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ゼリア新薬工業は自己株式取得発表を好感して年初来高値更新
- 2017/6/20 06:57
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。18年3月期増収増益・増配予想である。株価は6月16日発表した自己株式取得を好感して年初来高値を更新した。上値を試す展開が期待される。
■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。17年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業53%、コンシューマーヘルスケア事業47%、その他0%、営業利益構成比(連結調整前)は医療用医薬品事業17%、コンシューマーヘルスケア事業80%、その他2%である。海外売上比率は24.6%である。
医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」を主力として、H2受容体拮抗剤「アシノン」や亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」なども展開している。13年6月には自社開発の機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」を発売し、アステラス製薬<4503>と共同で早期の市場浸透を目指している。14年9月には日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品「プレフェミン」(要指導医薬品)を販売開始した。
コンシューマーヘルスケア事業は、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力としている。また連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品の取り扱いを開始し、直販対象製品を全国の薬局・薬店・ドラッグストアに販売している。
収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。
■グローバル展開を推進
M&Aを活用してグローバル展開も推進している。08年10月基礎化粧品のイオナ、09年9月「アサコール」の開発会社ティロッツ社(スイス)、10年9月コンドロイチン原料のZPD社(デンマーク)を子会社化した。13年8月ビフォーファーマ社(スイス)と鉄欠乏症治療剤「Ferinject」の日本国内における独占的開発・販売契約締結、ZPD社の株式を追加取得して完全子会社化した。15年4月ベトナムの中堅医薬品製造販売会社F.T.Pharma社の株式49.0%を取得した。
■アストラゼネカのIBD治療剤の権利取得
15年7月子会社ティロッツ社(スイス)がアストラゼネカ社から、炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」(一般名:ブデソニド)の米国を除く全世界における権利を取得した。IBDは潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を含めて世界中に約500万人の患者が存在すると推定されている疾患である。CDを適応症とする「Entocort」の権利取得により、IBD治療においてUCの第1選択薬として用いられている「アサコール」を補完する。
そして16年9月CDを適応症する「ゼンタコートカプセル」として国内での製造販売承認を取得、16年11月発売開始した。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
新薬開発は消化器分野を最重点領域と位置付けて、国際的に通用する新薬の創製を念頭に置き、自社オリジナル品の海外での臨床試験を積極的に推進するとともに、海外で実績のある薬剤を導入して国内での開発を進めている。
17年5月潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」に関して、厚生労働省から新用法・用量(Z-206、一般名メサラジン、協和発酵キリンと共同開発)の承認を取得した。
膵臓癌を適応症とする「Z-360」は日本を含むアジア地域でフェーズ2国際共同治験中、子宮頸癌を適応症とする「Z-100」は日本を含むアジア地域でフェーズ3国際共同治験中、ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズ3段階である。
なおエーザイ<4523>(その後16年4月にEAファーマがエーザオから契約上の地位を引き継ぎ)の新規化合物「E3710」(プロトンポンプ阻害剤:PPI)に関して14年8月ライセンス契約を締結したが、6月16日にライセンス契約終了を発表した。開発計画を再検討した結果、開発を中止することとなった。日本における独占的開発権、共同販促権、非独占的製造権をEAファーマに返却する。
海外は、中国で潰瘍性大腸炎を適応症として「Z-206」(メサラジン)を承認申請中、潰瘍性大腸炎を適応症とする「TP05」(メサラジン)は欧州で承認申請中である。自社開発「Z-338」(アコチアミド)は欧州で機能性ディスペプシアを対象としたフェーズ3を実施し、北米ではフェーズ2が終了した。導入品で家族性大腸腺腫症を適応症とする「TP09」は欧州・米国でフェーズ3段階である。
■17年3月期は国内薬価改定で営業微減益
前期(17年3月期)の連結業績は売上高が前々期(16年3月期)比3.8%増の648億49百万円、営業利益が同0.5%減の45億41百万円、経常利益が同0.3%減の44億38百万円、純利益が同0.9%増の35億44百万円だった。
医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業とも増収だったが、国内での潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」薬価改定の影響や、広告宣伝費の増加などで営業微減益だった。差引売上総利益は同4.8%増加し、差引売上総利益率は72.0%で同0.7ポイント上昇した。販管費は同5.4%増加し、販管費比率は65.0%で同1.0ポイント上昇した。研究開発費は84億58百万円で同1.4%減少した。
特別利益では投資有価証券売却益が減少(前々期10億87百万円、前期8億07百万円)した。特別損失では前々期計上の投資有価証券評価損1億18百万円が一巡したが、減損損失が増加(前々期1億43百万円、前期3億18百万円)した。法人税等合計が減少して純利益は微増益だった。
ROEは5.6%で同横ばい、自己資本比率は55.4%で同1.9ポイント上昇した。配当は同1円増配の年間32円(第2四半期末16円、期末16円)とした。配当性向は48.0%である。
セグメント別には、医療用医薬品事業は売上高が同1.6%増の344億30百万円で営業利益(連結調整前)が同42.9%減の17億16百万円だった。潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」は、国内が薬価改定や後発品の影響で苦戦したが、海外が堅調に推移した。炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」は順調に拡大した。機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」は市場構築が計画に対して遅れている。
コンシューマーヘルスケア事業は売上高が同6.5%増の302億77百万円で営業利益が同20.3%増の79億81百万円だった。テレビCMなどの広告宣伝活動によって製品認知度が向上し、製品ラインナップ強化も奏功して特にコンビニ向けヘパリーゼW群が好調だった。コンドロイチン群も圧倒的な市場シェアを堅持した。その他(保険代理業・不動産賃貸収入)は売上高が同6.8%減の1億42百万円で営業利益が同2.3%増の2億46百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期164億88百万円、第2四半期158億25百万円、第3四半期167億30百万円、第4四半期158億06百万円、営業利益は17億20百万円、14億28百万円、4億93百万円、9億円だった。
■18年3月期増収増益・増配予想、主力製品が伸長
今期(18年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は売上高が前期(17年3月期)比4.9%増の680億円、営業利益が同10.1%増の50億円、経常利益が同12.7%増の50億円、純利益が同7.2%増の38億円としている。配当予想は同2円増配の年間34円(第2四半期末17円、期末17円)で予想配当性向は47.5%となる。
医療用医薬品事業では、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」が海外で伸長し、炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」の寄与、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場構築などで増収を見込んでいる。コンシューマーヘルスケア事業では、ヘパリーゼ群などの主力製品の伸長を見込んでいる。研究開発費が高水準に推移して広告宣伝費も増加するが、増収効果で吸収して増益・増配予想である。
■株主優待は毎年9月末と3月末の年2回実施
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主に対して、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈する。
■株価は調整一巡して戻り歩調
6月16日に自己株式取得を発表した。取得株式総数の上限180万株(自己株式除く発行済株式総数に対する割合3.39%)で、取得価額総額の上限36億円、取得期間17年6月19日~17年11月2日としている。
株価の動きを見ると1700円台でモミ合う展開だったが、6月16日発表した自己株式取得を好感し、6月19日に1940円まで急伸して年初来高値を更新した。
6月19日の終値1925円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS71円54銭で算出)は26~27倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間34円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1192円73銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約1023億円である。
週足チャートで見ると窓を開けて急伸し、26週移動平均線を突破した。上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)