【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムの第3四半期累計減益に対するネガティブ反応は限定的で戻り歩調、14年7月高値目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

ITサービスや電子書籍配信サービスを展開するインフォコム<4348>(JQS)は、第3四半期累計(4月~12月)連結業績が減益だったが、株価のネガティブ反応は限定的で戻り歩調の展開だ。中期成長力を評価して14年7月高値1092円を目指す展開だろう。

企業向けにITソリューションを提供するITサービス(ヘルスケア、エンタープライズ、サービスビジネス)事業、一般消費者向けに各種デジタルコンテンツを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。

業容拡大に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用し、13年9月に医薬品業界のCRM事業強化に向けてミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立、BCP(事業継続計画)分野のビジネス拡大に向けて危機管理関連ソリューションを手掛ける江守商事<9963>と協業した。

グループ会社の統合・再編も進めている。14年3月にEC事業の運営効率化に向けてアムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。14年7月には連結子会社である米国SYSCOMの株式譲渡(15年2月予定)を発表した。

中期経営計画では、目標数値として17年3月期売上高550億円、営業利益50億円を掲げている。医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」事業、ネットビジネス事業(電子書籍配信サービスやソーシャルゲーム)を重点3事業として、クラウドサービス関連、ソーシャルメディア関連、ビッグデータ領域のデータサイエンス関連、農業IT化関連、海外展開なども強化する方針だ。

14年9月には米国シリコンバレーに連結子会社としてコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。ヘルスケア関連やネットビジネス関連を中心に、成長が期待される新技術や有力ベンチャーなど投資先候補探索・発掘を推進する。

06年開始のスマートフォン・ガラケー向け電子コミック配信サービス「めちゃコミック」は、各携帯キャリアのスマートフォン公式キャリアサービス電子書籍カテゴリーで1位(15年2月1日時点)を独占している。13年11月開始したマルチデバイス対応の電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調だ。14年10月にはシフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。

なお2月10日には、アムタスの電子書籍配信サービス「めちゃコミック」と「ekubostore(エクボストア)」の15年3月期売上高が、15年1月時点で100億円を突破したと発表している。前期よりも2ヶ月早い達成となった。

また2月12日にはアムタスが、中国全土でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ、中国福建省)、ならびにグローバルに恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート)(東京都千代田区)と業務提携したと発表している。ユーラボが制作・保有する電子コミック作品を15年5月から「めちゃコミック」で配信する。コヨンプリートに関しては第三者割当増資も引き受ける。

1月29日発表の今期(15年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は前年同期比5.0%増の281億08百万円、営業利益が同21.2%減の9億89百万円、経常利益が同18.4%減の10億28百万円、純利益が同35.9%減の3億76百万円だった。

セグメント別に見るとITサービスは同0.1%減収、同61.1%営業減益だった。売上構成比の変化が影響して減益だったが、消費増税の影響で低調だった病院向けシステムが回復傾向のようだ。ネットビジネスは同13.8%増収、同24.8%営業増益だった。電子書籍配信サービスの拡大が牽引し、eコマース分野の構造改革の効果も寄与した。

通期の連結業績見通しは前回予想(4月24日公表)を据え置いて売上高が前期比9.9%増の430億円、営業利益が同8.8%増の40億円、経常利益が同8.5%増の40億円、純利益が同12.6%増の23億円、配当予想が同1円増配の年間18円50銭(期末一括)としている。

通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が65.4%、営業利益が24.7%、経常利益が25.7%、純利益が16.4%と低水準だが、ITサービスは売上と利益が第4四半期(1月~3月)に集中する収益構造であり、ネットビジネスの収益は拡大基調である。

四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)81億99百万円、第2四半期(7月~9月)104億98百万円、第3四半期(10月~12月)94億11百万円で、営業利益は第1四半期が2億26百万円の赤字だったが、第2四半期8億16百万円の黒字、第3四半期3億99百万円の黒字と改善している。ヘルスケア事業の売上回復も寄与して通期ベースで好業績が期待される。

中期的にも、GRANDIT事業や電子書籍配信サービスなど重点分野の一段の業容拡大が牽引し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調だろう。

株主優待制度については14年7月に導入を発表した。毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。

株価の動きを見ると、直近安値圏800円近辺から下値を切り上げて戻り歩調の展開だ。1月の戻り高値975円から一旦反落したが、第3四半期累計の減益に対するネガティブ反応は限定的であり、2月12日にはアムタスの電子書籍配信サービス売上高が100億円を突破したことを好感して950円まで急伸する場面があった。

2月12日の終値925円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円13銭で算出)は11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円50銭で算出)は2.0%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS698円41銭で算出)は1.3倍近辺である。

日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると、26週移動平均線を上抜いた13週移動平均線がサポートラインの形だ。強基調へ転換した形であり、中期成長力を評価して14年7月高値1092円を目指す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る