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JPホールディングスは自律調整一巡して上値試す、国策が追い風の事業環境に変化なし
- 2017/6/20 06:45
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JPホールディングス<2749>(東1)は保育所運営の最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。18年3月期は保育士待遇改善や新規事業投資などで営業減益予想だが、待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はない。株価は5月の戻り高値から一旦反落したが、自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。
■保育所運営の最大手、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー
総合子育て支援カンパニーの持株会社である。保育園・学童クラブなどを運営する子育て支援事業(日本保育サービス、四国保育サービス)を主力として、保育所向け給食請負事業(ジェイキッチン)、英語・体操・リトミック教室請負事業(ジェイキャスト)、保育関連用品の物品販売事業(ジェイ・プランニング販売)、研究・研修・コンサルティング事業(日本保育総合研究所)も展開している。16年9月には横浜市で認可保育所・民間学童施設を運営するアメニティライフを子会社化した。
17年3月期末の運営施設数(アメニティライフ含む)は、保育所172園(認可保育園・公設民営10園、認可保育園・民設民営136園、認可外園・東京都認証保育園23園、その他認可外保育園3園)、学童クラブ63施設、児童館12施設、および民間学童クラブ4施設の合計251園・施設(16年3月期比27園・施設増加)である。首都圏中心に展開し、保育所運営の売上規模で競合他社を大きく引き離す業界最大手である。
17年2月には資生堂<4911>と共同で、事業所内保育所運営受託の合弁会社KODOMOLOGY(コドモロジー)(当社出資比率49%)を設立した。事業所内保育所などへの公的補助を認可保育所並みにした「企業主導型保育事業」で、全国の様々な企業からの事業受託を目指す。資生堂掛川工場に事業所内保育所を17年秋に新設し、新会社の受託1号とする予定だ。
■保育士確保に向けて待遇改善や職場環境整備を推進
保育士確保に向けて、保育士資格を有する学生を即戦力に近い人材として採用するとともに、別の新規採用枠として保育士資格を持たない新卒を採用するなど採用手法を工夫している。また16年4月には奨学金支給を開始した。
17年3月期には保育士の待遇改善を国に先行して実施した。16年3月期のベースアップに続く2年連続の大幅賃上げである。18年3月期も賃金水準の引き上げを実施する予定で、社会的に評価される賃金制度の構築を目指す。
また保育士の業務負担軽減、保育士と保護者のコミュニケーション強化に向けた取り組みの一環として、日本保育サービスが運営する全国の保育園にhugmo(ハグモー)の保育クラウドサービス「hugmo」を順次導入している。
こうした待遇改善や働きやすい職場環境の整備が奏功し、17年度はグループ総勢391名の新卒社員(うち保育士は過去最多となる247名)を採用した。資格取得コースの新卒社員は32名だった。
さらに17年5月には、夜間保育時間帯に特化したアルバイト保育士「スターライト先生」の採用を開始した。ソフト制で働く保育士の負担を軽減するとともに、短時間で効率的に働きたい潜在保育士の掘り起こしを目指す。
■収益は稼働率や補助金などが影響する特性
収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月だが、稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する傾向もある。
利益配分については将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。
■17年3月期は保育士待遇改善を先行実施したため減益
前期(17年3月期)連結業績は前々期(16年3月期)比10.9%増収だが、31.1%営業減益、23.3%経常減益、43.3%最終減益だった。新規施設開設やアメニティライフ子会社化などで2桁増収だが、保育士の待遇改善を国に先行して実施したため減益だった。
売上総利益は同2.5%増加したが、売上総利益率は16.4%で同1.4ポイント低下した。販管費は同36.4%増加し、販管費比率は10.9%で同2.0ポイント上昇した。特別損失では園減損損失3億91百万円を計上した。
ROEは9.9%で同9.5ポイント低下、自己資本比率は29.6%で同0.9ポイント低下した。配当は同2円50銭減配の年間2円50銭(期末一括)とした。配当性向は31.0%である。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期54億24百万円、第2四半期55億49百万円、第3四半期57億47百万円、60億80百万円で、営業利益は99百万円、2億52百万円、3億92百万円、5億20百万円だった。
■18年3月期営業減益予想、純利益は減損損失減少して増益予想
今期(18年3月期)連結業績予想(5月9日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比14.6%増の261億25百万円、営業利益が同8.4%減の11億57百万円、経常利益が同3.1%減の14億円、純利益が同14.8%増の7億77百万円としている。配当予想は年間3円(期末一括)としている。前期比50銭増配で予想配当性向は32.4%となる。
新規施設開設で増収だが、保育士の待遇改善、システム投資負担、さらに新規事業への先行投資などで営業減益・経常減益予想である。新規施設は認可保育園11園、学童クラブ・他9施設、合計20園・施設の計画(4月1日時点で10園、9施設を開設済み)である。なお純利益は減損損失が減少して増益予想である。
■中期経営計画で保育士待遇改善、新学童クラブ、海外展開などを推進
中期経営計画では、安全対策の強化および保育の質のさらなる向上、新規開設および既存施設の保育士増員による受入児童数の拡大、人材投資の拡大(採用活動強化、人材育成強化、人事評価制度見直し)、経営管理体制の再整備(事業リスク管理体制強化、グループ会社連携強化)、収益基盤拡大に向けた新規事業への着手(民間児童クラブ、既存サービスの拡販、海外展開)を掲げている。
補助金を申請せず料金設定の面で自由度が高い新タイプの民間学童クラブは、16年9月第1号のAEL(アエル)湯島、17年4月第2号のAEL横浜ビジネスパークを開設した。また海外はベトナムにおいて、中間層の共働き世帯をターゲットに幼稚園事業を展開する方針で、18年3月期2ヶ所開設の準備中である。
■待機児童解消政策が追い風の事業環境に変化なく、中期的に収益拡大期待
都市部を中心に保育サービスの需要は高水準であり、待機児童解消に向けて保育士待遇改善、保育所運営補助金拡大、各種規制緩和などの政策が進展する見込みだ。国や東京都の待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく、中期的に収益拡大が期待される。
■株価は下値切り上げて戻り試す
株価の動きを見ると、5月の戻り高値327円から一旦反落したが、280円台から切り返して自律調整一巡感を強めている。
6月19日の終値297円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS9円25銭で算出)は32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当3円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS84円52銭で算出)は3.5倍近辺である。時価総額は約261億円である。
週足チャートで見ると上向きに転じた26週移動平均線がサポートラインの形となった。自律調整が一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)