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寿スピリッツは好業績を評価して上場来高値更新の展開、18年3月期も2桁増収増益・増配予想
- 2017/6/22 06:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
寿スピリッツ<2222>(東1)は「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げ、首都圏エリア展開強化や商品プレミアム化などの重点施策を加速している。18年3月期も2桁増収増益・増配予想である。株価は上場来高値更新の展開である。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。
■「お菓子の総合プロデューサー」として地域限定ブランド菓子を展開
地域限定ブランド菓子の製造・販売を主力とする持株会社である。全国各地のお菓子のオリジナルブランドとショップブランドを創造する「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げている。さらに「ワールド サプライジング リゾート(WSR)宣言」を経営スローガンに掲げ、中期経営目標を売上高経常利益率20%としている。
主要子会社は、山陰地区中心に「お菓子の壽城」「ラングドシャ」ブランドなどを展開する寿製菓、北海道中心に「ルタオ」ブランドを展開するケイシイシイ、首都圏中心に「東京ミルクチーズ工場」「ザ・メープルマニア」など洋菓子を展開するシュクレイ、九州中心に「赤い風船」ブランドを展開する九十九島グループ、関西中心に「遊月亭」ブランドを展開する但馬寿、販売子会社(東海3社、中国・九州4社、関西2社)、および洋菓子のフランセ(16年2月子会社化)である。
収益特性として、クリスマス・年末年始商戦などで下期の構成比が高くなる季節要因がある。特にフランセは主力商品「ミルフィユ」が年末・バレンタイン・ホワイトデーなど下期に売上が集中するイベント型商品のため、上期が営業赤字、下期が営業黒字、通期で営業黒字となる特性が強い。
17年3月期の販売チャンネル別売上構成比は、通信販売7.2%(うちルタオ通販5.8%)、店舗販売(直営店舗、催事)43.3%、卸売(駅・空港・高速道路SAなどの小売店、代理店卸、OEM)46.9%、海外2.4%、その他0.1%である。駅・空港・高速道路SAなど交通機関チャネルでの土産品としての販売比率が高いことも特徴である。
■首都圏WSR化展開など重点施策が大幅伸長
重点施策として、プレミアム・スイーツブランドの創出と育成(地域・チャンネル特性にマッチした商品開発推進、主力商品リニューアルによるバージョンアップと価格改定、販路開拓やリアル店舗と通販の融合、新業態店の拡大)、インバウンド対策の強化(国内主要国際空港における免税売店等への販売強化、直営店舗での免税対応強化)、首都圏でのWSR化展開(シュクレイのブランド力向上、フレンチトースト専門店「Ivorish(アイボリッシュ)」など新ブランド確立)、海外展開、生産性向上による製造採算改善などを推進している。
海外展開については、台湾は直接進出、韓国はフランチャイズ方式で進出する。またシュクレイが香港・ハンドメイド社と共同出資で香港に合弁会社ハニーシュクレイを設立し、香港で「東京ミルク工場」を店舗展開している。
重点施策の売上目標値としては18年3月期に、国内主要国際空港でのインバウンド25億円、海外(台湾現地法人売上高+韓国・香港向けロイヤルティ含む国内出荷売上高)15億円、首都圏(シュクレイ、アイボリッシュ、グラッシェル)60億円の合計100億円を掲げている。そして17年3月期にはインバウンドが16年3月期比2.4倍の19億60百万円、海外が同41.5%増の7億78百万円、首都圏が同33.5%増の51億39百万円と大幅伸長した。
■17年3月期2桁増収増益で5期連続最高純益更新
前期(17年3月期)連結業績は売上高が前々期(16年3月期)比22.3%増の325億36百万円、営業利益が同17.4%増の38億47百万円、経常利益が同17.2%増の38億98百万円、純利益が同11.6%増の25億72百万円だった。
計画超の2桁増収増益で5期連続最高純益更新となった。インバウンド対策や首都圏WSR化展開などの重点施策の取り組みが奏功し、生産効率改善なども寄与した。特にシュクレイの収益拡大が牽引した。売上面では重点施策合計で26億67百万円増収要因、フランセ連結が28億57百万円増収要因となり、フランセ除くベースでは同11.9%増収だった。
売上総利益は同23.9%増加し、売上総利益率は56.0%で同0.8ポイント上昇した。販管費は同25.8%増加し、販管費比率は44.2%で同1.3ポイント上昇した。販管費増加29億42百万円のうちフランセの影響額は14億92百万円だった。
特別利益で負ののれん発生益1億79百万円が一巡したが、特別損失では減損損失2億09百万円が一巡した。ROEは21.9%で同1.4ポイント低下、自己資本比率は65.3%で同5.2ポイント上昇した。配当は年間25円(期末一括)で、16年4月1日付株式3分割を考慮して前々期の年間60円を20円に換算すると実質的に5円増配だった。配当性向は30.2%である。
セグメント別(連結調整前)に見ると、ケイシイシイは売上高が同14.1%増の103億75百万円で営業利益が同12.1%増の14億45百万円、寿製菓・但馬寿は売上高が同8.7%増の96億34百万円で営業利益が同58.7%増の10億65百万円、販売子会社は売上高が同5.2%増の51億19百万円で営業利益が同14.3%増の3億76百万円、シュクレイは売上高が同44.1%増の55億01百万円で営業利益が同70.4%増の7億42百万円、九十九島グループは熊本地震が影響して売上高が同7.5%減の32億87百万円で営業利益が1億30百万円の赤字(前々期は85百万円の黒字)、フランセは売上高が37億74百万円で営業利益が1億31百万円の赤字、その他(台湾の菓子事業含む)は売上高が同22.5%増の2億77百万円で営業利益が75百万円の赤字(同44百万円の赤字)だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期67億24百万円、第2四半期80億77百万円、第3四半期89億84百万円、第4四半期87億52百万円、営業利益は3億73百万円、10億80百万円、14億30百万円、9億65百万円だった。
■18年3月期2桁増収増益・連続増配予想
今期(18年3月期)の連結業績予想(5月15日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比10.6%増の360億円、営業利益が同15.7%増の44億50百万円、経常利益が同15.4%増の45億円、純利益が同22.4%増の31億50百万円としている。配当予想は同5円増配の年間30円(期末一括)で、予想配当性向は29.6%となる。利益配分については内部留保、業績水準ならびに配当性向等を総合的に勘案して利益還元に努めることを基本方針としている。
引き続き重点施策を中心とした取り組みを強化して2桁増収増益・連続増配予想である。売上総利益率は56.4%で同0.4ポイント上昇、販管費比率は44.0%で同0.2ポイント低下の計画である。なおシュクレイはフランセを吸収合併して生産直販型会社に移行する。横浜工場にラインを新設し、グループ製造拠点から製品供給されていた主力商品を、4月から順次自社工場生産に切り替える。
セグメント別計画(連結調整前)は、ケイシイシイの売上高が109億円で営業利益が15億70百万円、寿製菓・但馬寿の売上高が100億20百万円で営業利益が10億80百万円、販売子会社の売上高が53億70百万円で営業利益が4億23百万円、シュクレイの売上高が107億70百万円で営業利益が8億円、九十九島グループの売上高が34億30百万円で営業利益が90百万円の赤字、その他(台湾における菓子事業含む)の売上高が3億50百万円で営業利益が25百万円の赤字としている。
首都圏WSR化展開の積極推進などで好業績が期待され、中期成長シナリオにも変化はないだろう。
■株主優待は毎年3月末に実施
株主優待制度は、毎年3月末現在の100株以上~500株未満所有株主に対して2000円相当の自社グループ製品、500株以上~1000株未満所有株主に対して4000円相当の自社グループ製品、1000株以上所有株主に対して4000円相当のグループ製品+3000円相当の直営店舗利用優待券(代替商品送付可)を贈呈する。
■株価は上場来高値更新の展開、好業績評価して上値試す
株価の動きを見ると、上場来高値更新の展開で6月15日には4035円まで上伸した。
6月21日の終値3970円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS101円22銭で算出)は39~40倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS409円20銭で算出)は9.7倍近辺である。時価総額は約1236億円である。
週足チャートで見るとモミ合いから上放れて上げ足を速めた形だ。13週移動平均線がサポートラインとなり、好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)