- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 生化学工業は自律調整一巡して上値試す、18年3月期大幅増益予想
生化学工業は自律調整一巡して上値試す、18年3月期大幅増益予想
- 2017/6/20 06:55
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。6月16日には変形性膝関節症治療剤SI-613の米国における第2相臨床試験開始を発表している。18年3月期は海外の好調が牽引して大幅増益予想である。株価は5月の年初来高値から一旦反落したが、自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。
■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー
糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。
17年3月期の売上構成比は、医薬品事業が82%(国内医薬品55%、海外医薬品23%、医薬品原体4%)で、LAL事業が18%である。収益は販売数量、薬価改定、為替、研究開発費、受取ロイヤリティーなどが影響する。高齢者人口増加を背景に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。
■新薬開発は糖質科学分野に焦点
研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞り、国際競争力を確立する「グローバル・カテゴリー・ファーマ」としての発展を目指している。
開発中の新薬としては、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603(コンドリアーゼ)、変形性膝関節症改善剤SI-613(NSAID結合ヒアルロン酸)、ドライアイ治療剤SI-614(修飾ヒアルロン酸)がある。
腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603は日本で14年1月に製造販売承認申請して審査継続中である。品質管理に関する審査対応に時間を要している。米国では第3相臨床試験段階として、二重盲検試験および安全性評価を主目的としたオープン試験が17年3月終了した。
16年8月にはスイスのフェリング社とSI-6603の海外におけるライセンス契約を締結した。フェリング社はSI-6603の日本を除く全世界を対象とした独占開発・販売権を取得し、当社はフェリング社から契約一時金5百万米ドル、および今後の開発や販売等の進捗に応じて複数年にわたり最大で90百万米ドルのマイルストーン型ロイヤリティーを受領する。日本における独占的販売契約については12年12月に科研製薬<4521>と締結している。
変形性膝関節症治療剤SI-613は、米国を含めたグローバル展開を目指す製品と位置付け、17年2月に日本で第3相臨床試験を開始した。そして17年5月には小野薬品工業<4528>とSI-613の日本における共同開発および販売提携に関する基本合意書締結を発表した。正式契約締結に向けて協議を進める。また6月16日には米国における第2相臨床試験を開始したと発表している。
ドライアイ治療剤SI-614は、米国・欧州で15年1月第2・3相試験が終了し、次相試験について検討中である。
なお16年2月にはジェネリック医薬品である眼科手術補助剤「シェルガン0.5眼粘弾剤」の製造販売承認を取得している。眼科手術補助剤オペガンと同様に参天製薬<4536>が販売する。
■重点地域の米国におけるプレゼンスを強化
変形性膝関節症を適応症とする医療機器「VISCO-3」は、15年12月米国食品医薬局(FDA)の承認を取得した。ヒアルロン酸主成分とする関節機能改善剤で、1治療あたり3回投与の3本キット製品である。
米国では高齢化に伴って関節機能剤の市場拡大が予想されるため、単回投与製品Gel-One、5回投与製品SUPARTZ-FX(15年10月SUPARTZからブランド名変更)に加えて、3回投与製品VISCO-3を新たに市場投入し、重点地域の米国に置いてプレゼンス強化を図っている。
16年11月には米ジンマー・バイオメット社と、3回投与の関節機能改善剤VISCO-3の米国における独占販売契約を締結した。米ジンマー・バイオメット社は12年から単回投与の関節機能改善剤Gel-Oneを米国で販売している。
■17年3月期は薬価改定や円高影響で減収減益
前期(17年3月期)連結業績は売上高が前々期(16年3月期)比4.4%減の295億89百万円、営業利益が同40.2%減の12億82百万円、経常利益が同29.2%減の24億77百万円、純利益が同30.7%減の17億87百万円だった。為替影響は12億40百万円の減収要因だった。
アルツや米国向けGel-Oneの数量が増加したが、薬価改定や円高の影響で減収となり、アルツ新容器投入に伴う一過性要因も影響して減益だった。売上総利益は同9.7%減少し、売上総利益率は55.2%で同3.2ポイント低下した。販管費は同5.6%減少し、販管費比率は50.9%で同0.6ポイント低下した。研究開発費が78億34百万円で同9.6%減少した。
営業外では受取ロイヤリティーが増加(前々期3億61百万円、前期6億78百万円)したが、投資有価証券売却益が減少(前々期4億46百万円、前期1億05百万円)した。ROEは2.5%で同1.2ポイント低下、自己資本比率は88.3%で同1.3ポイント上昇した。また配当は同5円増配の年間31円(第2四半期末13円、期末18円=普通配当13円+創立70周年記念配当5円)とした。配当性向は98.3%である。
セグメント別売上高は、医薬品事業が同5.4%減の241億52百万円(国内医薬品が同3.9%減の162億68百万円、海外医薬品が同7.2%減の67億71百万円、医薬品原体が同13.7%減の11億11百万円)、LAL事業が同0.1%減の54億37百万円だった。なお海外売上高は同4.8%減の110億29百万円で、海外売上比率は同0.1ポイント低下の37.3%となった。
国内医薬品では、アルツは新容器投入(16年4月プラスチックシリンジのルアーフィットタイプ)で数量増加したが、薬価引き下げ(マイナス7.2%)の影響で減収だった。白内障手術補助剤オペガン類は、16年7月発売したシェルガンの好調で薬価引き下げの影響をカバーした。
海外医薬品では、米国向けGel-Oneは現地販売数量が3割弱増加したが、円高や現地販売価格下落の影響で微減収だった。米国向けSUPARTZ-FXは、現地販売が微減にとどまったが、円高影響で減収だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期82億75百万円、第2四半期68億10百万円、第3四半期70億43百万円、第4四半期74億61百万円、営業利益は3億79百万円、4億04百万円、98百万円、4億01百万円だった。
■18年3月期は海外が牽引して大幅増益予想
今期(18年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比2.4%増の303億円、営業利益が同17.0%増の15億円、経常利益が同51.4%増の37億50百万円、純利益が同51.0%増の27億円としている。配当予想は前期から記念配当5円を落として年間26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。予想配当性向は54.6%となる。
国内医薬品は前期並みだが、米国向けGel-Oneの出荷増加、LAL事業の米国子会社ACC社の売上拡大が牽引して大幅増益予想である。想定為替レートは1米ドル=108円で、為替感応度(米ドル1円変動時の年間影響額)は売上高で約1億10百万円、営業利益で約45百万円としている。また売上総利益率は57.9%で同2.7ポイント上昇、販管費比率は53.0%で同2.1ポイント上昇、研究開発費は83億50百万円で同6.6%増加の想定としている。営業外収益ではロイヤリティーの増加を見込んでいる。
セグメント別売上高は、医薬品事業が同1.6%増の245億50百万円(国内医薬品が同0.5%増の163億50百万円、海外医薬品が同6.3%増の72億円、医薬品原体が同10.1%減の10億円)、LAL事業が同5.8%増の57億50百万円としている。海外売上高は同7.9%増の119億円としている。
■新中期経営計画で19年3月期経常利益45億円目標
16年5月策定の新中期経営計画(17年3月期~19年3月期)では、重点戦略として、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の確実な進展、変形性膝関節症市場におけるリーディングカンパニーとしての進化、開発パイプラインの充実、最適な生産・品質管理体制の追求を掲げている。
腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603については、日本での上市と拡販および潜在市場規模の大きい米国での事業化を目指す。変形性膝関節症市場におけるリーディングカンパニーとしての進化では、成長ドライバーであるGel-Oneの米国売上拡大と新規市場展開、製品改良による国内アルツの販売数量維持、次世代品となる関節機能改善剤SI-613の開発を推進する。開発パイプラインの充実では、糖質科学分野において他社を凌駕する基盤技術の保持、探査研究の加速、持続的な開発テーマの創製を推進する。最適な生産・品質管理体制の追求では、製品の安定供給、さらなる生産効率化の推進によって原価低減を実現する。
経営目標値には19年3月期売上高320億円、営業利益25億円、経常利益45億円を掲げている。想定為替レートは1米ドル=110円で、海外事業の拡大(海外売上高比率45%)によって国内薬価改定による減収をカバーし、研究開発費は高水準(対売上高比率25%~30%)で推移する。また各種受取ロイヤリティーを営業外収益として織り込んでいる。
■株価は自律調整一巡して上値試す
株価の動きを見ると、5月の年初来高値1978円から一旦反落したが、4月の直近安値1677円まで下押すことなく切り返しの動きを強めている。
6月19日の終値1832円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS47円65銭で算出)は38~39倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1248円07銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約1041億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインの形だ。自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)