【小倉正男の経済コラム】「忖度」でモメて「付託」が低下~内閣支持率30%割れの意味~

小倉正男の経済コラム

■「忖度」「お友達」が支持率30%割れを招く

 「モリ」(森友学園)、「カケ」(加計学園)といった蕎麦屋のような問題で安倍晋三首相の支持率が大きく低下している。

 中谷元・前防衛相の「あいうえお」発言があったが、えこひいきせず、おごらず、といった問題が現状を引き起こしている。

 株価も日経ダウ2万円内外と一応高水準にある。経済は雇用にみられるように悪いわけではない。しかし、それだけに権力だから、ゆるみやおごりは生じてくる。
 ――廻りや下は「忖度」する。お友達は近付いてくる。上は上で「お友達」を過剰に可愛がったり、かばったりする。「モリ」「カケ」でもそうだし、閣内の防衛大臣などの失言問題でもそれが垣間見られる。

 その結果が支持率30%割れを招いている。「忖度」「お友達」といったものを泣いて斬れない。
 ――有能で可愛がっている士を泣いて斬った諸葛孔明の域にはないといったところか。

■支持率は選挙に準じる重要な指標

 官邸主導――各省庁の幹部人事を内閣人事局が握るといった一元化も様々響いている模様だ。
 各省庁が内部で人事を決めるのではなく、官邸=内閣が人事を決める。官邸=内閣のガバナンスのようなものは強化されるが、省庁内のほうは窮屈になる。

 首相の周りで「忖度」をする――。下なら「忖度」しないと廻りや上にいけない。「忖度」できないほうはそれでは面白くない。確かに、これではいろいろ不満・抵抗が生まれたり、リーク文書が出たりということになる。

 官邸=内閣は選挙を経ており、国民の「付託」を受けているから、官邸=内閣が主導するのは当たり前という理屈になる。

 それだけに安倍首相の支持率は重要な指標になる。支持率は、選挙と同じかそれに準じるもので、その時点の国民の「付託」の度合いを表している。国民に「付託」されていないなら、官邸=内閣主導の正当性が脆弱になる。
 

■受け皿がないというのは不幸

 「忖度」でゴチャゴチャとモメているうちに肝心の国民の「付託」が低下したことになる。安倍晋三首相の支持率低落は、そうした意味合いで受け止める必要がある。

 官邸主導――ともあれ確かに、日本の場合、それが極端な独裁や独善的な支配になっているかどうか。
 主導する側は、「頼むから、目をつぶってくれ」といった独裁程度の認識かもしれない。しかし、主導される側としては、それが理不尽な独裁・支配に映るといったことも少なくない。

 ゆるみやおごりにつながるのだが、いまのところ安倍晋三首相に取って代わる受け皿はない。ポスト安倍を窺う受け皿が、与党にも野党にも見受けられない。
 内閣改造などが支持率回復の安直なきっかけになるとは思っていない。だが、受け皿がないのだから、したがってこのまま死に体にズルズルと沈み込むとも思えない。

 ただし、言えるのは受け皿がないという不幸である。受け皿がないということでただただ継続しているというのも困る。
 もっと困るのは、下手に受け皿を誤ってしまうことだ。また再びみたび経済が死んでいるといった事態をみることになりかねない。

 安倍晋三首相には、あくまで政策で勝負して支持率を回復せよ、といいたいものである。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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