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パシフィックネットは調整一巡して戻り試す、18年5月期の収益改善期待
- 2017/6/29 06:58
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パシフィックネット<3021>(東2)は中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス企業である。17年5月期連結業績予想は下振れ注意だが、18年5月期は売上総利益率の改善や周辺領域への積極展開などで収益改善が期待される。株価は5月の年初来高値から反落したが、調整一巡して戻りを試す展開が期待される。なお7月14日に17年5月期決算発表を予定している。
■中古情報機器のリユース・データ消去などを展開
中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。パソコン、タブレット端末、スマホなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、事業者向けレンタル事業も展開している。
旗艦店「PC-NETアキバ本店」など全国主要都市に店舗展開し、16年6月には中古モバイル買取・販売専門店としてRmobile(アールモバイル)日本橋店(大阪市)をオープンした。
16年5月期セグメント別売上構成比は引取回収・販売事業84%、レンタル事業16%、営業利益構成比は引取回収・販売事業28%、レンタル事業72%だった。
収益面では中古情報機器の流通量の影響を受けやすい特性がある。配当については継続的な利益還元を基本としたうえで、業績連動型の配当方式を採用し、当期純利益の30%以上を配当性向の目安として決定することを基本方針としている。
■データ消去・処分サービスなどセキュリティ体制に強み
全国主要都市の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のセキュリティ体制に強みを持つ。IT機器データ消去・処分サービスではマイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。
15年5月には電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定された。マイナンバー完全対応データ消去サービスに関しては16年1月都築テクノサービスとパートナーシップ締結、16年1月米国方式のハードディスク破壊サービス(NSA/DoD準拠のV字型破壊)を開始した。
■買取・回収サービスを強化
14年10月日本初のIT機器処分管理Webサービス「P-Bridge」の無償提供開始、15年10月特許取得した。ソリューション・プラットフォームと位置付けて16年1月には「P-Bridge」と、15年9月公開の情報システム部門向けWEBメディア「ジョーシス」を連携して会員アカウントを共通化した。16年5月期末のアカウント発行社数は約1800社に達している。
■リユースの社会的取り組みを強化
14年11月Windowsクラスルーム協議会「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を開始した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。
15年7月特定非営利活動法人.sopa.jpと子どもの学習支援と企業の使用済みパソコンの最活用を行うCSRプログラム「リユースforキッズ」を開始し、環境省の「平成27年度使用済製品等のリユースに関するモデル事業」として採択された。
■周辺領域への事業展開も推進
中期成長に向けて新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業への展開も推進している。15年10月光通信<9435>と合弁会社2B(トゥー ビー)を設立してBtoB専門MVNO(仮想移動体通信事業者)事業に進出、15年11月ドローンの法人向けレンタル開始、16年3月thisisと協業して法人向けレンタルアートサービス開始、16年8月AED(自動体外式除細動器)レンタル・販売を開始した。
17年1月には、ドローンによる太陽光発電所のソーラーモジュールIR検査サービス「ドローンアイ」の提供を開始した。開発・販売を行うエナジー・ソリューションズのパートナーとして「ドローンアイ」を全国展開する。17年6月にはM&Aアドバイザリ・仲介サービス事業を行う子会社エムエーピー(MAP)を設立した。
■17年5月期第3四半期累計は赤字だが四半期別には底打ちの可能性
前期(17年5月期)第3四半期累計(6月~2月)の連結業績は売上高が前年同期比4.9%増の33億89百万円、営業利益が26百万円の赤字(前年同期は63百万円の黒字)、経常利益が13百万円の赤字(同78百万円の黒字)、純利益が34百万円の赤字(同61百万円の黒字)だった。
国内16年4月~12月のビジネス向け新品パソコンの出荷台数は増加したが、新たな機器が導入されてから使用済み機器が排出されるまでに半年以上のタイムラグがあるため、企業等からの使用済み情報機器の排出台数は低調に推移した。
このため仕入競争激化によって仕入価格が上昇し、事業拡大に向けた先行投資、一部店舗の統廃合に伴う移転・閉鎖関連費用なども影響して赤字だった。売上総利益は同5.1%減少し、売上総利益率は40.5%で同4.2ポイント低下した。販管費は同1.2%増加したが、販管費比率は41.2%で同1.6ポイント低下した。特別損失では事務所移転費用16百万円を計上した。
セグメントに見ると、引取回収・販売事業は売上高が同0.4%増の27億12百万円で営業利益が59百万円の赤字(同4百万円の黒字)だった。中古モバイル機器の販売が堅調で増収を確保したが、使用済みパソコンの入荷台数減少や仕入競争激化による売上総利益率低下で赤字だった。レンタル事業は売上高が同27.8%増の6億77百万円で営業利益が同43.0%減の33百万円だった。営業強化などで増収だったが、事業拡大に向けた先行投資などで営業減益だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期11億47百万円、第2四半期11億04百万円、第3四半期11億38百万円で、営業利益は45百万円の赤字、20百万円の赤字、39百万円の黒字だった。収益は第1四半期および第2四半期で底打ちした可能性がありそうだ。
■17年5月期は下振れ注意だが18年5月期は収益改善期待
前期(17年5月期)通期の連結業績予想(7月15日公表)は、売上高が前々期(16年5月期)比10.7%増の50億50百万円、営業利益が同2.6倍の3億12百万円、経常利益が同2.3倍の3億20百万円、そして純利益が同2.4倍の2億14百万円としている。配当予想は前期と同額の年間19円(期末一括)としている。予想配当性向は45.9%となる。
第3四半期累計の進捗率が低水準だったため通期下振れに注意が必要だが、収益は第1四半期および第2四半期で底打ち感を強めている。そして中古モバイル市場や新たなIT機器(VR・AR、IoT、ドローン等)の市場拡大が進展し、今期(18年5月期)は売上総利益率の改善や周辺領域への積極展開などで収益改善が期待される。
■18年5月期を基準年度として東証1部目指す
中期経営計画「VISION2018」は16年7月に目標値を見直した。引取回収・販売事業の事業環境悪化に対応し、修正後の目標値は18年5月期売上高60億円、営業利益4億50百万円、営業利益率7.5%、ROE10.0%以上とした。そして18年5月期を基準年度として東証1部への市場変更を目指すとした。
市場環境の見通しについては、法人向けパソコンは2016年度横ばいで2017年度以降Windows10への移行拡大、法人向けタブレットは2016年度V字回復で2017年度以降も市場拡大、中古携帯・スマホ市場は拡大基調、MVNO市場は個人・法人とも順調拡大としている。
成長に向けた基本戦略に変化はなく、競争優位確立と営業マーケティング強化による顧客拡大、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応したレンタル市場・リユース市場・周辺事業の創出と展開、レンタル事業拡大とリユース事業との相乗効果の発揮、そして戦略実行力の強化と自律型組織・人財への変革としている。
また事業モデルとサービス分野を追加した。機器の導入・運用から使用済み機器の処分・再利用までをトータルにカバーするLCM(ライフサイクルマネジメント)を事業ドメインに設定し、LCMを高い相乗効果のある5つの事業・サービス分野に分け、新たな成長モデルを構築する。
5つの事業・サービス分野は、ITファイナンス(最新のIT機器導入と運用を中長期レンタル・付帯サービスで支援)、ITセキュリティ(使用済み機器のデータ消去等で情報漏えいを防止)、ITエコロジー(リユースで資源再利用を促進)、IT通信(モバイル化やIoTを通信等で支援)、ITメディア(ITに携わる方々に活きた情報と交流の場を提供)としている。
■株価は調整一巡して戻り試す
株価の動きを見ると、5月の年初来高値608円から期末配当権利落ちで反落したが、500円近辺の下値支持線に到達して調整一巡感を強めている。
6月28日の終値503円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS41円35銭で算出)は12~13倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間19円で算出)は3.8%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS373円61銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約26億円である。
週足チャートで見ると500円近辺が下値支持線の形だ。調整一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)