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クリーク・アンド・リバー社は2月高値に接近、18年2月期2桁増益・連続増配予想やVR関連を評価して上値試す
- 2017/6/28 06:49
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリーク・アンド・リバー社<4763>(東1)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、事業領域拡大戦略を加速している。VR関連ではハウステンボスが東京・渋谷に開設したVRアトラクション施設に、オリジナルVRコンテンツ2作品とHMD最新モデル「IDEALENS K2プラス」を提供した。18年2月期2桁増益・連続増配予想である。株価は2月の年初来高値に接近している。好業績やVR関連を評価して上値を試す展開が期待される。なお7月6日に第1四半期決算発表を予定している。
■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開
クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業を展開している。さらに電子書籍・医療・IT・法曹・会計・建築・ファッション・シェフ・プロフェッサーなど事業領域拡大戦略を加速している。
17年2月期のセグメント別売上高構成比は、日本クリエイティブ分野64%、韓国クリエイティブ分野12%、医療分野12%、その他11%である。収益面では医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重し、第3四半期と第4四半期は赤字となるため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本のクリエイティブ分野は売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調だ。
韓国のクリエイティブ分野は、16年12月クリーク・アンド・リバー韓国のTVマーケット関連事業を新設会社クリーク・アンド・リバー・エンタテインメントに承継して持分法適用関連会社とした。18年2月期から連結売上高が剥落するが、利益への影響は小さい。クリーク・アンド・リバー韓国はTVマーケット以外の専門分野への展開を目指す。
また医療分野はメディカル・プリンシプル(MP社)、IT分野はリーディング・エッジ、法曹分野はC&Rリーガル・エージェンシー(CRLA)、会計分野はジャスネットコミュニケーションズ、ファッション分野はインター・ベル(13年12月子会社化)が展開している。
■新規分野に積極展開して事業領域拡大戦略を加速
新規事業分野として電子書籍取次事業、および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター、シェフ、プロフェッサー分野などのエージェンシー事業、さらにAI(人工知能)関連やVR(仮想現実)関連へ展開し、M&Aも積極活用している。当面は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。
15年4月広告業界特化型求人情報サイト運営のプロフェッショナルメディアを連結子会社化、15年5月データ解析のエコノミックインデックスを持分法適用関連会社化、15年6月ベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSと業務提携した。
15年10月オンラインクリエイター分野において、YouTuberと企業のマッチング・分析を行う新ソーシャルクリエイターマッチング・分析プラットフォーム「EUREKA(エウレカ)」をリリースした。
16年2月CRLA社が世界中の弁護士のためのSNSプラットフォーム「JURISTERRA(ジュリステラ)」の開発を発表し、16年4月からβ版運用を開始した。米国におけるサービス基盤拡充は子会社CREEK & RIVER Global(米国)が行う。16年12月エコノミックインデックスが、Twitterに掲載されたクチコミ情報をAIで解析して可視化するクラウドサービス「リアクション モニター」の提供を開始した。
17年1月澪標アナリティクス株式会社代表取締役社長の井原渉氏と共同で、データ分析に関するコンサルティング業務とデータ分析業務を行う新会社MCRアナリティクスを設立した。17年4月プロフェッサー・エージェンシーで、大学や中小・ベンチャー企業の研究・開発成果を大企業などに紹介するオープンイノベーションプロデュース事業を開始した。知的財産エージェンシーの本格的スタートで明治大学が第一弾の参画大学に決定した。
■VR(仮想現実)関連を拡大
16年8月、中国アイデアレンズ社および同社の筆頭株主である投資ファンドのパートナー王涵氏と共同で、VR(仮想現実)における日本市場への進出のための新会社VR Japan(当社出資比率51.0%)を設立した。アイデアレンズ社の一体型VRヘッドマウンドディスプレイ(HMD)「IDEALENS K2」は、中国市場でのHMDの本命と言われ16年9月から中国で発売している。
17年3月ハウステンボスのアトラクション施設にオリジナルVRコンテンツおよび「IDEALENS K2」の提供を開始し、17年4月に「IDEALENS K2」日本正規版の販売を正式に開始した。
6月15日にはHMD最新モデル「IDEALENS K2プラス」の発売を開始し、ハウステンボスが6月24日東京・渋谷に開設したVRアトラクション施設「シブヤVRランド・バイ・ハウステンボス」にオリジナルVRコンテンツ2作品と「IDEALENS K2プラス」を提供した。
■17年2月期は内製率上昇などで大幅増益・増配
前期(17年2月期)連結業績は、売上高が前々期(16年2月期)比6.7%増の265億81百万円、営業利益が同36.7%増の16億10百万円、経常利益が同32.4%増の14億77百万円、純利益が同42.4%増の8億92百万円だった。日本のクリエイティブ分野でTV・ゲーム・Web関連中心に請負事業が伸長した。内製率上昇による売上総利益率改善も寄与して大幅増益だった。
売上総利益は同15.5%増加し、売上総利益率は34.7%で同2.7ポイント上昇した。販管費は同11.8%増加し、販管費比率は28.7%で同1.3ポイント上昇した。営業外では持分法投資損益が悪化(前期は損失68百万円、今期は損失1億51百万円)した。
なお利益押し下げ要因として、新規エージェンシー事業(ファッション、建築、シェフ、プロフェッサー)および新規サービス(JURISTERRA、プロフェッショナルメディア、VR Japan)における先行投資負担の営業利益への影響額は2億42百万円(16年2月期は1億76百万円)で、持分法適用関連会社のエコノミックインデックス社の経常利益への影響額は1億38百万円(同62百万円)だった。
ROEは17.3%で同4.1ポイント上昇した。自己資本比率は50.7%で同2.1ポイント低下した。配当は同1円増配の年間9円(期末一括)で、配当性向は21.0%だった。
セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同12.2%増の170億74百万円で営業利益が同50.7%増の10億82百万円、韓国のクリエイティブ分野は売上高が同13.6%減の33億円で営業利益が同20.4%減の18百万円、医療分野は売上高が同13.8%増の33億10百万円で営業利益が同5.9%増の4億33百万円、その他事業(IT・法曹・会計他)は売上高が同2.2%減の28億95百万円で営業利益が同3.2倍の76百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期65億39百万円、第2四半期67億38百万円、第3四半期67億38百万円、第4四半期65億66百万円、営業利益は4億54百万円、5億57百万円、3億38百万円、2億61百万円だった。なお第4四半期の売上高と営業利益は第4四半期として過去最高だった。
■18年2月期2桁増益・連続増配予想
今期(18年2月期)連結業績予想(4月6日公表)は、売上高が前期(17年2月期)比0.3%減の265億円、営業利益が同11.8%増の18億円、経常利益が同18.4%増の17億50百万円、純利益が同12.0%増の10億円としている。配当予想は同1円増配の年間10円(期末一括)で予想配当性向は21.0%となる。
韓国のTVマーケット関連事業を承継したクリーク・アンド・リバー・エンタテインメントを持分法適用関連会社化した(33億円の減収要因)ため、全体として微減収の見込みだが、日本のクリエイティブ分野が好調に推移し、韓国要因を除くと実質的に13%増収となる。
利益面では積極的な人材投資などで販管費が増加するが、内制化進展による売上総利益率改善や、新規事業分野の収益化(建築およびファッションは収支均衡、シェフおよびプロフェッサーは赤字縮小、エコノミックインデックス社は下期収支均衡の計画)も寄与して大幅増益予想である。なお18年9月竣工予定のオフィスビル(東京都港区)にグループ拠点を統合して効率化およびシナジー効果を目指す。これに伴って日本のクリエイティブ分野で償却費等の費用発生(約1億円)を見込んでいる。
セグメント別(連結調整前)の計画は、日本のクリエイティブ分野が売上高190億円で営業利益11億50百万円、医療分野が売上高34億50百万円で営業利益5億20百万円、その他が売上高41億円で営業利益2億05百万円としている。戦略的投資の効果や新規事業領域の収益化で好業績が期待される。
■株価は2月高値に接近、好業績やVR関連を評価して上値試す
株価の動きを見ると、4月の直近安値837円から切り返して1000円台を回復し、2月の年初来高値1156円に接近している。
6月27日の終値1020円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS47円51銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS265円51銭で算出)は3.8倍近辺である。時価総額は約231億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって13週移動平均線を回復した。強基調への回帰を確認した形だ。好業績やVR関連を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)