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イワキは06年来の高値圏、17年11月期第2四半期累計利益予想の増額修正を好感
- 2017/6/21 06:29
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イワキ<8095>(東1)は医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社で、メーカー機能も強化している。ジェネリック医薬品関連の好調や化学品の収益改善で17年11月期大幅営業増益予想である。そして6月19日に第2四半期累計の利益予想を増額修正した。通期予想も増額の可能性が高いだろう。これを好感して株価は急伸し、06年来の高値圏だ。依然として1倍割れの低PBRも評価して上値を試す展開が期待される。
■医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社
医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社で、岩城製薬(医薬品)やメルテックス(表面処理薬品)のメーカー機能も強化している。17年1月に調剤薬局運営の子会社パートナー・メディカル・システムズを譲渡して経営資源の集中も推進している。
事業区分は医薬・FC(Fine Chemical)事業(医薬品原料の製造・販売、医薬品の製造・販売、体外診断薬・研究用試薬・医療機器の販売)、HBC(Health & Beauty Care)事業(化粧品原料・機能性食品原料の販売、一般用医薬品・関連商品の卸売、化粧品通信販売)、化学品事業(表面処理薬品・電子工業薬品・化成品の製造・販売、表面処理設備の製造・販売)、食品事業(食品原料の製造・販売)の4事業とし、4事業をさらに分解したBU(ビジネスユニット)を戦略単位としている。
16年11月期の売上高構成比(連結調整前)は医薬・FC事業39%(原料薬品26%、医薬品11%、その他2%)、HBC事業40%(HBC原料18%、ファルマネット18%、オリジナル製品4%)、化学品事業10%(表面処理薬品6%、スペシャリティマテリアル1%、表面処理設備2%)、食品事業7%である。
なお化学品事業は表面処理薬品分野での業務提携解消に伴って一時的に売上が大幅減少したが、新規導入製品のプリント配線板用「ルーセントカパー」シリーズへの切り替えなどで収益回復を推進している。
■卸売・商社・メーカー機能の連携を強化、天然界面活性剤市場に参入
全国の医薬品卸・医療機関・ドラッグストアなどに医薬品や機能性食品などを供給する卸売機能、国内外のメーカーなどを開拓して輸出入する商社機能、グループ内に岩城製薬とメルテックスのメーカー機能を併せ持つことが強みで、卸売・商社・メーカー機能の連携を強化している。
中期的な事業基盤強化と収益拡大に向けて、医薬品事業での共同開発・受託品の拡大、ドラッグストア向けPB商品など自社企画商品の開発強化、医薬品原料事業における市場シェア拡大、海外サプライヤーとの連携強化、岩城製薬の生産能力増強と新製品開発、メルテックスの新製品拡販、海外展開強化などを推進している。
16年7月にはシンガポールのASC社と業務提携して天然界面活性剤市場に参入した。ASC社は非可食天然物「マフア」の種から抽出した油脂を発酵させて天然界面活性剤を製造する高度な技術を有している。ASC社がインドの子会社で商業生産化する天然界面活性剤「ACS-Sophor」を、医薬品・化粧品・健康食品・食品の事業分野において当社が優先的に販売する権利を得た。
■17年11月期第1四半期は大幅増益、化学品の赤字縮小も寄与
今期(17年11月期)第1四半期(12月~2月)の連結業績(過年度決算訂正後)は前年同期比2.6%増収、2.2倍営業増益、2.6倍経常増益、13倍最終増益だった。ジェネリック医薬品関連が好調に推移し、化学品事業の赤字縮小も寄与して大幅増益だった。特別利益では和光純薬工業の自己株式取得に応じて投資有価証券売却益2億19百万円を計上した。
セグメント別に見ると、医薬・FC事業は売上高が2.5%増の48億90百万円で営業利益(連結調整前)が16.1%増の3億20百万円、HBC事業は売上高が3.3%増の54億18百万円で営業利益が15.1%減の31百万円、化学品事業は売上高が4.2%増の13億90百万円で営業利益が3百万円の赤字(前年同期は1億47百万円の赤字)、食品事業は売上高が12.4%増の9億40百万円で営業利益が2百万円の赤字(同12百万円の赤字)だった。その他は売上高が20.5%減の4億50百万円で営業利益が65.0%減の2百万円だった。
■17年11月期第2四半期累計の利益予想を増額修正
6月19日に今期(17年11月期)第2四半期累計(12月~5月)連結業績予想の修正を発表した。売上高は5億円減額して前年同期比4.3%増の280億円だが、営業利益は3億20百万円増額して同2.5倍の8億20百万円、経常利益は4億円増額して同2.7倍の9億円、純利益は5億30百万円増額して同9.1倍の8億60百万円とした。
医薬・FC事業において医療用医薬品が外皮用剤を中心に伸長し、化学品事業において新製品の販売が順調に進展した。純利益は第1四半期に計上した投資有価証券売却益も寄与した。
■17年11月期通期も大幅増益予想で増額の可能性
今期(17年11月期)通期の連結業績予想(過年度決算訂正後)は前回予想(1月12日公表)を据え置き、売上高が前期(16年11月期)比5.2%増の580億円、営業利益が同39.2%増の13億60百万円、経常利益が同30.6%増の14億円、純利益が8億40百万円(16年11月期は8百万円)としている。配当予想は16年11月期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)で予想配当性向は23.7%となる。
営業利益は過去最高更新の見込みだ。医薬・FC事業で政府の後発医薬品使用促進策も追い風となってジェネリック医薬品関連が伸長する。化学品事業は表面処理薬品分野で新規導入製品への切り替え・採用が進展し、減価償却費減少も寄与して収益トントンへの回復を目指している。
セグメント別の売上高計画は、医薬・FC事業が同3.3%増の220億円、HBC事業が同5.5%増の235億円、化学品事業が同19.8%増の63億円、食品事業が同3.6%増の39億円、その他が同1.5%減の23億円としている。
通期予想に対する修正後の第2四半期累計予想の進捗率は、売上高が48.3%、営業利益が60.3%、経常利益が64.3%、純利益が102.4%と高水準である。化学品事業の収益改善ペースが加速していることも考慮すれば、通期予想も増額の可能性が高いだろう。
■中長期ビジョンで25年11月期ROIC10%以上目指す
創業111年を迎える25年11月期に向けて、グループ中長期ビジョン「Vision i-111」および新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)を策定している。
グループ中長期ビジョン「Vision i-111」では、基本戦略を「策揃え企業になる=Intelligent」「ナンバーワン製品・事業に注力する=Innovative」「海外市場への事業展開を図る=International」「資本効率を意識した事業運営を行う=Investment」として、数値目標に25年11月期連結売上高1000億円、ROIC10.0%以上を掲げた。
また新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)では目標に18年11月期売上高600億円、営業利益10億円、ROIC4.0%以上を掲げた。
医薬・FC事業(イワキ、岩城製薬)では、原料の選定から最終製品の提供までを「策揃え」で提供するほか、国内外の医薬関連企業との協業を通して、さらなる市場拡大に努める。
HBC事業(イワキ、アプロス)では、OEMやPB製品の自社企画・提案を通して国内の健康食品原料市場における高シェアを維持・拡大する。海外市場の開拓も推進する。化粧品通信販売では「シルキーカバーオイルブロック」の拡販を図る。
化学品事業(メルテックス)では、高い技術力・ブランド力を持つIチップ抵抗向けスズめっき「メルプレートSN」シリーズの世界市場シェアNO.1を確保するとともに、15年から販売開始した大型新製品のプリント配線板向け硫酸銅めっき「ルーセントカパー」シリーズのグローバルシェア拡大を図る。
食品事業(イワキ、持分法適用会社のボーエン化成)では、商品開発効率化、生産コスト低減、ボーエン化成における国産・高付加価値原料の受託加工強化などを推進する。海外展開に関してはハラル対応原料に特化したマーケティングを開始し、マレーシア、インドネシア、中近東諸国の市場開拓に注力する。
■株価は06年来の高値圏、依然としてPBR1倍割れ
株価の動きを見ると増額修正を好感して6月20日に439円まで急伸した。06年来の高値圏だ。
6月20日の終値415円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS25円27銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS506円23銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約143億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線サポートラインとなり、300円近辺での中段保ち合いから上放れて上げ足を速めた形だ。依然として1倍割れの低PBRも評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)