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キャリアリンクは調整一巡して戻り試す、18年2月期減益予想だが保守的
- 2017/6/20 16:20
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
キャリアリンク<6070>(東1)は「チーム派遣」を強みとする総合人材サービス企業である。18年2月期は新たな大型案件に取り組むため利益率が低下して減益予想だが、保守的な印象が強く増額余地がありそうだ。BPO関連事業が牽引して中期成長シナリオに変化はないだろう。株価は調整一巡して戻りを試す展開が期待される。なお7月6日に第1四半期決算発表を予定している。
■BPO関連事業が主力の総合人材サービス企業
官公庁・地方公共団体・民間企業向けBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)関連事業を主力として、企業等のコンタクトセンター(コールセンター)向けCRM(カスターマー・リレーションシップ・マネジメント)関連事業、製造・物流分野の製造系人材サービス事業、一般事務職分野の一般事務事業など、人材派遣・紹介や業務請負などの総合人材サービス事業を展開している。
17年2月期の事業別売上高構成比はBPO関連事業66.1%、CRM関連事業15.7%、製造系人材サービス事業11.5%、一般事務事業6.7%である。
17年6月1日付で製造系人材サービス事業を子会社キャリアリンクファクトリーに事業承継した。BPO関連事業とは異なる事業構造のため分社化して競争力を強化する。
■顧客企業の業務効率化を実現する「チーム派遣」に強み
顧客の業務効率化や品質向上などを実現する企画提案型の人材派遣および業務請負を特徴としている。特にBPO関連事業では、顧客企業の業務効率化や業務処理品質向上を実現するために「単なるスタッフ派遣」ではなく、経験豊富な社員をリーダーとして編成した「チーム派遣」を強みとしている。顧客にとっては、自社による導入時の研修や導入後の業務指導などに係る負担が軽減され、発注から短期間で大量業務処理の稼働開始が可能になるというメリットもある。
また1000名を超える大型案件でも、稼働開始まで短期間で対応できるノウハウを有していることも強みだ。スタッフに対してはキャリアパス制度などを活用して能力、満足度、出勤率、稼働率を高める仕組みを構築しており、こうした仕組みもチーム派遣や大型案件に対する短期間での対応を支えている。
中期成長戦略として、BPO関連事業では官公庁・地方公共団体関連の大型特需案件や成長市場である民間BPO案件の受注拡大、高品質で顧客満足度の高いBPOサービス提供の強化、M&Aも活用したBPO関連事業の領域拡大、CRM関連事業や製造技術系事業では高利益案件をメインターゲットとした受注活動の強化、そして業容拡大に向けた人材採用・育成の強化を推進している。
■17年2月期は増収増益で過去最高
前期(17年2月期)の非連結業績は前々期(16年2月期)比11.2%増収、4.3%営業増益、5.2%経常増益、8.6%最終増益だった。
民間企業向けBPO大型プロジェクト案件の一つで業務処理量の縮小が想定より早く進んだ影響などで計画をやや下回ったが、BPO関連事業全体の好調が牽引して増収増益を確保し、過去最高を更新した。売上総利益は同7.7%増加したが、売上総利益率は19.6%で同0.7ポイント低下した。販管費は同9.1%増加したが、販管費比率は14.2%で同0.3ポイント低下した。
事業別売上高はBPO関連事業が同12.3%増の121億93百万円、CRM関連事業が同1.0%減の29億03百万円、製造系人材サービス事業が同29.9%増の21億20百万円、一般事務事業が同4.5%増の12億42百万円だった。
なおROEは22.0%で同2.4ポイント低下した。自己資本比率は54.6%で同7.3ポイント上昇した。配当は年間10円(期末一括)で、16年6月1日付株式2分割を考慮して16年2月期の年間18円を9円に換算すると、実質的に1円増配だった。配当性向は19.5%だった。
■18年2月期(連結決算へ移行)減益予想だが保守的
今期(18年2月期、キャリアリンクファクトリーを設立して連結決算へ移行)の連結業績予想(4月14日公表)は、売上高が前期(17年2月期の非連結業績)比3.2%増の190億56百万円、営業利益が同29.1%減の7億09百万円、経常利益が同29.5%減の7億円、純利益が同27.2%減の4億67百万円としている。
BPO関連事業では取引自治体数拡大、中央官庁大型案件の受注強化、恒常的公共サービス領域への展開、競争力・利益率向上とナレッジ化推進、金融業界の多様なアウトソーシングニーズの大型案件への昇華、アライアンス戦略の強化、SVやコアOPの戦略的配置による取引拡大加速、ISO9001認証取得による更なる運用力の強化、自社コンタクトセンターの活用といった施策を推進する。
新たな大型案件に取り組むため利益率が低下して減益予想としたが、保守的な印象が強い。増額余地がありそうだ。配当予想は17年2月期と同額の年間10円(期末一括)としている。予想配当性向は26.8%となる。
■BPO関連事業が成長エンジン、M&Aによる領域拡大も推進
中期経営計画(ローリング方式、18年2月期~20年2月期)では、BPO関連事業を成長エンジンとした成長戦略を加速させる方針を掲げ、営業戦略の基本を大型BPO案件の獲得による売上規模拡大、企画提案力・運用力の強化とチーム派遣の拡大、M&AによるBPO関連事業の領域拡大としている。
目標数値には、20年2月期売上高268億円(BPO関連事業186億円、CRM関連事業30億円、製造系人材サービス事業45億円、一般事務事業6億円)、営業利益14億40百万円、経常利益14億30百万円、純利益9億70百万円を掲げている。
BPO関連事業は高品質なBPOサービスにより顧客満足度No.1のBPOを実現する。CRM関連事業は高付加価値な提案により、BPO化につなげていく。一般事務事業は高利益案件の周辺業務を取り込み、BPO化を推進する。製造系人材サービス事業は、人材が払底する製造マーケットで強力な供給を実現する方針だ。
■中期成長シナリオに変化なし
中期的に事業環境は良好である。官公庁・地方公共団体関連では財政健全化に向けた費用抑制の流れ、サービス向上や業務効率化のニーズ増大も背景として、官から民間への業務委託・移管の増加が予想されている。民間企業関連ではコア事業への経営資源集中や固定費の変動費化の流れも背景として、業務のアウトソーシング化が一段と増加すると予想されている。
人件費・採用費・教育研修費の増加への対応、人材の採用・開発および早期収益化が課題となるが、研修センターや人材開発部の新体制で研修や人材開発を強化する方針だ。業務効率化に向けた企画提案力、1000名以上の大型案件でも稼働開始まで短期間で対応できるノウハウ、官公庁向け大型BPO案件の受注実績などから、マイナンバー関連でも大型BPO案件を受注することが期待され、さらに改正労働者派遣法も追い風となる。BPO関連が牽引して中期的な成長期待も高まる。
■株主還元は総合利回りの向上を目指す
株主還元については基本方針として、現金配当と株主優待を合算した総合利回りの向上を目指している。
株主優待制度は毎年8月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。優待内容(16年6月1日付株式2分割後)は100株以上~200株未満保有株主に対してオリジナルQUOカード500円分、200株以上~500株未満保有株主に対してオリジナルQUOカード1000円分、500株以上保有株主に対してオリジナルQUOカード2000円分を贈呈する。
■株価は調整一巡して戻り試す
株価の動きを見ると4月の年初来安値510円から切り返しの動きを強めている。6月15日には632円まで上伸した。調整が一巡したようだ。
6月19日の終値639円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円32銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.6%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS254円44銭で算出)は2.5倍近辺である。時価総額は約80億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を突破した。調整一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)