事業および規格書事業における新システム「食の安心・安全 受発注」を稼働した。規格書を受発注と連携させ、2つのサービスをパッケージ化した。
16年12月期の事業セグメント別売上構成比は受発注事業(BtoBプラットフォーム受発注)61%、規格書事業(BtoBプラットフォーム規格書)19%、ES事業(BtoBプラットフォーム請求書とBtoBプラットフォーム商談)20%、その他(海外・メディア事業など)2%である。
■利用企業数は増加基調でFinTech分野にも参入
フード業界向けで外食チェーンと食材卸の間の受発注をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注を主力として、全業界を対象とするBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数も増加基調である。
16年12月期末のBtoBプラットフォーム利用企業数(無料利用含む全業界ID数で集計、海外除く)は15年12月期末比6万3011社増加の12万5050社、事業所数(本社・支店・営業所・店舗)は同12万4390事業所増加の40万4557事業所である。また流通金額(全業界の受発注金額と請求書金額の合計)は2兆2942億円となった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
利用企業数のうち受発注は、買い手企業数が同320社増加の2026社、売り手企業数が同1655社増加の2万9895社となった。15年1月サービス開始した請求書の利用企業数合計は16年12月期末に12万4401社となり、2016年の流通金額は9095億円に成長した。さらに増加ペースが加速して17年5月には14万社を突破している。
FinTech分野に関しては、16年8月3メガバンクと連携してFinTech分野に参入すると発表、16年9月野村証券へのBtoBプラットフォーム請求書提供を発表、16年11月三井住友カードと法人カードの決済データを活用した電子請求書サービスの提供に向けて協業することに合意した。
請求書関連業務の新たなモデル作りのため各金融機関・パートナーとともにFinTech分野の実証実験を行い、17年12月に利用企業数30万社、電子請求の年間流通金額2兆円を目指すとしている。なおリクルートホールディングス<6098>が16年8月、新規事業としてオンライン完結型融資の事業展開を目指してFinTech企業との提携を検討し、当社と協業検討開始に関する基本合意書を締結したと発表している。事業開始は17年夏頃を予定している。
■業界標準化に向けたシステム連携を強化
業界標準化に向けたシステム連携を強化しており、16年12月期末時点におけるBtoBプラットフォーム受発注システムの連携は86社・105ソリューションに拡大している。企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を追求し、BtoB標準プラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化し、利用企業数100万社への普及を目指すとしている。
また16年7月には、BtoBプラットフォーム受発注の英語版をシンガポールの日本の外食15店舗へ提供開始している。世界の英語圏各国にBtoBプラットフォーム受発注を提供できるシステムが整い、利用促進を行う。
■17年12月期第1四半期は増収増益
17年12月期第1四半期(1月~3月)連結業績は売上高が前年同期比8.2%増の15億87百万円で、営業利益が同9.2%増の5億16百万円、経常利益が同11.2%増の5億07百万円、純利益が同15.6%増の3億41百万円だった。
利用企業数が増加基調であり、受発注、規格書、ESともストック型のシステム使用料が順調に増加し、システム開発強化によるソフトウェア償却費の増加や、事業成長に向けた人員増に伴う人件費の増加などを吸収して増収増益だった。
売上総利益は同3.6%増加したが、売上総利益率は67.6%で同3.0ポイント低下した。販管費は同1.1%減少し、販管費比率は35.1%で同3.3ポイント低下した。売上原価ではソフトウェア償却費が増加したが、販管費では販促費が減少した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、受発注は売上高が同9.5%増の9億64百万円で営業利益が同4.1%増の4億63百万円、規格書は売上高が同15.1%増の3億10百万円で営業利益が同85.2%増の1億43百万円、ESは売上高が同4.4%増の3億04百万円で営業利益が77百万円の赤字(前年同期は46百万円の赤字)、その他は売上高が同45.9%減の18百万円で営業利益が12百万円の赤字(同3百万円の赤字)だった。
第1四半期末のBtoBプラットフォーム利用企業数(無料利用含む全業界ID数で集計、海外除く)は16年12月期末比9243社増加の13万4293社、事業所数(本社・支店・営業所・店舗)は同1万9058事業所増加の42万3615事業所となった。利用企業数のうち受発注は、買い手企業数が同57社増加の2083社、売り手企業数が同602社増加の3万497社となった。請求書の利用企業数合計は同9270社増加の13万3671社となった。システム連携は88社・107ソリューションとなった。
■17年12月期通期は大幅増収増益予想、実質増配予想
今期(17年12月期)通期の連結業績予想(2月14日公表)は、売上高が前期(16年12月期)比28.4%増の79億円、営業利益が同33.1%増の26億03百万円、経常利益が同33.5%増の26億円、純利益が同42.9%増の17億22百万円としている。
利用企業数が増加基調でストック型収益の月額課金システム使用料が伸長し、ソフトウェア償却費や人件費の増加を吸収して大幅増収増益予想である。売上総利益率は0.6ポイント低下の69.9%、販管費比率は1.7ポイント低下の37.0%の想定としている。
なおセグメント別の計画は、受発注の売上高が同29.5%増の48億29百万円で営業利益が同10.6%増の21億92百万円、規格書の売上高が同18.9%増の13億76百万円で営業利益が同97.3%増の6億06百万円、ESの売上高が同26.7%増の15億35百万円で営業利益が2億09百万円の赤字(前期は2億92百万円の赤字)、その他の売上高が同2.1倍の1億97百万円で営業利益が18百万円の黒字(同39百万円の赤字)としている。
配当予想は年間6円54銭(第2四半期末3円27銭、期末3円27銭)としている。17年1月1日付株式2分割を考慮して前期の11円80銭を5円90銭に換算すると、実質的に64銭増配となる。予想配当性向は49.3%である。配当政策は個別業績に応じた配当性向50%を基本方針としている。
第1四半期の進捗率は通期予想に対して売上高20.1%、営業利益19.8%、経常利益19.5%、純利益19.8%と低水準の形だが、ストック型収益構造のためネガティブ要因とはならない。第2四半期累計(1月~6月)に対しては売上高が46.6%、営業利益が60.6%、経常利益が59.6%、純利益が60.6%と高水準であり、通期利益予想に増額余地がありそうだ。
■中期経営計画で18年12月期の受発注5万社と請求書100万社目標
中期経営計画では基本方針を、フード業界におけるBtoBプラットフォーム受発注の利用拡大・シェア拡大、BtoBプラットフォーム請求書の全業界展開・デファクト化、BtoB電子商取引プラットフォームの構築としている。
フード業界におけるシェア拡大では18年12月期までの目標として利用企業数5万社(15年12月期実績3.9万社)およびシステム取引高・外食シェア2兆円・30%(同1.2兆円・16%)を目指す。電子請求プラットフォームのデファクト化では18年12月期までの目標として利用企業数100万社(同4.8万社)およびシステム取引高3兆円(同1261億円)を目指す。BtoB電子商取引プラットフォームの構築ではシステムコンセプトとして全業界対応BtoBプラットフォーム(同フード業界ASPシステム)を目指す。
目標値には18年12月期売上高95億円(受発注47億28百万円、規格書15億44百万円、ES28億39百万円、その他4億29百万円)、営業利益36億03百万円、経常利益36億円、純利益24億23百万円を掲げた。配当については個別業績に基づく基本配当性向50%を継続し、17年12月期年間配当13円08銭、18年12月期の年間配当17円48銭を計画している。
そして2020年までに、あらゆる業界にBtoBプラットフォームを提供し、グローバルなBtoBインフラ企業を目指すとしている。積極的な事業展開で中期成長シナリオに変化はないだろう。
■株価は15年の上場来高値に接近、好業績評価して上値試す
なお6月14日に主要株主からの自己株式取得を発表している。主要株主である村上勝照(代表取締役社長)の逝去に伴い、村上勝照が所有する当社株式のうち80%(発行済株式総数に対する割合11.89%)を当社へ無償譲渡する旨の遺言に基づき、株主価値の向上と将来的に有効利用を図るため応じることとした。
株価の動き(17年1月1日付で株式2分割)を見ると、15年7月高値845円を突破して上場来高値更新の展開となった。6月16日には923円まで上伸した。
6月16日の終値905円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS13円46銭で算出)は67倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円54銭で算出)は0.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS76円02銭で算出)は12倍近辺である。時価総額は約1174億円である。
週足チャートで見ると700円近辺のフシを突破して上げ足を速めた形だ。そして13週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)