綿半ホールディングスは上場来高値更新の展開、18年3月期も増収・営業増益予想

 綿半ホールディングス<3199>(東1)はスーパーセンター事業や建設事業などを展開する持株会社である。18年3月期もスーパーセンター事業のM&A効果や利益率改善効果が牽引して増収・営業増益予想である。5月の既存店売上は5ヶ月連続の前年比プラスと好調である。株価は好業績を評価して上げ足を速め、上場来高値更新の展開だ。目先的な過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値を試す展開が期待される。

■スーパーセンター事業や建設事業などを展開

 スーパーセンター事業、建設事業、貿易事業を展開する持株会社で、17年3月期のセグメント別売上高構成比はスーパーセンター事業63%、建設事業32%、貿易事業4%、その他事業(不動産賃貸事業)0%である。

■スーパーセンター事業はM&Aも活用してエリア拡大と業態多様化を推進

 スーパーセンター事業はM&Aも活用してエリア拡大と業態多様化を推進し、綿半ホームエイドが長野県中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケット(15年12月子会社化したキシショッピングセンターが17年1月商号変更)が愛知県中心に食品スーパー業態、綿半Jマート(16年11月子会社化したJマートが17年4月商号変更)が関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。
 綿半ホームエイドは、1977年にホームセンター業態1号店をオープンし、2007年からは生鮮食品や惣菜など食品の品揃えを強化したスーパーセンター業態の出店を開始した。長野県内で唯一生鮮食品を扱うホームセンター・スーパーセンター業態として、NB商品中心に地域特性に合わせた豊富な品揃え、価格競争力、ブルーカード(長野県内の主要な小売業やサービス業が加盟するポイントカード)による顧客囲い込みなど、ELP戦略を武器とした個店競争力を強みとしている。

 17年1月には100%子会社の綿半パートナーズを設立した。グループのスケールメリットを活かした商品仕入原価の低減やPB商品の共同開発・相互供給を推進する。また17年3月期末の店舗数はスーパーセンター11店舗、ホームセンター21店舗、食品スーパー5店舗の合計37店舗である。

 なお6月26日には、綿半ホームエイドが17年8月下旬(予定)に事業所内保育所を開設すると発表した。ワーク・ライフ・バランスを目指し、多様な社員がいきいきと働ける職場づくりを推進する。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み

 建設事業は16年4月、建築・土木の設計施工を主体とする綿半鋼機と、鉄構・橋梁構造を主体とする綿半テクノスが合併し、存続会社の綿半テクノスの社名を綿半ソリューションズに変更した。

 建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事などの外装改修工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。

 長尺屋根工事では、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、工場・倉庫・物流センター、商業施設、駅舎関連などに豊富な工事実績を誇っている。自走式立体駐車場工事では、柱の少ない認定品「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有している。大型SCの立体駐車場などの工事実績が豊富である。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売

 貿易事業は医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディング(16年7月ミツバ貿易が社名変更)が展開している。

 ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。

■スーパーセンターは既存店売上と店舗網拡大、建設は工事採算に注目

 スーパーセンター事業は既存店売上高と、M&Aも活用した店舗網拡大戦略が注目される。建設事業は基本的には第4四半期の構成比が高い季節要因だが、大型案件の動向や個別案件の工事採算動向で利益率が変動する。

 配当についてはグループの業績や内部留保の充実などを勘案したうえで、安定的な配当を継続して実施することを基本方針としている。

■17年3月期2桁営業増益

 前期(17年3月期)連結業績は、売上高が前々期(16年3月期)比4.5%増の927億80百万円、営業利益が同14.6%増の19億69百万円、経常利益が同16.2%増の19億94百万円、純利益が同6.4%増の13億44百万円だった。売上高、経常利益が過去最高だった。

 建設事業が前々期の大型案件・高利益率案件の反動で減収減益だったが、スーパーセンター事業におけるM&A効果や利益率改善効果が牽引して2桁営業増益だった。全体の売上総利益は同12.6%増加し、売上総利益率は20.3%で同1.4ポイント上昇した。販管費は同12.3%増加し、販管費比率は18.2%で同1.3ポイント上昇した。

 ROEは11.6%で同0.5ポイント低下した。自己資本比率は23.4%で同1.0ポイント上昇した。配当は同1円増配の年間26円(期末一括)とした。2期連続増配で、配当性向は19.1%だった。

 スーパーセンター事業は売上高が同16.6%増の588億円で営業利益(連結調整前)が同68.8%増の10億14百万円だった。綿半Jマートの新規連結に加えて、食品ロス率の改善、商品絞り込みよる仕入原価低減、セルフレジ導入などによる店舗オペレーション効率化など、EDLC(エブリデー・ロー・コスト)追求による売上総利益率改善が寄与して大幅増収増益だった。
 
 既存店売上高は第1四半期が95.3%、第2四半期が96.3%、第3四半期が99.7%、第4四半期が101.8%だった。上期は月間特売廃止の影響で低調だったが、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)戦略の施策が下期にかけて定着し、回復基調となった。期末店舗数はスーパーセンター11店舗、ホームセンター21店舗、食品スーパー5店舗の合計37店舗となった。

 建設事業は前々期の大型・高利益率案件の反動、工事発注遅延・延期の影響、採算性重視の選別受注などの結果、売上高が同13.7%減の296億83百万円で営業利益が同25.8%減の13億72百万円だった。貿易事業は売上高が同8.1%増の40億15百万円で営業利益が同62.9%増の5億97百万円だった。不妊治療薬原薬が堅調に推移し、為替変動も収益押し上げ要因となった。その他は売上高が同10.8%増の2億80百万円、営業利益が同62.9%増の1億06百万円だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期216億77百万円、第2四半期214億31百万円、第3四半期252億40百万円、第4四半期244億32百万円、営業利益は4億24百万円、1億84百万円、9億06百万円、4億55百万円だった。

■18年3月期増収・営業増益予想

 今期(18年3月期)連結業績予想(5月12日公表)は売上高が前期(17年3月期)比9.2%増の1013億51百万円、営業利益が同3.6%増の20億39百万円、経常利益が同5.8%増の21億09百万円、純利益が同6.3%減の12億59百万円としている。配当予想は前期と同額の年間26円(期末一括)で、予想配当性向は20.4%となる。

 純利益は法人税等の増加で減益予想としているが、スーパーセンター事業における綿半Jマートの通期連結や売上総利益率改善効果が牽引して、増収・営業増益予想である。建設事業では受注は前期並みで生産性向上による増益を見込み、貿易事業では為替動向が不透明としている。

 セグメント別の計画は、スーパーセンター事業の売上高が同10.7%増の650億66百万円で営業利益が同31.6%増の13億34百万円、建設事業の売上高が同6.2%増の315億38百万円で営業利益が同6.6%増の14億63百万円、貿易事業の売上高が同11.5%増の44億75百万円で営業利益が同8.8%減の5億44百万円としている。

 スーパーセンター事業の月次売上状況(前年同月比、速報値)を見ると、17年5月は全店128.5%、既存店101.8%だった。全店は子会社化した綿半Jマートが寄与した。EDLP戦略が定着して既存店売上は5ヶ月連続の前年比プラス、既存店客数は3ヶ月連続プラス、既存店客単価は9ヶ月連続プラスとなった。

■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す

 中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。

 スーパーセンター事業では、近隣県への進出も含めて本格的な多店舗展開(当面の目標100店舗体制)に向けた体制作りの期間として、出店スピード加速のための体制整備や新フォーマット店舗の開発に取り組んでいる。新フォーマット店舗の開発では限られた売場面積の中で地域特性に合わせた品揃えを強化するため、小型スーパーセンター業態(700~1000坪)の開発や食品と非食品の超小型店業態(300坪程度)の研究を推進している。

 建設事業では、デザインセンターを活用した提案営業や施主に対する直接営業の強化、技術ノウハウを活かした新製品の継続的開発や付加価値の提供などで、採算を重視しながら受注拡大に繋げる。遠隔地の案件に対しては施工代理店方式(当社が開発した冶具・ノウハウを提供)も活用して、エリア・顧客基盤の拡大に取り組む。中長期的な課題として施工代理店方式を活用した海外展開も検討する。

 16年5月策定の中期経営計画では、経営目標値に19年3月期売上高1000億円(内訳はスーパーセンター事業600億円、建設事業360億円、貿易事業40億円)、経常利益22億円を掲げている。

 事業別重点施策としては、スーパーセンター事業では新業態開発による売場面積拡大(3年間で4500坪)、既存店活性化に向けたサービスメニューとプロモーションの拡充、ロス率改善やオペレーション効率化による利益率向上、建設事業では問題解決に向けた提案型営業への転換による安定した高収益体質の実現、貿易事業では天然原料の新商品拡充と仕入・販売経路の拡大を推進する。

■株主優待制度は毎年9月末に実施

 株主優待制度は毎年9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して贈呈する。綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなどを贈呈する。

■株価は好業績を評価して上場来高値更新の展開

 株価の動きを見ると好業績を評価して上げ足を速め、6月15日の2378円まで上伸した。上場来高値更新の展開だ。

 6月27日の終値2316円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS127円71銭で算出)は18~19倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1232円74銭で算出)は1.9倍近辺である。時価総額は約228億円である。

 週足チャートで見ると中段保ち合いから上放れて上げ足を速めた形だ。そして13週移動平均線がサポートラインだ。目先的な過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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